しゃぼん玉
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1話完結
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第33話「しゃぼん玉」
今、一緒に居ることができる幸福
青空 宙を舞い上がる
僕は 小さなしゃぼん玉
たくさんの
兄弟たちと一緒に生まれた
つやつや
キラキラしゃぼん玉
子供たちに 見送られ
高く高く ふわふわり
これから僕の
まあるい体は
どんな景色に
染まるのだろう
どんな匂いが
移るのだろう
楽しみで
風の波をくるくる泳ぐ
もっと高く 飛びたくて
体をジタバタさせるけど
なかなか上手くいかないや
気がつくと
兄弟たちの姿がない
どこかで
はぐれちゃったのかな
ううん
はぐれてなんかいないんだ
後ろでパチンパチン
音がしていた
みんな
弾けた飛沫を 風に託して
短い旅を終えていた
どうして僕は
パチンとしないの?
ひとりは寂しい
寂しいよ
夕陽が照らす
僕の体が
真っ赤に染まる
同じ赤に染められた
同じまんまる まあるい体
僕のところへ
転がるように やって来た
君もずっとひとりなの?
じゃあ一緒にいようよ
これからずっと
やがてパチンと
弾けて溶ける
奇跡が終わる
その瞬間まで