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転生先は量子の彼方!?次元を超えたハードライフ革命  作者: 成瀬アイ
[第一章]俺、データになりました!?
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第一章 第二十七話「影の中に潜む声」

霧が晴れ、静寂が訪れる。しかし、その静けさは心地よいものではなかった。まるで嵐の前のように、どこか不安を掻き立てる不穏な空気が漂っていた。


「智也、結晶を破壊しても完全には封じられていない。今の一瞬でわかったわ…何かがまだこの空間の中で息づいてる。」


エリスが険しい表情で言った。結晶を破壊した達成感は一瞬で霧散し、代わりに背筋を冷たく撫でるような寒気が襲ってきた。


「まさか…核を壊したのに、まだ残ってるっていうのか?」


俺の問いに、エリスは深く頷いた。


「核は一部に過ぎなかった。あの霧が生み出す力の源は、もっと深いところにあるみたい。この空間そのものが敵の領域なんだと思う。」


その言葉に俺は唾を飲み込んだ。この場が敵の支配下にあるのだとすれば、俺たちはその中で泳ぎ回るだけの小魚に過ぎない。どれだけもがいても、捕食者の手から逃れられないのかもしれない。


それでも、立ち止まるわけにはいかなかった。エリスが周囲を警戒する中、俺は剣を腰に収め、足元を確かめるように歩き出す。


「周囲に何も異変がないか探してみる。奴が隠れているなら、何かしら痕跡があるはずだ。」


霧が晴れても、この空間は妙に薄暗い。天井も見えず、床にはかすかな光の筋が走っている。まるで神経のように絡み合い、何かを伝えているようにも見えた。


「これ、ただの模様じゃないな…」


俺がつぶやくと、エリスもその筋に目を留めた。


「霧の流れと同じ規則性を感じるわ。たぶん、これがエネルギーの循環を示してるんじゃないかしら。」


「エネルギーの循環…ということは、ここに中心点があるはずだな。」


その中心点こそが、俺たちが探すべき敵の本体だ。だが、筋はまるで迷路のように複雑に絡み合い、どの方向に進むべきか分からない。


「どうする?手当たり次第に辿るしかないのか?」


エリスはしばらく黙った後、杖を掲げて何かを唱え始めた。彼女の足元から淡い光が広がり、筋の一部が鮮やかに輝き出す。それはまるで道しるべのように俺たちを誘っているようだった。


