第一章 第十二話「静寂を超えた先へ」
分かりやすいようにエピソードタイトルに章立てと話数も書いておきました〜
薄暗い通路を進む中、俺たちは慎重に周囲を見渡した。先ほどの部屋での謎解きに続き、さらなる仕掛けがあるのは間違いない。エリスが手元の簡易スキャナーで壁面を確認している間、俺は足元の地面の感触に集中していた。
「智也、この壁…さっきの振動と似た信号を発してるわ。」
「またモールス信号か?」
「違うわ。振動は一定なんだけど、間隔が少しずつ変わってるの。まるで、進むごとにリズムを刻んで誘導しているような感じ…」
彼女の言葉を聞いてから数歩進むと、確かに微妙な変化を感じた。通路の先端に進むにつれ、振動音が次第に速くなる。
「これ、正しいルートを示してるのか、それとも罠か…どっちなんだ?」
「それを見極めるのが私たちの役割よ。」
エリスは立ち止まり、しばらく天井のラインに沿うようにスキャナーを走らせた。そこで彼女が見つけたのは、細かな赤い光点が連続して並ぶ模様だった。
「これよ。振動の間隔に従って進まないと、仕掛けが作動するわ。」
「ってことは…リズムを正確に合わせろってことか?」
「ええ。ただし、間違えたら…」
その先を聞く必要はなかった。足元のわずかな窪みや、壁の異様に鋭利な装飾を見れば、罠がどれだけ致命的かは一目瞭然だった。
エリスと共に、俺たちは足を揃え、慎重にリズムを読み取って歩みを進めた。足元がわずかに震え、壁が鳴らす音が耳に響くたび、心臓が早鐘を打つようだった。
「待って。」
突然エリスが立ち止まり、俺の腕を掴んだ。
「今の音、変わったわ。」
「どういうことだ?」
「この先、振動が一定じゃないわ。間隔が複雑になってきた。」
エリスが示した先には、小さな分岐が見えてきた。通路が二手に分かれている。それぞれの入り口の上には、さっきの振動と似た音を発する装置が取り付けられているようだ。
「選択させるってわけか…。」
「そうね。でも、どうやって正解を見つけるのかが問題よ。」
エリスは少し考え込んだ後、自身のスキャナーを再び起動させた。だが、装置から発せられる信号はどちらもほとんど同じに見える。
「これじゃ、直感に頼るしかないのか?」
「それは危険よ。必ずどこかにヒントがあるはず。」
俺たちは壁の模様や、音の周波数の微妙な違いに目を凝らした。そこで気づいたのは、片方の通路にのみ、微かだが揺れるような光のラインが浮かび上がっていることだった。
「エリス、あれを見てみろ。」
「本当ね…けど、何か意味があるのかしら。」
「もし俺たちが“動き”を求めているなら、あっちが正解じゃないか?」
「そうね。試してみる価値はあるわ。」
俺たちは揺れる光のラインを選び、その通路に足を踏み入れた。先ほどとは異なり、ここでは振動音が全く聞こえなくなり、代わりに薄い霧が漂っている。
「何だ…?この霧、妙に冷たい。」
「気を付けて。視界を奪うためだけのものじゃないかもしれないわ。」
俺たちは慎重に進んでいったが、突然背後から小さな音が聞こえた。振り返ると、霧の中にぼんやりとした人影が浮かび上がっている。
「誰だ!?」
俺が叫ぶと、その影はゆっくりと動き出した。だが、それは人間の形をしているものの、どうやら実体のないもののようだった。
「これ、ただの霧じゃないわ!」
エリスが叫ぶと同時に、その影は突然俺たちに向かって突進してきた。俺たちは咄嗟に避けたが、その動きは非常に素早い。
「エリス、どうする?こんな奴、どう対処すればいいんだ!」
「待って!あの影、光に反応してる…!」
エリスはすかさずスキャナーを取り出し、光を強めて影に向けた。すると影はわずかに後退し、その場で動きを止めた。
「そうか、光が弱点か!」
