第7集 硝子瓶の中の悲しみの結晶
10月12日
『涙』
流れる涙は心から溢れ出し
土へと染みこみやがて海へ
煌めく命のそのものへ
一滴の涙から海へ雲へ空へ
還ってゆくのだ……
10月14日
『眠れぬ夜に』
窓の外から
鈴虫の歌声が響いてゐた
言葉を飲み込む…
一人泣きたくなる様な夜が来て
今宵もまた眠れぬまま
TV のノイズの様な
ザラザラとした感情が
心の中にたまってしまった
スマホの画面を眺めながら
来るはずのない通知を待っている
夜は長い、夜明けまでずっと
一人自分を抱きしめる
『北極星』
空で動かぬ星は
船乗りたちの座標だ
行方のわからぬ者たちの
導くための星なのだ
我が心の座標よ
動かぬ星よ北極星よ
ずっと私を照らしておくれ
『夢見る子供』
麗しいお嬢さん
私と一緒に踊っていただけませんか
あなたに涙は間に合わない
ほころぶ花の様に笑ってください
悪魔の天使も妖精もやってくる
月夜の晩に泣かないで
花となって踊りませう
月の虹がかかる晩に
あなたのもとを訪れましょう
月明かりの下で夢見る子供は
ベッドの中幸せな夢の中
10月15日
『摩天輪』
空が紫檀の色の染まる
寂れた遊園地の跡地には
人の気配がしない
遠くに見えるは街灯り
かつての賑わいは遥か遠く
風に軋むは摩天輪の
ゴンドラの音
これは悲鳴か嘆きの声か
それとも在りし日の
記憶の歌だろうか
哀しき寂れた記憶の中に
かつての賑やかな幸福が
聞こえて来るかの様だった
10月16日
『恋の取引』
恋っていうのはね
計算、損得勘定、取引
けして甘くないんだよ…
スプーン1杯の愛情を
あなたにあげるから
あなたは私に何をくれるの?
同じ重さの金銀宝石?
スパイスのような激しい恋心が
私の胸に渦巻いて
きっとあなたに一口あげたら
虜になってもう二度と
私以外の好きになれないの
10月18日
『失語症のハッピーエンド』
言語というのは人間そのものを司る手段である
だが一体それらに本当に意味はあるのだろうか
言葉でも伝わらない想いは存在し
言葉を失っても伝わる想いはある
嗚呼君の笑った顔が見たい、ただそれだけの願い
言葉を喋っていてもうまく言葉にできない想い
君がいてくれるだけで…
『涙の海』
愚痴を言う私がキライ
私を嫌いな私がキライ
嫌いと嫌いが重なって
私の事好きになったら
いいのにな…
泣きたい気持ちを我慢して
心の中には嫌いがいっぱい
こんなに嫌いな私のことを
一体誰が愛してくれるの?
涙が溢れて心の中は海の様
海の底で生まれてくるのは
小さな小さな希望かしら…
10月19日
『パズル』
一つ一つ
ピースを合わせてゆく
バラバラになった私の心は
少しずつ 元に戻って
1枚の美しい絵になる
悲しくて苦しくて
泣きたくなる様な
出来事ばかりだったけれど
やがて完成した 私の心は
美しい絵になってゆく
バラバラになってしまった
私の心は美しい絵になるのだ
『心の花園』
心の中に小さな種を
一粒 撒きましょう
種はやがて目を出して
立派な花を咲かせるでしょう
咲いた花はたくさんになり
やがて美しい花園に
なるでしょう
花がたくさん咲いたなら
1つ摘んではあなたのために
愛でできた花を贈りましょう
あなたの心の中の花が
どうかあなたを幸せに
してくれますように
『悲しみの標本』
涙は青い毒薬でした
心に染み付いた 悲しみは
まるでどんどん 毒のように
私自身を蝕んでゆくのです
辛い辛いという言葉すら
もう出てこなくなりました…
涙はとっくに枯れ果てて
心の中で乾いた結晶
干からびた悲しみの結晶が
心の中を思いつくします
後に残るは空っぽな
硝子瓶の中の悲しみの結晶
『夕鬱』
黄昏が心に沁み込んでゆく
闇が影を落とし痛みが
胸の内に広がってゆく
今日という一日が終わってしまう
哀しみは夕日に溶けて
西の空に消えていく
冷たい夜風が体を包み
私は私を抱きしめた
沈殿してゆく心のうちに
優しい夜がやってくるだろう
『壊れた日常』
上手く取り繕っているつもりだった
幸福な日常を続けているフリをした
とっくに崩壊してるのに…
偽りの笑顔で作り上げた日常は
簡単に崩れ去っていった
壊れた日常を拾い集め必死で戻そうと
つかんだその手から崩れていった日々
もう無理だったの……
10月20日
『刹那の空』
空の色は毎秒違う
同じ形の雲なんてないし
風は吹くまま気の向くまま
絶えず変化し続ける
だけど 見上げれば
いつもそこにあるのだ
いつもと変わらぬ空が
空は移り気
すぐに変わって行くけれど
見上げればいつも同じ空
『春風と恋心』
あなたに届くといいな
薄桃色の花びらを
ふっと吹けば空に ふわり
私の恋心をあの人に届けて
住所不定、心宛
花びらは小さな文字
空に向かって書いた手紙
風がふわりと運びます
春の真昼の夢のように
暖かに穏やかに、私の心が
あなたに届きますように
『双愛』
私はあなたに生まれたかった
あなたの姿であなたの声で
何もかもが私の理想だった
あなたと出会って仲良くなれて
あなたのことが大好きだった
真似をしたいけれど
嫌われてしまうかもしれない
もっとあなたと話したいけど
鬱陶しがられるかもしれない
あなたは皆に愛されていて
私はあなたしか愛せない
『消したい夜に』
何もかもを
塗りつぶしてしまう
修正液の雪が降る
つらかった記憶など
まるでなかったかの様に
消してしまえるならば
どんなにいいだろう
心の奥底に沈殿してゆく
痛みばかりが繰り返し
このまま雪に埋もれて
死んでしまいたいと
膝を抱えて部屋の隅
たった一人の部屋の窓
心の奥底に雪が積もってゆく
10月25日
『厳冬』
あの世とこの世の境目が
溶けて消えていくやうに
玄冬がやってくる…
ひとひらの凍った白い花
それはやがて全てを覆い尽し
あたりは白く溶けてゆく
枯れて干からびた曼珠沙華
その物悲しきや紅い色…
『涙の理由』
テレビを消して膝を抱える
少しもうまくいかない事ばかり
怒られてばかりなのは私のせいなの?
ため息ばかりの日常で涙の理由を探す
泣いても良いだろうか…理由があれば
泣くのを許されるような気がする
いつも作り笑顔ばかり…
どうすれば良かったの?
唖々、ぽたりと涙が落ちる
10月26日
『SNS to SOS』
ほんのちょっとだけ
空を飛べたらいいのにな
そうしたら今すぐ
あなたのところに
飛んでいけるのに
あなたの事を抱きしめて
私がいるからもう大丈夫
って言ってあげれるのにな
寝る前に SNS を広げて
一言大丈夫?って書き込むの
あなたの不安な気持ちに
寄り添いたくって…




