第一章 第十三話「迫る迷宮の罠」
中ボスが出てきましたね
新たに現れた通路を進むと、今までの金属的なホールとは全く違う景色が広がっていた。壁や天井は暗い石で覆われており、光源は古代風のランタンが点々と設置されているだけ。薄暗い中を慎重に歩を進めながら、俺はエリスと会話を交わした。
「ここは…遺跡みたいだな。」
「雰囲気が変わったわね。でも、どうして突然こんな空間に?」
「また量子データ世界の気まぐれってやつか…。どっちにしても、罠の匂いがする。」
俺たちは足元を確認しながら進む。床には奇妙な模様が彫られており、踏むたびに僅かに振動するような感覚がある。
「智也、この模様…何か意味があるみたいよ。」
エリスが足元の彫刻を指さす。その形は幾何学模様のようで、どこかで見覚えがある気がした。
「あれだ。さっきのパズルの模様に似てないか?」
「確かに…でも、どう関連しているのかしら。」
そう考えていると、背後で何かが動く音がした。振り返ると、石壁がゆっくりと動き始めている。
「出口が塞がれるぞ!急ごう!」
俺たちは通路を駆け抜けたが、次の瞬間、床が大きく揺れ、突如として足元が崩れ落ちた。
「くっ…!」
落下する中で何とか近くの突起に掴まり、息を整える。エリスも近くで壁に手を掛けているのが見えた。
「エリス、大丈夫か!?」
「ええ、何とか…でも、ここからどうするの?」
視線を下に向けると、底が見えないほどの深い暗闇が広がっている。一方で、掴まっている突起物には細い橋が続いているようだ。
「こっちに道がある。行ってみるしかないな。」
「気をつけてね、落ちたら終わりよ。」
橋は細く、不安定だった。揺れるたびに心臓が高鳴るが、慎重に一歩一歩進んでいく。途中で、壁にまたしても彫刻が並んでいるのに気づいた。
「これも模様だな…何かヒントか?」
「ちょっと待って、智也。これ…メッセージが隠されているみたい。」
エリスがランタンの光を彫刻に近づける。そこには古代文字のようなものが刻まれており、読み取れる部分もある。
「『正しき道を選べ。誤れば深淵へ落ちる』…だって。」
「つまり、この橋にも罠があるってことか。」
橋は複数の分岐点に分かれている。その先がどうなっているのかは暗闇のため見えない。
「どっちに進むべきだ?」
「彫刻をよく見て。次の道の手がかりがあるかもしれないわ。」
エリスと協力して壁を調べる。やがて、彫刻の中にある矢印の形状が、進むべき方向を示していることに気づいた。
「この模様、次の橋の形状と一致しているわ。」
「つまり、これを基に進めばいいんだな。」
次の分岐点では、慎重に壁の彫刻と橋の形状を照らし合わせながら進む。だが、途中で異変が起きた。
「床が…動いてる!?」
橋が突然揺れ始め、一部が崩れ落ちる。俺たちは急いで走り出し、崩れる橋をギリギリで渡り切った。
「くそっ、危なかった…。」
「油断してはいけないわ。この空間、私たちを試しているように思える。」
エリスの言葉に頷きながら、さらに奥へと進んだ。
「エリス、次の彫刻を確認しよう。」
俺たちは彫刻を頼りに進み続けた。通路は徐々に複雑になり、罠もさらに精巧なものになっていた。これまでのようなシンプルな構造ではなく、仕掛けと道筋が絡み合い、少しの判断ミスで命を落としかねない状況だ。
「智也、この迷宮、本当にデータの世界なのかしら?あまりに現実的だわ。」
エリスがそう呟いたとき、俺も同じ疑問を抱いていた。壁の冷たさ、足元の不安定さ、罠が動く音の生々しさ。それらが、これがただの仮想現実だとは到底思えないほどのリアリティを生み出している。
「仮想現実だとしても…作った奴の意図が全く読めない。まるで俺たちが本当に命をかけたゲームの駒みたいだ。」
俺たちは慎重に進む中で、目の前に一枚の巨大な扉を見つけた。
「これが出口か?」
扉は重厚なデザインで、中央には複雑な鍵穴のような模様が彫られている。その周囲には、数十個の小さなパネルが配置されていた。
「鍵穴が…何かのパズルのようだわ。」
エリスがその模様をじっと見つめる。その時、扉の上部に文字が浮かび上がった。
『道を切り開け。真実を見極めよ。選択を誤れば、迷宮の一部となる』
「真実を見極める…?どういう意味だ?」
「おそらく、このパネルを正しい順番で押す必要があるんじゃないかしら。」
エリスが指差すパネルには、それぞれ異なる模様が描かれている。それはどこかで見覚えのある形だ。
「これは…迷宮を進む中で見た彫刻と同じだな。」
俺たちは迷宮内で見た模様を思い出しながら、どの順番で押すべきかを議論した。
「確か最初に見た彫刻は、この螺旋模様だったわ。」
「次はこの矢印の形状だな。そして最後が三角形の組み合わせ…よし、これだ。」
慎重にパネルを押していく。だが、最後の一つを押そうとした瞬間、周囲の空間が揺れ始めた。
「くそっ、失敗したか!?」
床が崩れ、俺たちは必死でバランスを取る。だが、エリスが小さく叫び声を上げた。
「智也!」
エリスの足元が崩れ、彼女が下に落ちていくのが見えた。
「エリス!」
俺は咄嗟に手を伸ばし、彼女の腕を掴んだ。しかし、その重さに引っ張られ、俺もバランスを崩しそうになる。
「しっかり掴まれ!絶対に離すな!」
「智也…ごめんなさい…!」
彼女の声が震えている。俺は必死で力を込め、エリスを引き上げようとした。
「そんな顔するな!俺が絶対に助ける!」
全力で腕を引き、エリスを無事に引き上げた。二人ともその場に倒れ込むようにして息を整える。
「ありがとう…智也。」
「礼はいい。それより、もう失敗はできない。次は確実に正解を押すぞ。」
俺たちは模様のパターンを改めて確認し、慎重に順番を考え直した。そして再びパネルに手を伸ばす。
「これが最後だ…いける!」
最後のパネルを押すと、扉がゆっくりと開き始めた。重厚な音を立てながら、向こう側の新たな空間が見える。
扉の向こうには、広大なホールが広がっていた。その中央には、今まで見たことのない装置が設置されている。
「これが…ゴールか?」
「それとも、また新しい試練?」
エリスの言葉に俺も警戒を強める。装置の上には、青白い光が集まり、次第に形を成していった。それは…人の姿をしていた。
「お前たち…ここまで辿り着くとはな。」
現れた人物は、不気味な笑みを浮かべながら俺たちを見下ろしていた。
「貴様は誰だ!」
俺が声を荒げると、そいつは静かに首を振った。
「私の名はボイド。お前たちが、この世界の真実を知る準備ができているか…試してやる。」
突然、ホールの中央に光の輪が現れ、俺たちはその中に引き込まれた。視界が歪み、次に目を開けた時には、新たな戦場に立っていた。
「また試練か…くそっ、やるしかないか。」
エリスと互いに目配せをしながら、俺たちは次の戦いに備えた。
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