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転生先は量子の彼方!?次元を超えたハードライフ革命  作者: 成瀬アイ
[第一章]俺、データになりました!?
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第一章 第三話「情報センターの罠」

初日三話目…!

ボイドと別れたのち、俺とエリスは村の広場にある小さな建物に向かって歩いていた。建物自体は、まるで立方体のような形をしていて、四角いドアがひとつだけ開いている。建物の壁面には、点滅する光のラインが不規則に走っていて、何やら近未来的な印象を与える。


「ここの建物は、何だ?」


俺がエリスに尋ねると、彼女はにっこりと笑って答える。


「ここは、この村の“情報センター”みたいなものよ。」


「情報センター…?」


「そう、あらゆる情報がここで管理されているの。データの世界では、どんな情報も重要だから。」


「でも、俺はどうしてもこの世界の“情報”が掴みきれないんだよな…」


俺がそう言うと、エリスはちょっと考え込んだ様子で言った。


「あなたはまだこの世界の“法則”を理解していないから、仕方ないわ。でも、これから少しずつ学んでいけばいいのよ。」


「法則?」


「この世界には、データの法則があるの。つまり、すべての物質、存在は“情報”として捉えられるわ。」


「情報…?」


「そう。あなたが“量子データ生命体”として転生した今、あなたの体も“情報”として存在しているのよ。」


その言葉に、俺は再び驚く。エリスの話によれば、この世界では“物質”も“データ”として存在していて、そのすべてがある意味“情報”でしかないというのだ。俺自身がその情報の塊だとしたら、この世界で何が起きてもおかしくない。


「つまり、俺の体も、俺の意識も、全部データなんだな。」


「ええ、そうよ。でも、データだからといって、自由に動かせるわけじゃないわ。」


「自由に動かせない…?」


「そう。あなたがこの世界で生活するためには、まずはその“データ”の法則を学ばないといけないのよ。」


「それって、どういうことだ?」


エリスは一瞬考え込み、そして説明を始めた。


「例えば、あなたが持っている“エネルギー”を使って、物を動かすことができるけど、それには一定の制限があるの。この世界のエネルギーの流れに乗るためには、あなた自身がその流れに適応しなければならない。」


「うーん、まだピンとこないけど、つまりは俺が自分のエネルギーを上手く使わないと、思うように動けないってことか?」


「その通り。自分の“データ”を理解して、エネルギーをうまく使いこなすことが重要なのよ。」


「なるほど…」


俺がそう納得しそうになると、エリスは少し微笑みながら言った。


「でも、私たちの“データ”は、どこにでもあるわけじゃない。私たちのエネルギーを引き出すためには、特定の場所や物が必要なの。」


「特定の場所や物?」


「そう。例えば、この村の“情報センター”には、データの集積所があって、そこでエネルギーを強化したり、増幅することができるのよ。」


「集積所…?」


「はい。ここには、他の村人たちが集めたデータが保存されているの。私たちがそのデータにアクセスして、エネルギーを増幅させることができるわ。」


「なるほど、じゃあ、俺たちがここに来たのはエネルギーを強化するためか。」


「その通り。でも、それだけじゃないわ。このセンターには、あなたが今後必要になる情報も集まっているの。」


「必要になる情報?」


「うん。あなたがこの世界で生きるためには、まずはここのデータを見て、必要な知識を集めていかないとね。」


俺は少し不安になりながらも、エリスの話を聞いていた。いくらデータ生命体になったとはいえ、情報を集めなければ生きていけないなんて、まるで現実世界の“情報化社会”にでも放り込まれたような感じだ。


「じゃあ、早速入ってみるか?」


「うん、でも、気をつけて。情報センターにはいくつかの“セキュリティシステム”があるから。」


「セキュリティ…?」


「そう、悪意のあるデータが侵入してきたときのために、センターは防御システムが組まれているの。」


「なんだそれ、すげぇ…」


俺が驚いていると、エリスはうなずきながら歩き出した。


「まあ、心配しないで。私がいれば問題ないから。」


「うーん、頼もしいような、ちょっと不安なような…」


そんなことを思いながら、俺たちは情報センターに足を踏み入れた。


情報センターの中に足を踏み入れると、そこは予想以上に異様な空間だった。壁や床はまるで透明なガラスのようで、どこを見ても無限に広がっているように見える。そして、足元には無数の光のラインが走り、時折、空間全体が青白く輝いた。


「うわ、ここはなんだよ!まるでコンピュータの中に入り込んだみたいだ…」


「正解よ、智也。この場所は、この村に保存されている“データ空間”そのものだから。」


エリスの言葉に、俺はますます驚く。この空間は、村人たちが集めたデータを物理的に視覚化したものであり、俺たちはその中に立っているというのだ。


「じゃあ、ここにある光のラインとかは、全部データってことか?」


「その通り。このラインはデータの流れを表しているの。私たちがここにアクセスすることで、必要な情報やエネルギーを取り出せるのよ。」


エリスがそう説明する間にも、俺の足元にある光のラインは絶えず動いていた。まるで何かを運んでいるかのように、一定のリズムで流れていく。


「すごいな…。でも、こんな空間にセキュリティシステムってどうやって組み込まれてるんだ?」


「それは後でわかるわ。まずは、必要な情報を探してみましょう。」


エリスが先導し、俺たちは広間を進む。やがて、中央に巨大なモニタのような装置が現れた。スクリーンには複雑な文字列や図形が絶えず表示されている。


「ここがデータの“コア”よ。あなたが知りたいことを質問してみて。」


「質問って…どうやればいいんだ?」


「簡単よ。ただ、知りたいことを考えてみて。」


「考えるだけ?」


「うん。この装置はあなたの思考をデータとして認識して、最適な答えを表示するの。」


俺は恐る恐る装置の前に立ち、考えてみる。


『この世界の正体は何なんだ?俺はどうしてこんな場所に転生したんだ?』


すると、装置が一瞬光り、次の瞬間、画面に新たな文字列が表示された。


“ディグラフスフィアは量子データ空間であり、あなたの存在は異常な転送によって生じました。さらに情報を知るためには、外部アクセスが必要です。”


