第一章 第十話「決戦の予兆」
実はもう完結までほぼ書き溜めてたり
広大な草原に立つ俺たちの目の前に、静かにそびえ立つ巨大な構造物が現れた。それは石造りの塔のようにも見えるが、表面にはまるで電子回路のような模様が刻まれている。不気味なほど整然とした模様は青白い光を放ち、どこか人工的な雰囲気を漂わせていた。
「智也、あの塔が次の試練の舞台だと思うわ。」
エリスの声には緊張がにじんでいた。
「間違いなさそうだな。でも、この静けさが逆に不気味だ…」
俺は塔を見上げながら呟いた。
塔の周囲には何もない。ただ風が草原を揺らす音だけが響いている。この静けさが、逆に俺たちの不安を煽っていた。
塔の入口に近づくと、無機質な声が響いた。
「挑戦者よ、知恵と力を試す準備はできているか?」
俺たちは思わず顔を見合わせる。エリスが一歩前に出て、毅然とした声で答えた。
「もちろんよ。」
その瞬間、塔の扉がゆっくりと開いた。中からは薄青い光が漏れ出し、俺たちを誘い込むかのようだった。
塔の中は外観以上に異質だった。壁一面に幾何学模様が刻まれ、天井には星空のような光が点在している。床は滑らかで冷たく、俺たちの足音が微かに響いた。
「随分と…未来的な雰囲気だな。」
「そうね。だけど油断しないで。この場所自体が罠かもしれないわ。」
塔の奥へ進むと、突然床が揺れ、目の前に黒い球体が現れた。その球体は宙に浮きながらゆっくりと回転し、まるで俺たちを観察しているようだった。
「挑戦者よ。この試練では、知恵を用いて次の扉を開く鍵を得よ。」
黒い球体が静かに告げると、周囲の空間が歪み、目の前に巨大な盤面が出現した。それはチェスにも似たボードだったが、駒には全く見覚えのない記号が刻まれている。
「なんだこれ…ゲームか?」
俺が困惑していると、エリスが駒を注意深く観察して言った。
「待って。これ、ただのゲームじゃないわ。この駒、それぞれ量子状態を表しているみたい。」
「量子状態?」
「ええ。駒の動きや配置が、まるで量子コンピュータの計算を模しているように見えるの。」
説明を聞いても正直よく分からないが、とにかくこの盤上で何かを解決しないと次に進めないのは間違いなさそうだ。
「分かった。ルールを探りながら進めてみるしかないな。」
俺たちは盤上の駒を慎重に動かし始めた。だが、動かすたびに周囲の光が変化し、次第に圧迫感が増していく。
「智也、駒の動きが周囲の環境に影響を与えているわ。正しい配置にしないと、この空間が崩壊するかもしれない。」
「了解だ。エリス、他に何か気づいたことは?」
「ええ。どうやら駒を動かすとき、一定の法則があるみたい。おそらくこの記号がそのヒントになるわ。」
俺たちは盤面をじっくり観察し、駒の記号や配置の法則を解読しようとした。記号の一部はパズルのように組み合わさり、他の一部は全く関連性がないように見える。
「これ、かなり複雑だな…」
「でも、見て。これらの記号、一定のパターンを繰り返しているわ。このパターンを見つければ、突破口が開けるはずよ。」
エリスの鋭い洞察に助けられながら、俺たちは駒を一つずつ慎重に動かしていった。すると、少しずつ周囲の光が安定し始めた。
だが、あと一手というところで、突然黒い球体が激しく回転を始めた。
「挑戦者よ。知恵だけでは足りぬ。次は力を見せよ!」
その言葉とともに、塔の空間が再び歪み、目の前に鋼鉄の巨人が現れた。その巨人は無表情の仮面をかぶり、両手に巨大な剣を持っている。
「くそっ、今度はこれかよ!」
「智也、気をつけて。この巨人、ただの物理的な存在じゃないわ。」
エリスが警告する間もなく、巨人が剣を振り下ろしてきた。その剣が床を叩くと、衝撃波が走り、俺たちは咄嗟に飛び退いた。
「この巨人、私たちの動きを読んでいるわ。」
