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転生先は量子の彼方!?次元を超えたハードライフ革命  作者: 成瀬アイ
[第一章]俺、データになりました!?
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第一章 第十一話「静寂の前触れ」

冬になるとお菓子を作ったり食べたりしたくなりますね

次の部屋に足を踏み入れた瞬間、俺とエリスは息を呑んだ。それまでの荒々しい試練とは異なり、この部屋は異様なまでに静寂に包まれていた。床も壁も、黒曜石のように光を吸い込むような材質でできていて、そこに浮かび上がる青白い紋様が、どこか禍々しさを漂わせている。


「…何もいないのか?」

俺は低い声でつぶやきながら、部屋の中心へと歩み寄った。だが、違和感があった。この空間、ただの静けさじゃない。


「智也、この部屋…空気が違うわ。」

エリスが鋭い目で周囲を見渡す。彼女の感覚は鋭い。俺も注意を払うが、何も見えない、何も聞こえない。それなのに、どこか奥底で圧迫感を感じる。


「もしかして、次の試練は視覚的なものだけじゃない?」

「視覚以外の試練ってことか…?」


エリスの言葉に、俺はゆっくりと深呼吸をした。この静けさ、音のない空間に違和感を抱いていたが、今になってようやく気づいた。俺たちの心音すら、完全に消えている。


「これ、どういう仕組みなんだよ…!自分の鼓動が聞こえないなんて…普通ありえないだろ。」

「その反応、まずいわ。冷静に。ここでは感情や思考の乱れが危険を招きそう。」


エリスはそう言うと、床の模様に視線を落とした。その表情には鋭い分析の色が浮かんでいる。


部屋の中心には、黒曜石でできた円形の台座があった。その周囲には三つの円が刻まれており、それぞれ異なる記号が配置されている。台座には、不気味なまでに精巧な機械のような装置が埋め込まれていた。


「これ、触るべきか…?」

俺が戸惑っていると、エリスが台座に近づき、慎重にその表面を指でなぞった。


「…おそらく、この装置が部屋全体を制御しているのね。けれど、罠も仕掛けられている可能性が高い。」

「となると、適当に触ったらまずいってことか。」


俺たちは台座を囲むように立ち、記号の配置や意味を読み解こうと試みた。しかし、その記号は見覚えのないものばかりで、解読は容易ではなかった。


「智也、この部屋の静寂、ただの演出じゃないわね。」

エリスが低く言う。


「どういうことだ?」

「記号の間隔や形状、配置…音や振動を抑えるための共鳴構造に似ているわ。」


確かに彼女の言う通りだ。天井にも壁にも、微妙な曲線が描かれており、それが全体として一つの「音を消す仕組み」を形成しているように見える。


「だとすると、この装置を動かすには音に関する何かが鍵になるってことか…?」

「ええ。でも音を発すること自体、この部屋のルールに反していそうよ。」


俺たちは短い目線の交換で無言の了解を得た。何かを試すにしても慎重に動く必要がある。


「じゃあ、まずは俺が触ってみる。」

「待って。触る場所と順番を考えないと、部屋全体が反応するかもしれないわ。」


エリスが台座の記号に注視しながら、一つずつ何かを読み取るように呟く。その集中した表情を見て、俺は彼女に完全に任せることにした。


「分かった。エリス、お前の指示通りに動く。」


エリスは小さくうなずき、慎重に記号の配置を分析し始めた。


部屋の中の静寂が、まるで俺たちを試しているかのようだ。俺たちは互いに声を落とし、必要最低限の動きで台座を囲む。


エリスが指をさした。

「まずはこの記号、中央の円を少し時計回りに回して。」


俺は彼女の指示通りに手を動かした。台座がカチリと音を立てる。しかし、それ以外に反応はない。


「次は?」

「そこから三つ目の記号を押して。角度を変えずに…そう、力加減も一定に。」


言われた通りに操作すると、台座の中央がゆっくりと沈み込み、低い振動音が響き渡る。


「成功…なのか?」

俺がそう思った瞬間、壁の一部に明るい光のラインが浮かび上がった。


「まだ油断しないで。このライン、何かを示している。」


エリスがそのラインを追いかけ、台座から壁までの間に隠された文字列に気づいた。


「これ…暗号文?」

エリスが呟き、その内容を読むと目を見開いた。


「“声を持たぬ者が扉を開く”」


俺はその言葉の意味を考えた。声を持たない…つまり、音を使わずに何かを操作しなければならないのか?


