第12集 夢と幻想の底で
1月22日
『月凍夜』
月
凍る
夜の底
恋しくて
君のことを
ずっと考える
会いたいと思い
そっとつぶやいた
君の名前を心の中で
誰にも聞こえぬように
こんな夜にただ一人
寒くて凍えるのは
悲しくて涙すら
明日の朝には
氷となって
透き通る
だろう
涙の
朝
1月26日
『春風と花』
リラの花が咲く頃に
お会いしましょう
淡い春の思い出も
2人で歩いたあの道も
今はすっかりに雪に
覆われ何も見えません
もう一度春風が
優しく頬を撫でる季節に
お会いいたしましょう。
どうかそれまでお元気で
愛しさを込めて
春風のような君に
『決意』
行き場所のない心を抱えて
私はずっと、うずくまっていた
涙などとっくに乾いて
空はどこまでも青かった
それだというのに私の心は晴れず
立ち上がる力すらなかった
ある日見上げた空
気がつけば、歩き始めていた
決意なんてないのかもしれない
それでも私は空を見上げた
1月30日
『暗闇』
夢の後にやってくる朝は
決して幸福ではない
不安や混乱や心の中の
苦しい部分ばかりを映し出して
目を覚ませば
今日が始まる絶望感
幸福な夢しか見ない君には
きっとわからないだろう
今日という1日を
始めることへの嫌悪感
夢のない真っ暗闇こそが
ほんの少しの間、私の心を
休ませてくれるのだ
『ひかり』
春
の風
暖かく
優しき光
に包まれて
穏やかな日々
君がそばに居て
こんなにも幸せで
いいのかなと思うよ
僕の光は君なんだ
だからこのまま
僕を照らして
春のように
穏やかな
君想う
この
春
2月1日
『花園』
言葉が突き刺さるの
言えないこの想いを
心臓にはトゲばかり
言葉は心を傷つける
言葉は美しく花開く
きっと私の心臓には
バラの花が絡みつき
花開いているんだわ
心臓から血を流して
私の花は咲いてるの
美しい白いバラの花
血で染まり赤いバラ
白と赤のバラの花が
咲き乱れているのよ
2月4日
『立春』
雪の中凍てついた悲しみが
穏やかに溶けてゆく
柔らかな日差しの中
もうそばに春がやってきた
まだまだ冷たい水の底で
きらめく春の日差し、
それは水底まで優しく
輝き寒い季節の終わりを
告げるのだった。
ほら聞こえるかい?
春を歌う鳥の声
寒さの底から舞い上がる
暖かな幸せの歌を
2月10日
『秘密の扉』
私は鍵をかけた
誰にも見られぬように
逃げ場のない人生で
それでも自分の心を守るため
扉には鍵、
小さな鍵穴を蜜蝋で埋めて
誰にも開けられぬように
誰も気づかないように
心の奥底に大切なものをしまって
扉の向こうは秘密の花園
私の心の中だけの美しい世界
『アスファルトの花』
アスファルトにひっそり咲く花の
強さを私は知っている
たとえどんな環境だって
根を張り生きているのだと
その強さの中でひたすら
諦めずに生き続ける
その強さに私は憧れる
2月12日
『春の歌』
春の歌が聞こえる
溶けてゆく雪の流れる歌
喜んで飛び跳ねる鳥たちの歌
ほころぶ花のつぼみの歌
様々な歌たちが重なり響きあい
柔らかな春のメロディーとなる
美しき夢の底で春の歌を聴く
それはどこまでも優しく
穏やかに命を称えるのだ
2月12日
『骸骨花魁の恋文』
恋い焦がれて
死んでしまった
哀しき女性の物語
貴方は知っているだろうか
骨の髄まで愛していた
彼女の哀しき物語
骨になって埋められた
哀しき花魁の物語
唄ばかりが遺ります
彼女の嘆きが響きます
この地に残りし
骸骨花魁の恋の唄
『ネオンサインのキリスト』
夜の街はネオンサイン
きらめいて彷徨うは
欲と色に満ち溢れ
救いを求め彷徨うは
迷える子羊を
喰らうオオカミ
狩人に
血と肉の匂い
染み付いて
救いは何処に在るのだろう
ネオンサインのキリストよ
『幕引きは極彩色の毒を吐いて』
人生の幕引きは
どんな色をしているのだろう
灰色の人生、喜びのない日々
楽しかった思い出など
少しも思い出せない。
そんな私が迎える 最後は
やはり 色のない
モノクロームの臨終だろうか
哀れな人生の中で
ほんの少しでも美しく
極彩色の夢を見る。
『月夜に化けた狐の簪』
美しき月の夜、
尋ねてきた娘は簪を刺して
満月のような柔らかき
その肌に触れるなら
どうぞ 覚悟を持って
ワタクシを愛してくださいまし
異類婚姻譚の物語
結末やいかほどに
月の様な美しき娘の簪ばかりが
今生に残りて語る物語
月夜にコンと声がする
『仏壇の奥から視ている』
手を合わせ
祈る小さな幼子よ
あなたの成長を
見ることが叶わなくて
だけれどこうやって
ずっとずっとあなたのことを
慈しみ 愛しておりますよ
私はもうここから
あなたのことを見ることしか
叶いませんが
お線香の煙が立ち上る
ほんの少しの短い間
『娯楽としての殺人』
遥か向こうで倒れゆく
人間たちのみじめさよ
ゲームだと言い聞かせ
次々打ち抜く残酷さよ
ゲームだと言うのなら
リセットできるだろう
だが現実はそのように
リセットすることなど
出来やしないのだから
哀れなる犠牲者たちよ
殺人者たちは歓喜の声
世界は残酷に悍ましい
2月16日
『早春』
柔らかな風は硬い蕾をなでた
大丈夫だよ、さあ目を開いて
この世界の美しさを
君は初めて見るだろう
もう凍えることはない
暖かな風が花びらをなでる
蕾はゆっくりと開いて
この世界を見た
生まれて初めて見る世界は
どこまでも淡い色に包まれて
梅の花は咲った
優しき世界にようこそ
『甘い毒』
あなたに分からないように
そっと毒を仕込んだの
ビターチョコでくるんで
甘くて苦い私の毒を
だってあなたが悪いのよ
こんなにも好きなのに
こんなにも愛しているのに
分かってくれないあなたが悪い
愛という名の毒を仕込んで
ビターチョコを召し上がれ
苦しまないで死なせてあげる
2月19日
『明日、世界が終わるとしたら』
明日、世界が終わるとしたら
君の手をにぎって終わりたい
昨日と変わらない美しい空に
笑顔の君が隣にいてくれたら
たとえ世界が終わるとしても
私は幸福でいられるでしょう
変わらぬ日常こそが何よりも
幸福で美しく永遠なのだから
2月20日
『朱に彩られた夜』
血染めの夕闇がやってくる
この世の不穏さを全て含んだ色をして
太陽がゆっくりと死んでゆく
世界は毎朝生まれ、毎晩死んでゆく
そんな風に考える伝承は
世界中にあるといふ
この世の痛みも悲しみも
夜の闇と共に死に絶えて
夜明けとともにまた生まれるなら
それは優しさだろうか
それとも……