エリスの言葉に、俺もすぐに気づく。巨人は俺たちの行動を予測し、攻撃を仕掛けてきている。
「となると…こいつを倒すには俺たちもフェイクを混ぜて動く必要があるな。」
「そうね。お互いに囮を引き受けながら、隙を作るのよ。」
俺たちは作戦を立て直し、巨人に再び立ち向かう準備を整えた。
鋼鉄の巨人がゆっくりと動き出す。その動きは、まるで計算された機械のように無駄がない。俺たちはそれぞれの役割を果たすべく、一歩後ろに下がった。
「智也、まず私が囮になるわ。その間に、巨人の行動パターンを見極めて。」
「了解だ。でも、無理はするなよ!」
エリスはうなずき、巨人に向かって軽快なステップを踏んだ。鋼鉄の巨人はエリスの動きに反応し、巨大な剣を振り上げる。その剣が空を切る音が、塔内に不気味に響いた。
「やっぱり攻撃が単純に見えても規則性があるわ!」
エリスが鋭く指摘する。俺は彼女の言葉に従い、巨人の動きをじっくり観察した。確かに、巨人はエリスを追い詰めるように見えて、その動きには特定のリズムがある。
「どうやら攻撃は三連続で来た後に、少しの間動きが止まるみたいだ。」
「その隙を突くのがポイントね!」
俺たちは作戦を固め、再び動き出した。エリスが囮となり、俺が背後に回る。しかし、巨人も馬鹿ではなかった。俺が動くたびに、その目が一瞬だけこちらに向くのを感じる。
「智也、巨人は私たち二人の動きを同時に追っているわ!」
「くそっ、なんて奴だ!」
だが、ここで諦めるわけにはいかない。俺は塔の周囲に目をやり、何か使えそうなものがないか探した。すると、壁の一部に小さなスリット状の穴がいくつも開いているのに気づいた。
「エリス、あの壁のスリット、何か仕掛けがあるかもしれない。」
「分かったわ。私が注意を引き付けるから、そっちを調べて!」
エリスの機転に助けられ、俺はスリットの前に駆け寄った。中を覗き込むと、何かが機械音を立てて動いているのが見える。
「これ…塔全体の制御装置か?」
俺は咄嗟に手を突っ込み、装置を操作し始めた。スイッチやレバーがいくつもあり、どれが正解かは分からない。
「智也、早くして!もう持たないわ!」
エリスが巨人の剣をかわしながら叫ぶ。俺は焦りを抑えつつ、記号を見比べ、塔の装置と盤面の記号に共通点があることに気づいた。
「これだ…!エリス、もう少しだけ耐えてくれ!」
俺は手元の装置を操作し、記号のパターンを正確に入力した。すると、塔全体が振動し始め、巨人が一瞬だけ動きを止めた。
「今だ、エリス!」
エリスはその隙を逃さず、巨人の足元に駆け寄り、腰に刺した短剣を一気に突き立てた。巨人の動きが鈍り、膝をつく。その瞬間、塔の天井から光の柱が降り注ぎ、巨人の体を包み込んだ。
「やった…のか?」
俺たちは息を切らしながらその光景を見守った。光が消えると同時に、巨人は跡形もなく消え去り、代わりに輝く宝石のような鍵が床に残されていた。
「これが次の扉を開く鍵ね。」
エリスが鍵を拾い上げると、塔の奥から再び声が響いた。
「挑戦者よ。この試練を乗り越えたことを称賛する。」
声が消えると同時に、塔の壁が開き、次の部屋への道が現れた。
「どうやら次に進めるみたいだな。」
俺たちは互いにうなずき、慎重にその道を進み始めた。
道中、エリスがふと立ち止まり、俺に問いかけた。
「智也、あの巨人…ただの敵じゃなかった気がするの。まるで私たちの能力や連携を試しているような…。」
「確かに。敵というより、この塔自体が俺たちを鍛えるための何か…そんな感じがする。」
「ええ。だけど、その理由が分からない限り、この先も油断はできないわ。」
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎評価と、ブックマークをしていただけると、ハッピーな気持ちになります…




