第一章 第二十話「光の封印」
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青白い光に包まれた空間は、ただならぬ気配を漂わせていた。俺たちを包囲していた機械生物たちの動きは一瞬止まったが、それが静寂をもたらすためのものではないことは明らかだった。光の柱がさらに強く輝きを増し、床に幾何学模様のような紋様が浮かび上がる。
「智也、これ…ただの光じゃないわ。」
エリスが小声で告げる。
「何か分かったのか?」
「光の波長が一定じゃないの。周期的に変化してる。それに、この模様…単なる装飾じゃなくて、仕掛けの一部みたい。」
俺は周囲を見回し、柱の間に伸びる線の交点が時折、赤い光を放つのを見つけた。その輝きが何かの合図のようにも思える。
「つまり、この場は仕掛けそのものってことか。」
「たぶん。この空間全体が一つの大きな装置みたいに動いてる気がするわ。」
エリスの言葉に俺は頷き、目の前の状況を再び見据えた。機械生物たちの動きが止まったのは、仕掛けの発動を待っているからなのかもしれない。
「もしこの仕掛けが完全に作動したら…どうなる?」
エリスはしばし考え込み、慎重に答えた。
「最悪の場合、この空間自体が崩壊するか、逆に永久に閉じ込められる可能性もあるわ。」
「そんなのは御免だ。」
光の柱の間で、俺たちに選択肢がないことは明らかだった。ここを脱出するには、この仕掛けを止めるか、少なくとも制御する必要がある。しかし、その方法を見つけるためには、この空間が何を目的としているのかを知る必要があった。
「エリス、この模様、何かの言語とか記号に見えるか?」
「うーん…少し待って。解析を試みるわ。」
エリスがデバイスを操作する間、俺は警戒を怠らず、機械生物たちの動きを注視した。動きが止まっているとはいえ、それが永続する保証はどこにもない。
やがてエリスが顔を上げる。
「智也、これ、何かの鍵に似ている気がするわ。模様の中心に特定の形が現れるタイミングがあって、それが何かを開放する手がかりになるかも。」
「鍵…なら、その形を合わせればいいのか?」
「たぶん。ただ、模様が動いてるから、どこで合わせればいいのかまだ分からない。」
俺たちは新たな謎を抱えながらも、模様の動きを注意深く観察し始めた。
その時、不意に周囲の空気が重くなるのを感じた。振り返ると、動きを止めていたはずの機械生物の一体が再び動き始めていた。
「エリス、奴らが動いたぞ!」
「えっ、まだ解析が終わってないのに!」
迫りくる機械生物を前に、俺は剣を握り直した。
「時間稼ぎは任せろ。お前は模様を追え!」
「分かった…でも、無理はしないで!」
エリスが必死に模様を解析する中、俺は機械生物の動きを封じるために立ち回った。尾を振り回す動きや、足元を狙う鋭い突進を何とかかわしながら、奴の攻撃パターンを読み解いていく。
「胴体のラインが弱点…だが、こいつは他の個体よりも動きが速いな。」
次第に俺は息が上がり、汗が滴り落ちる。状況は一見不利に見えるが、エリスが解析を進めていることが俺の精神的な支えとなっていた。
「智也!模様の動き、ある法則があるみたい!交点が赤く光るタイミングに、そこに触れれば何かが起きるかもしれない!」
「了解だ!でも、そんな余裕が…いや、やるしかないな。」
機械生物の攻撃をかいくぐりながら、赤く光る交点に目を向ける。タイミングを計るのは難しいが、俺にはエリスがいる。
「次に右側の交点が光る!そこに飛び込んで!」
エリスの声を信じ、俺は思い切って機械生物の懐をすり抜け、赤い光の中心へと剣を突き立てた。
その瞬間、模様全体がまばゆい光を放ち始めた。
光の柱が一瞬、周囲の空間を埋め尽くすように輝いた。眩しさに目を閉じていた俺が、ゆっくりと瞼を開けると、模様が刻まれた床の色が完全に変わっていた。赤い光が脈打つように動き、模様の形状がより立体的に浮き上がっている。
「智也!模様が…動きが加速してるわ!」
エリスの声が緊張感を帯びていた。これが仕掛けの最終段階ということなのか。
「エリス、次は何をすればいい?」
俺は剣を構えたまま問いかけた。機械生物たちは再び動き出し、俺たちを囲む円が徐々に狭まってきていた。
「模様の中心部分、そこに何かを…何かをはめ込む必要があるみたい。でも、何が必要なのかが分からない!」
エリスの焦る声に、俺はポケットに手を突っ込んだ。手触りの異なる小さな物体が指先に触れる。それは以前、洞窟で手に入れた謎のクリスタルだった。
「これで合うのか?」
「それかも!早く中心に!」
だが、中心部に近づくには機械生物の包囲を突破しなければならない。攻撃がさらに激しくなり、回避の隙間はほとんどなくなっていた。
「くそ…なんとかしてみる!」
俺は地面を蹴り、一瞬の隙を突いて包囲の外に出ようとするが、機械生物の一体が鋭い尾を振り回してきた。それを紙一重でかわし、すかさずカウンターを狙ったが、敵の装甲は思った以上に固かった。
「時間を稼ぐ…これしかない!」
自分の動きをあえて予測しやすくすることで、敵の攻撃を誘導する。そしてその瞬間、逆方向へ跳ぶ。狭い空間での戦闘は思った以上に体力を消耗させるが、負けるわけにはいかない。
「智也!交点が揃うまであと少しよ!」
「分かった!」
俺は息を整える余裕もなく、再び攻撃の嵐を掻い潜りながら、模様の中心へと足を進めた。
ついに模様の中心部分が輝きを増し、そこに小さなくぼみが現れた。これが鍵穴なのだろうか。俺はクリスタルを握りしめ、一か八かそのくぼみに押し込んだ。
途端に空間全体が震え、機械生物たちの動きが完全に止まる。
「成功したのか…?」
俺の声が響く中、模様がさらに複雑な形状へと変化し、中央部分に新たな光の柱が立ち上る。その光は穏やかで、周囲を包むように広がっていった。
エリスが慎重に近づいてくる。
「どうやら仕掛けは止まったみたい。でも、まだ何かが起きる気がする…」
俺たちは息を呑みながら光の柱を見つめた。柱の中からゆっくりと現れたのは、古びた金属の箱だった。その表面には複雑な刻印が施されており、触れることすらためらわれるような神聖な雰囲気を漂わせている。
「これは…?」
「おそらく、この空間の中心に隠されていたものよ。だけど、開けるべきかどうか分からない。」
俺たちは一瞬、ためらいを覚えたが、これを無視して先に進むことはできない。
「開けるしかないだろう。俺たちの手がかりはこれしかないんだから。」
エリスが頷き、慎重に箱の表面に手を触れる。その瞬間、箱が淡い光を放ち始め、蓋が自然に開いていった。
中から現れたのは、紋様が刻まれた小さな石板だった。その表面には、俺たちが見たことのない文字がびっしりと刻まれている。
「これが鍵…それともただの記録?」
エリスが困惑したように言う。
だが、その石板に触れた瞬間、俺の頭の中に奇妙なイメージが流れ込んできた。それはまるで誰かの記憶の断片のようで、意味を理解する間もなく消えていった。
「智也、大丈夫!?」
「…分からない。でも、何かが頭の中に流れ込んできた。これが鍵かもしれない。」
俺たちは石板を持ち、次の行動を考えるために再びエリスの解析を待つことにした。
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