29. 禁断の魔法
禁断の魔法
むかし、「スプーン曲げ」なる超能力とかいうインチキなモノがテレビ等で拡散しました。
何故インチキと言ってしまうのか?
魔女からしてみれば、超能力というのは魔法でも何でもなく、インチキとしか見えないのです。
本当に超能力なら、こういう事をして欲しかったのです。
折れたスプーンを、元通りにして欲しかったのです。
壊すだけなら、力が強い人なら、誰だって出来るのです。
壊れたものを直してこそ、「超能力」ではないでしょうか?
メーカーで修理を断られたり、古過ぎて部品が無いからと言われた家電品を、直してくれる人がいます。
そういう人こそ、「超能力者」なのです。
子供の頃から大人になっても、いつも一緒にいてくれたヌイグルミを、綺麗に、殆ど元通りにしてくれる人もいます。
そういう人も、「超能力者」なのです。
でも、こういう人達は「超能力者」であって、魔法使いではありません。
魔女と魔法使いがいます。
一応、同じ魔法を使う人達ではありますが、基本的に、魔女は呪文を唱えなくても魔法が使え、呪文を唱えなければならないのが魔法使いです。
でも、魔法ですから、よく使う魔法の呪文を一括りにして、呪文を唱えなくても良い魔法が編み出されました。
魔女であっても、全ての魔法を使える訳ではありません。
ある限界数を越えた魔法は、魔女と言えども呪文を唱える必要があるのです。
その為には、魔女もあまり使わない魔法の呪文を一括りにして、呪文を唱えなくても良い魔法を取り入れたりしているのです。
普通の人間も、使わない能力は衰えていきます。
常日頃からの修練が必要なのです。
そんな訳で、魔女と魔法使いの分岐点は分からなくなってきています。
魔女や魔法使いは、超能力ではなく魔法を使います。
テレビで流行った偽物の超能力の様に、「物を壊すだけ」などという事はありません。
建設的なのです。
でも、「禁断の魔法」もあります。
普段は使わない、いや、使えない魔法です。
その一つが、魔女の夫や子供に危害を与える相手を「消し去る魔法」です。
この魔法を使う時、何故か、魔女は「黒い魔女」になって現れます。
ただ、昔の様に黒いマントに黒い尖がり帽子ではありません。
現代の魔女は、長いウエーブの掛かった黒髪に、黒いミニスカスーツに黒いピンヒールで現れるのです。
まあ、一種の「流行」です。
夫や子供に危害を与える相手の前に現れた魔女は、腕を斜め上に動かします。
それだけです。
そうすると、夫や子供に危害を与えようとした相手の首が、胴体から地面に転げ落ちます。
転げ落ちた首も、首の無くなった胴体も、ドロドロに溶けて、どこかに流れて行って、無くなります。
「禁断の魔法」は一つの魔法ではなく、複数の魔法で構成されています。
夫や子供に危害を与える相手を「消し去る魔法」の場合、こんな感じです。
夫や子供に危害を与える相手を魔女が検知します。
瞬時にその場所に移動します。
瞬間移動している間に、黒い魔女に着替えます。
黒い魔女で現れるのです。
凄惨な場面を見せたくないので、夫や子供には「忘却の魔法」を掛けます。
そして、危害を与えようとしている相手の首を切り落とします。
魔女に躊躇はありません。
一瞬で、相手の首を撥ねます。
切り落としたと同時に、首と胴体をドロドロに溶かして、排水溝等へ流してしまいます。
周りに関係ない人がいれば、その人達にも「忘却の魔法」を掛けます。
近頃は防犯カメラなどもありますので、それらの機能を停止させて、一切映らない様にもします。
最後に、夫や子供にキスをして、黒い魔女は消えていなくなります。
「キスをする」行為が、この魔法の終了の合図なのです。
黒い魔女がいなくなると、何事も無かった様に、みんなは動き出します。
勿論、溶けて流れて行った連中はどこにもいません。
そんな連中は、居なくなっても何の問題もありませんから ・・・
他にも色んな「禁断の魔法」があります。
色々ありますが、殆ど使われない魔法です。
でも、多分、使っている魔女がいると思われる「禁断の魔法」があります。
魔女は、18歳になると男を探します。
「色に狂う」のではありません。
一生の伴侶を探すのです。
普段は「人から見えづらくなる魔法」で、美人でスタイルの良いのを隠していますが、18歳から暫くの間は、その魔法が弱くなるのです。