俺たちは力を合わせて影を光で追い払いながら、さらに通路の奥へと進んでいった。この試練はまだ終わっていない。だが、エリスの機転のおかげで、俺たちはなんとか突破口を見つけられた。
「智也、この先に出口があるはずよ。でも、注意して。」
「ああ、分かってる。」
二人で呼吸を整えながら、次なる試練への準備を進めるのだった。
薄暗い通路を進む俺たちの前に、徐々に光が広がり始めた。影を追い払うために使用したスキャナーの光は弱まってきたが、幸いにも前方に明るい空間が広がっているのが見える。
「出口か?」
「ええ、でも油断は禁物よ。こんなにあからさまに誘導するような場所、何か仕掛けがあるに違いないわ。」
エリスの言葉に同意しつつも、俺は不安を抑えてその空間に足を踏み入れた。そこは広大なドーム型のホールだった。壁には複雑な模様が浮き彫りにされ、中央には巨大な装置のようなものが鎮座している。
「これは…なんだ?」
「どうやら試験の最終ステージみたいね。」
エリスが装置を観察しながら言う。その装置は、まるで球体を中心にしたオブジェのようで、複数のリングがゆっくりと回転している。リングの表面には、先ほどの通路で見た光のラインが浮かび上がっていた。
「これ、どうやら動力源と繋がってるみたい。この空間全体を支配しているシステムかもしれないわ。」
「ってことは、これを何とかすれば次に進めるのか?」
「その可能性は高いけど、操作方法がわからないわね…。」
俺たちは装置を注意深く調べ始めた。近づくと、リングの一つに小さなパネルが埋め込まれていることに気づいた。そのパネルには、幾何学模様が並ぶ画面が表示されている。
「これは…パズルか?」
「ええ、ただの模様じゃないわ。このパターンを正しい順序で合わせる必要があるみたい。」
パネルに触れると、リングが動き出し、模様が回転し始めた。だが、適当に動かしていると、突然ホール全体が振動を始めた。
「くそっ、罠か!」
「落ち着いて智也!間違えると何かが作動する仕組みみたい。慎重に進めましょう。」
振動が収まると同時に、ホールの四隅からまたしても影が現れた。先ほどの霧の影よりも形が明確で、それぞれ異なる武器を持っているように見える。
「この状況でパズルを解けっていうのかよ!」
「私が戦うわ!智也、パズルを任せる!」
エリスが素早く行動を開始する。彼女は周囲の影に向けてスキャナーから放つ光を操作し、相手の動きを制限していた。その間に、俺はパネルの模様に集中する。
「…くそ、どれが正しい順序なんだ?」
模様は五つのパターンで構成されており、それぞれに異なる方向の矢印が付いている。俺はそれを一つずつ動かしながら、矢印の指す方向がリングの回転軸と一致するように調整した。
「智也!急いで!」
エリスの声がホールに響く。彼女は三体目の影を撃退したものの、残りの一体が彼女を執拗に追い詰めている。
「もう少しだ!」
最後の模様を合わせると、装置が低い振動音を発し始めた。リングが一斉に高速回転を始め、やがて明るい光を放った。影たちはその光に飲み込まれ、一瞬で霧散した。
「やった…!」
装置が静かになり、ホール全体が安定を取り戻す。中央の装置の下部が開き、そこから新たな通路が現れた。
「ふう、なんとか切り抜けたな。」
「いい判断だったわ、智也。」
エリスが微笑みながら近づいてくる。その顔には疲労が滲んでいるものの、達成感も感じられた。
「次はどんな試練が待ってるんだろうな…。」
「それは行ってみないとわからないわね。でも、少なくともこの空間は突破できたわ。」
着実に進んでいる感覚と共に、俺たちは新たな通路に足を踏み入れた。
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