「これで進むべき道がわかるわ。でも、気をつけて。道が明確になるということは、相手にもこちらの位置がバレやすくなるってことよ。」


「了解だ。俺が前を行く。何かあればすぐに知らせてくれ。」


エリスの言葉に頷き、俺たちは筋が導く方向へと歩き始めた。


進むにつれて、空気が徐々に重くなっていく。まるで何か巨大な存在がこちらを睨んでいるかのような圧迫感が漂っていた。


「智也、気をつけて。この感じ…また奴が何か仕掛けてくるかもしれない。」


エリスの警告に、俺も剣を構え直す。辺りを見回しながら慎重に進むと、やがて開けた空間に出た。


そこには、霧の結晶とは異なる異様なものが浮かんでいた。それは黒い球体で、表面に無数の目が浮かび上がり、俺たちを睨みつけている。


「なんだこれ…!?」


「この球体が中心よ。霧を操っている本体がここに隠れているわ!」


エリスが叫んだ瞬間、黒い球体から触手のような影が伸びてきた。それはまるで生き物のようにうごめき、俺たちに向かって襲いかかってくる。


「下がれ!」


俺はエリスを庇うように前に出て、影を剣で切り払った。しかし、影は切っても切っても再生し、まるで無限に湧き出てくるようだった。


「これじゃラチがあかない!エリス、何か弱点はないのか?」


エリスは眉を寄せ、球体を睨みつけていた。その視線には鋭い探求の光が宿っている。


「おそらく、あの球体を直接攻撃しても意味がないわ。霧と同じように、外側を壊しても中にある核を見つけないと…!」


「だが、どうやって中に入るんだ!?」


俺が叫ぶと同時に、影が一斉に俺たちを囲むように襲いかかってきた。防御も攻撃も追いつかず、俺たちはじりじりと追い詰められていく。


「くそ…!」


苦境に立たされながらも、俺は必死に剣を振り続けた。しかし、その時ふと気づいた。影の動きに、わずかな違和感があったのだ。


「エリス、聞いてくれ。影の動きが一定の間隔で遅くなる瞬間がある。それが球体の動きと同期しているんじゃないか?」


「本当!?…確かに、そうかもしれない!」


エリスはすぐに呪文を唱え、杖の先から光の矢を放った。その矢は球体に向かって飛び、その一部を貫いた瞬間、影が一斉に動きを止めた。


「やっぱり…球体が影を操っている!今のうちに攻撃を集中させるのよ!」


俺たちは力を合わせ、球体の中心を目指して攻撃を仕掛けた。しかし、それでも完全には破壊できない。


「くそっ…何かが足りないんだ!」


焦燥感に駆られる俺に、エリスが落ち着いた声で言った。


「智也、私が力を貸すわ。私の魔力を剣に乗せれば、きっと突破口が開ける!」


彼女の手が俺の肩に触れ、その瞬間、温かな力が全身を満たしていくのを感じた。


「…わかった。一緒に決めよう!」


俺たちは再び球体に向かって走り出した。


霧の中、影の動きが一瞬静止する。エリスの魔力を纏った俺の剣が放つ光が、周囲を照らし出していた。球体に向けて全力で駆け出したが、内心では焦燥感が渦巻いていた。この一撃で終わるのか、それともまた次の罠が待ち受けているのか。


「智也、躊躇わないで!私たちがやれるのは今だけよ!」


エリスの声が後押しとなり、俺は思い切り剣を振り下ろした。その刃先が球体に触れる瞬間、世界が一瞬停止したように感じた。時間が止まったかのような錯覚の中、球体の中心から眩い光が迸る。


「やったのか…?」


呆然と立ち尽くす俺の目の前で、球体が音もなく崩れ落ちた。影もまた消え去り、霧が完全に晴れると同時に、空間全体が静寂に包まれた。


「……これで終わり、じゃないよな。」


静けさの中、俺の声が虚しく響いた。エリスも緊張を解かないまま杖を握りしめ、辺りを警戒している。


「終わったようには見えないわ。空間そのものが変化していないもの。」


確かに、霧が晴れたとはいえ、空間の異質さはそのままだった。むしろ、霧がなくなったことで露わになった床や壁の不気味な模様が、より一層の違和感を与えていた。


「エリス、これって…この空間自体が生きているってことか?」


「可能性はあるわ。球体はただの制御装置だったのかもしれない。」


その答えに、俺は愕然とした。この空間全体が敵だというのなら、どうやって立ち向かえばいいのか想像もつかない。


「それでも、進むしかないんだよな。」


俺は剣を収め、エリスに目を向けた。彼女も疲れた表情を浮かべながら頷いた。


「ここで止まるわけにはいかないものね。次の手がかりを探しましょう。」


俺たちは再び歩き出した。だが、その歩みは重く、互いに言葉を交わすことも少なかった。戦闘の疲労だけでなく、これから待ち受ける未知の脅威に対する不安が心を蝕んでいた。


「智也…」


しばらくして、エリスがぽつりと呟いた。


「どうした?」


「今まで、何度も危機を乗り越えてきたけど…正直なところ、怖いのよ。この先、私たちがどこまで行けるのか。」


その言葉に、俺は少し驚いた。エリスはいつも冷静で、どんな状況でも前を向いているように見えたからだ。


「エリスだって怖いことがあるのか。」


思わず笑ってしまったが、エリスは眉をひそめて俺を睨みつけた。


「何がおかしいのよ!」


「いや、悪い。エリスでもそう思うことがあるんだなって安心しただけさ。」


「……安心?」


エリスはきょとんとした顔をした。


「俺だって怖いさ。でも、エリスが一緒にいるから前に進めるんだ。お互い怖いけど、それでも一緒なら大丈夫だと思える。」


その言葉に、エリスは少し赤くなりながら目をそらした。


「馬鹿ね、そんなことで安心するなんて…でも、ありがとう。」


歩みを進める中、ふと先ほどの球体の残骸が頭をよぎる。あれは本当にただの制御装置だったのか?それとも、もっと深い意味があるのか?


「エリス、さっきの球体のことだけど、あれが単なる制御装置なら、本体はどこにあると思う?」


「それが分からないのよ。この空間全体が生きているとすれば、本体という概念自体がないのかもしれない。」


「じゃあ、俺たちは何と戦ってるんだ?」


その問いに、エリスは答えなかった。ただ、再び険しい表情を浮かべて前を見据えていた。


やがて、狭い通路を抜けると、広大な空間に出た。そこには巨大な円形の台座があり、その中央には奇妙な装置が据えられていた。


「…またか。」


俺たちは思わず顔を見合わせた。どうやらこの装置が次の謎を提示しているらしい。


「何か書かれてるわね。」


エリスが台座に刻まれた文字を読み上げる。それは一種の暗号のようで、解読しなければ先に進めない仕掛けだった。


「また頭を使う時が来たみたいだな。」


俺は苦笑しながら装置に向き合った。どうやらここでも簡単には進ませてくれないようだ。

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