第一章 第十七話「揺れる星座の導き」
投稿作業がひと段落したら短編でも書いてみようかな…
立ち込める星屑の霧の中、次第に形を成していく新たな影。それは先ほどの戦士とは異なる存在感を持っていた。
「今度は何だ…?」
俺の問いかけに答えるように、霧が散り、現れたのは巨大な機械仕掛けの生物だった。鋭利な爪のようなパーツが光を反射し、関節部からは青白い光が漏れている。その動きは滑らかで、人間のような機敏ささえ感じられる。
「智也、また戦うつもり?」
エリスが小さな声で尋ねてきた。その目には、不安と緊張が入り混じっているのが見て取れる。俺も同じ気持ちだが、逃げる選択肢はここにはない。
「逃げ場がない以上、やるしかないだろ。」
俺たちの位置を確認した機械生物は、耳障りな金属音を立てながらこちらに向かってきた。その動きには一定のリズムがあり、単純な力任せではなさそうだ。
「エリス、さっきの仕掛けと同じように、これにも攻略法があるはずだ。まずは攻撃パターンを見極めよう。」
「わかったわ。でも、あまり時間がないわよ。」
機械生物の動きを観察する間にも、床や壁に組み込まれたギアが動き始め、部屋全体が変形しつつある。足場が不安定になる中での戦闘は、ただでさえリスクが高い。
突然、機械生物の腕が大きく振り上げられた。直感的に危険を察知し、エリスと共にその場を飛び退く。
「危ない!」
振り下ろされた腕が床を砕き、深い亀裂が広がった。その衝撃でバランスを崩し、俺は転倒してしまった。
「智也、大丈夫!?」
エリスが駆け寄ってくるが、次の攻撃はすぐに来る。
「動くな!」
俺は彼女を制し、自分で立ち上がる。足元の亀裂を見て気づいたのだが、その裂け目の下に何かが輝いているのが見えた。
「エリス、あれを見ろ。」
「床の下に何かが…あれは、また仕掛け?」
機械生物は再び腕を振り上げた。今度はその動きに注意を払いながら、ギリギリで避ける。攻撃の軌跡を辿ると、床にまた新たな裂け目ができた。
「なるほど、奴の攻撃を利用して床を壊せば、下に進むための道が見つかるかもしれない。」
「でも、そんなことをしてたら私たちがやられるわよ!」
「それはこっち次第だ。エリス、頼むから信じてくれ。」
俺はエリスに向かって短く頷き、再び機械生物の前に立つ。
攻撃を受ける振りをしながら、機械生物の攻撃を誘導する。腕が振り下ろされるたびに床が砕け、その下にある仕掛けが徐々に姿を現していく。
「よし…あと少しだ。」
しかし、次の攻撃は予想外の方向から来た。機械生物の尻尾のようなパーツが高速で振り抜かれ、俺は反応が遅れた。
「智也!」
エリスが叫ぶ中、俺はどうにか地面に伏せてかわしたものの、肩をかすめた痛みが走る。
「大丈夫だ!」と声を張るが、自分の無防備さに歯がゆさを感じる。それでも、ここで止まるわけにはいかない。
エリスがその隙に、床に浮かび上がった文字を確認している。
「智也!これは暗号のようなものよ。この記号、見覚えがある!」
「どこで?」
「最初の部屋の壁画にあったわ!あれと同じ配置になってる。」
「なるほどな…これがこの部屋の突破口か。」
床の文字を照合し、エリスと連携して暗号を解読する。機械生物は攻撃をやめる気配がないが、文字を動かすことでその動きが鈍ることに気づいた。
「これで…抑えられる!」
俺たちは力を合わせ、最後の文字を動かした。その瞬間、機械生物が停止し、床が完全に崩れ落ちる。
「行くぞ、エリス!」
足元の崩れた床から滑り落ちるように、俺たちは次の空間へと進んだ。
床の崩落に巻き込まれた俺たちは、重力に引かれるように暗闇の中へと吸い込まれていった。風が耳元を切り裂く音と共に、体が宙を舞う感覚が続く。エリスの手をしっかり握りしめながら、何とか冷静さを保とうとするが、正直に言えば怖さを隠し切れない。