「外部アクセス…ってなんだ?」


俺がつぶやくと、エリスが表情を曇らせた。


「外部アクセス…それは、この村の外に行かなければならないということよ。」


「この村を出る…?」


「ええ。でも、それは簡単なことじゃないわ。村の外には、“データの荒野”が広がっていて、危険がいっぱいなの。」


「データの荒野?」


「そう。この世界には安全なデータが集まる場所と、不安定で破壊的なデータが渦巻く場所があるの。村は安全だけど、その外は…」


エリスの話を聞きながら、俺は思わず手を握りしめた。確かに危険かもしれないが、俺の存在が“異常”だと言われた以上、その真実を突き止めたい。


「俺、行ってみるよ。」


「智也、本気なの?」


「本気だ。この世界で何が起きているのか知りたいし、俺がどうしてこんな体になったのかも、全部明らかにしたいんだ。」


エリスはしばらく黙っていたが、やがて小さくため息をついた。


「わかったわ。でも、一人では行かせない。私も一緒に行く。」


「え?」


「あなた一人じゃ、この世界で生き延びるのは難しいもの。私が案内するから、安心して。」


エリスの頼もしい言葉に、俺は少しホッとした。彼女がいれば、この未知の世界でもなんとかやっていけるかもしれない。


そのときだった。突然、装置の周囲の光が赤く点滅し始め、警告音が鳴り響いた。


“不正なデータの侵入を検知。セキュリティシステム起動。”


「おい、何だよこれ!?」


「侵入者よ!悪意のあるデータがここに入り込んだわ!」


「悪意のあるデータって、つまりウイルスみたいなもんか!?」


「そうよ!ここから早く離れないと危険だわ!」


しかし、俺たちが出口に向かおうとした瞬間、空間が歪み始め、黒い靄のようなものが現れた。それは触れるものを全て飲み込み、破壊していく。


「なんだよこれ!?俺たち、どうすればいいんだ!」


「落ち着いて!私がなんとかする!」


エリスは手を前に突き出し、周囲の光のラインを操作し始めた。彼女の動きに合わせて、ラインが形を変え、侵入してきた黒い靄に立ち向かおうとする。


「智也!あなたもエネルギーを集中させて!この世界では、あなたの意思が力になるわ!」


「俺の意思…?」


「そうよ!強く願うの、ここを守りたいって!」


俺はその言葉を信じ、両手を握りしめた。頭の中で、この空間が安全になるように強く願うと、次の瞬間、俺の体から光が放たれた。


空間が歪み、黒い靄が迫ってきたその時、俺の体から放たれた光が、黒い霧を包み込んだ。思わず瞑った目を開くと、そこにはもう黒い霧はなかった。


「智也、大丈夫?」エリスが後ろを振り返りながら心配そうに声をかけてきた。


俺は深呼吸をして、頷いた。「ああ、大丈夫だ。けど、あの黒い靄…あれがこの世界の危険なのか?」


「うん。あれは『データの荒野』から湧き出たもの。村の外では、こういう不安定なデータが溢れているのよ。」エリスの顔に少しの暗さが浮かぶ。「だからこそ、ここを出るのは危険で、特別な力を持った者だけが生き抜ける場所なの。」


その言葉を聞いて、俺は少し驚いた。俺が特別な力を持っていると、何度も言われてきたが、いまだに実感は湧かない。ただ、何か大きな力がこの世界にあると感じてはいた。


「でも、俺がどうしてここに来たのか…その答えを知るためには、その荒野を越えなきゃならないんだよな?」俺は言った。


エリスは頷く。「その通り。その荒野を越えた先に、あなたが知りたいことの手がかりがある。さあ、行きましょう。」


それから、俺たちは歩き始めた。進む先には、奇妙な景色が広がっていた。データの粒子が漂う空間。見るものすべてが、現実の世界とは全く異なる。空には三角形の太陽が静かに輝いており、風景全体が数式のように思えた。見れば見るほど、異次元に迷い込んだような不安が胸に広がる。


「これが、データの荒野か…」俺はつぶやいた。


「そうよ。ここは、現実の法則がほとんど通用しない場所。」エリスが前を見つめながら話す。「この荒野は、データが不安定になり、壊れかけた部分が集まった場所だから、危険がいっぱい。」


俺は歩きながら、周りを注意深く観察した。地面が微かに震え、時折不安定な光の流れが空を切り裂く。現実とデータが交錯したような世界に、どう対処すればいいのか分からない。だが、ここで足を止めていても何も変わらない。進まなければ、何も始まらない。


「智也、大丈夫?」エリスがふと振り返り、俺の表情を伺っている。


俺はうなずいて答えた。「うん、ただちょっと気が引けてるだけだ。でも、行くしかないよな。」


「そうよ。あなたには、あなたの力を解き放つために進むことが求められている。」エリスの言葉に、少し背中を押された気がした。

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