「智也、さっきの操作と同じ方法で、音を出さずにもう一度試してみて。」


緊張感が走る中、俺たちは慎重に次の行動を決める。失敗すれば、部屋そのものが俺たちを飲み込むような気がした。


「音を出さずに操作しろってか…難しい要求だな。」

俺は眉をひそめながらエリスに問いかけた。エリスは軽く頷くと、壁に浮かび上がった文字列を再び見つめる。その目には、焦りを抑え込んだ冷静さが宿っている。


「智也、この暗号文には多分二重の意味があるわ。“声を持たぬ者”って単に音を出さないだけじゃなく、別の存在を指している可能性もある。」


「別の存在?…それって、何だよ?」


エリスはしばらく黙り込み、台座と壁の模様を交互に見比べていた。その間にも、部屋の静寂はますます俺たちを圧迫してくる。空気が重く感じられ、時間の流れすら遅くなったように思えた。


「声を持たない…つまり、無機的な存在。」

エリスがふと呟いた。


「無機的って、もしかして…装置そのもののことか?」

俺は台座を指差した。エリスは首を横に振りつつも、考えを巡らせているようだった。


「違う。もっと象徴的な意味だと思うの。ここで“声を持たぬ者”が動かすべきなのは、私たちじゃなく、この部屋自体かもしれない。」


その言葉を聞いて、俺は改めて台座を見下ろした。暗号めいた記号や模様が浮かび上がっているものの、まだ解き明かせない部分が多い。それでも、エリスの理論に基づけば、この装置を動かすための新たな視点が必要だった。


「エリス、一つ試していいか?」

「いいわ。でも慎重に。」


俺はポケットから、小型の金属片を取り出した。この世界に入る前に拾った、何の変哲もない金属製の破片だ。それをそっと台座の上に置いてみた。


すると、台座が微かに震え、青白い光がその金属片に反応するように輝き始めた。


「当たり、みたいだな。」

「でも、まだこれで終わりじゃなさそうね。」


その瞬間、部屋全体に低い振動音が響いた。今まで聞こえなかった音が唐突に蘇り、壁の模様が一斉に光を放つ。


「エリス、これヤバいんじゃないか?」

「分かってる。早く台座をもう一度操作して!」


彼女の声に急かされ、俺は台座の記号を順番通りに押していく。だが、今度はそのどれも反応しない。


「どうなってるんだよ…!今度は何をすればいい?」

「待って…何かが足りない。」


エリスは壁に浮かび上がる光のラインを再び見つめた。そこには新たな暗号が現れていた。


“無音の中に響く答えを探せ”


「無音の中に響く…答え?」


その言葉にハッとした俺は、深呼吸をして耳を澄ませた。この部屋の静寂、そして今の振動音。その中に何か隠されているはずだ。


「エリス、この音…ただの振動じゃない。パターンがある!」


エリスは驚いたように目を見開き、耳を傾けた。そして頷くと、自分の腕時計を外して台座にかざした。


「確かに、この音…モールス信号のように規則性があるわ!」


俺たちは振動音を慎重に聞き取りながら、そのパターンを解読し始めた。それは短いリズムと長いリズムが交互に並ぶ、一種の暗号だった。


「短い振動が“1”、長い振動が“0”だと仮定すると、これは…」

エリスが素早く記録を取る。


「0110…つまり6?」

「いや、違う。これ、位置を示してる。」


エリスと俺は再び台座に目を向けた。その中央には六つの記号が並んでいる。振動音が示すのは、その中の特定の位置だった。


「左から三つ目…これか!」


俺はその記号に触れた。すると再び台座が震え、今度は周囲の壁全体が動き始めた。


部屋の一角がゆっくりと開き、暗い通路が現れた。


「やった…のか?」

「ええ、でも油断しないで。まだ何か仕掛けがあるかもしれないわ。」


俺たちは互いに頷き合い、慎重に通路へと足を踏み入れた。

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