「智也!下が光ってる!」
エリスの叫びで意識を引き戻された。下方には、青白い光の輪が見える。あれが着地ポイントか、それとも罠か、判断する余裕はない。
「しっかり掴まれ!」
俺は彼女の手をさらに強く握りしめ、勢いのまま光の輪に突っ込んだ。
目の前が真っ白になる。瞬間的な光の閃きの後、俺たちは柔らかい何かに受け止められた。
「クッションか…?」
足元を確認すると、厚い布のような素材でできた層が広がっている。どうやら無事に着地できたらしい。
「ふぅ…助かったわね。」
エリスが息を整えながら言う。俺も胸を撫で下ろしつつ、周囲を見渡す。この部屋は先ほどの機械仕掛けの空間とは異なり、まるで星空の中にいるような幻想的な空間だった。壁面には無数の星のような光点が瞬いており、それが規則的に動き回っている。
「また新しい仕掛けってわけか。」
俺は星座のように動く光点を眺めながら、何か意味があるのではないかと考えた。
「智也、見て。あの光点、規則的に並んでいるわ。」
エリスが指差す先には、一際明るい光点がいくつかのラインを描いて動いている。
「星座を模しているのか?だとすると、またこれが謎解きになるな。」
「でも、どの星座なのか分からなければ手がかりにならないわ。」
俺たちは光点の動きをじっと見つめた。頭の中で過去に見た天文図を思い浮かべようとするが、こんなに複雑な星座は記憶にない。
「…待てよ。」
ふと、エリスの声が響いた。
「智也、最初の部屋で見た壁画を覚えている?あれも星の配置みたいだったわ。」
「確かに…。同じ配置なら、それをヒントに何か操作する必要があるのかもな。」
壁面の光点に近づき、触れると、指先が微かに光を帯びた。さらに押し込むように触れると、その光点が動き始める。
「これで星の位置を操作できるのか。」
「じゃあ、壁画の記憶を辿って正しい位置に動かせば…。」
「簡単にいくといいけどな。」
俺たちは記憶を頼りに、光点を操作し始めた。
作業を進める中、突然背後から耳障りな音が響いた。振り返ると、霧の中から新たな敵が現れていた。
「こんな時に…!」
出現したのは、先ほどの機械生物よりもさらに巨大で重厚感のある構造体だった。その動きは鈍重だが、その分、圧倒的なパワーを感じさせる。
「エリス、光点の配置は任せた。俺がこいつを引きつける!」
「無茶しないで、智也!」
エリスの言葉を背中に受けながら、俺は敵に向かって走り出した。
敵の巨体がゆっくりと動き出す。その動きは鈍いが、一度踏み出すごとに地響きが響く。俺はその足元を駆け抜け、弱点を探るべく観察を続けた。
「脚のジョイント部が一番脆そうだな…。」
俺は見立てを基に、敵の脚部に向けて手近な石を投げつけた。しかし、石は無力にも弾かれ、効果はなさそうだった。
「ちっ…どうすればいい?」
その時、エリスの声が響いた。
「智也!光点を動かすと、この部屋の仕掛けが変わるみたい。もしかしたら、この敵も操作できるかもしれないわ!」
「ならやってみろ!俺が時間を稼ぐ!」
敵の攻撃をかわしながら、俺はエリスの作業を信じるしかなかった。彼女が光点を動かすたびに、壁面の光が反応し、部屋の雰囲気が変わっていく。
「あと少しよ!」
エリスが最後の光点を動かした瞬間、敵の動きがピタリと止まった。そして、体中のジョイント部が次々と外れ、バラバラに崩壊していく。
「やったのか…?」
俺は恐る恐る敵の残骸に近づいたが、どうやら完全に動きを止めたらしい。
「智也、大丈夫?」
エリスが駆け寄ってきた。その顔には安堵の色が浮かんでいる。
「何とかな。お前のおかげだ。」
俺たちは互いに短く頷き合った。
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