「人から見えづらくなる魔法」は、普段、道を歩いている時に目立たなくするための魔法です。
学校や仕事の時には、「美人と思われない様にする魔法」を使います。
でも、スタイルの良いのは隠しようがありません。
18歳から暫くの間は「美人と思われない様にする魔法」の効果も弱まります。
何処に、将来の伴侶に適した良い男がいるのか、分からないからです。
魔女は、男と愛し合ってしまえば、その男と一緒になるしかありません。
一人の男と一生を添い遂げるのです。
ですから、徹底的に調べて、調べつくして、男を探すのです。
「これだ!」と思う事もある様です。
よく、「ビビっときた」という、直感みたいなものです。
ただ、魔女と言えども、失敗はあります。
安易に「これだ!」と思ってしまう事もある様です。
魔女と言っても、魔法を使える女性という事なのです。
完璧ではないのです。
そんな時に使うのが、もう一つの「禁断の魔法」なのです。
この「禁断の魔法」は、魔女が18歳になった時に母親から、直伝で教わります。
18歳を過ぎた魔女はみんな知ってはいるのですが、魔女の仲間内では公然の秘密の魔法なのです。
それは、「無かった事にする魔法」なのです。
何が「無かった事」なのか?
男とヤッテしまってから、「この男は違う」となった場合に使う魔法です。
”その時” は双方が愛し合っていたのでしょう。
でも、そうでない場合もあるのです。
愛していたのは魔女の方だけで、その男が魔女を巧妙に騙していた場合もあるのです。
ただ、よくある「既婚者なのに独身」というパターンはありません。
そのくらいの事を調べるのは、魔女に取って難しい事ではありません。
しっかりと、徹底的に調べて、調べつくしてからの事なのです。
でも、騙されていたり、やはり「間違え」だったと気付く場合もあるのです。
でもでも、ヤッテしまっているのです。
まあ、魔女にとっての「この男は違う」という事ですから、複雑な内容なのでしょう。
でも、その男とヤッテしまったのです。
普通なら、諦めてその男と一緒になるしかありません。
でもでも、どうしても「嫌」なのです。
許せないのです。
相手の男ではなく、自分がです。
そんな時に使うのが、禁断の魔法、「無かった事にする魔法」なのです。
無かった事にするのです。
元に戻るのです ・・・ ?
戻りたいのです。
でも、ヤッテしまったしまった事は、ヤッテしまったのです。
でもでも、魔女は簡単には子供を造れません。
昔、いや、大昔、美人でスタイルが良い魔女は、権力者に狙われたのです。
魔女自身は戦って勝てたのかもしれませんが、人質を取られたりした場合は、どうしようもありません。
そんな時に、泣く泣く、権力者に遊ばれてしまった事があったのです。
そんなことが無いように、いまは「危機管理システム」で魔女の身体を守っているのですが、大昔には無かったのです。
そんな時に作られたのが、「無かった事にする魔法」なのです。
「禁断の魔法」ですから、複数の魔法の集合体です。
無かった事にするのは、まず、魔女です。
魔女の記憶から、ヤッテしまった事を消し去ります。
同時に、魔女とヤッタ相手の記憶から、ヤッテしまった事を消し去ります。
ついでに、魔女の事を忘れさせてしまいます。
大昔に急いで無理矢理作った魔法なので、基本は「忘却の魔法」の応用編です。
ただ、残念なことに、アソコは元には戻りません。
精神的には「処女」のままですし、ヤッタという記憶はありません。
でも、身体は「処女」ではありません。
「気持ちの問題」を解決すれば、それで良いという考え方です。
まあ、仕方がないと言えば、仕方がないのです。
大昔の様な無理矢理ではなく、現代魔女が自分では「この男」と思ったのですから ・・・
それに、自分自身ではヤッタ事を覚えていないのです。
ですから、次の男にバレる事はありません。
次の男が、自分としては「初めて」なのですから ・・・
そして、魔法を掛けた途端に、自分のその部分の記憶が無くなるのですから、この魔法を使ったと思っている魔女はいないのです。
都合が良いと言えば、都合が良い魔法なのです。
もしかすると、結婚してからこの魔法を使った魔女がいるかもしれませんが、本人の記憶に残っていないので、定かではありません。




