誕生の章
ドーナツ状のこの大陸はコロナと呼ばれる円環状の大地と内海、外海という海に挟まれた場所である。
コロナには四つの大国がある。北方の魔法王国アキュラ 西方の教皇国リューネ 南方の太陽帝国ライヒ 東方の傭兵連合国ヤマトが互いに拮抗しており、ときに手を結び、ときに激しくぶつかり合ったが今は互いに手を取り合って平和を享受していた。人々はこの世界を4つの秩序と呼んだ。
目を覚ますとそこは見たことのない世界であった。
見たことのない生き物が見えるし、人のいない大草原地帯がある。
都会暮らしに慣れた身としては新鮮以外の何もでもない。
――感傷に浸ってもいられないか。どうしたものか。
どうしようかと考えていると、目の前にモニターが出る。
「音声ガイド。こちらミネルヴァ。あなたのお名前をお願いします。」
「うわ!? しゃべった!? 」
「あなたのお名前をお願いします。」
「名前か……名前……名前……。スオウ。スオウだ。」
「スオウ様。登録いたしました。では、初めにクリエイターチュートリアルを行いますか。」
モニターに≪はい≫と≪いいえ≫が表示された。
≪はい≫を押すと、モニターが切り替わり、クリエイターモードという画面になった。
「クリエイターモードではスオウ様がクリーチャーを作ることができます。クリーチャーは種族、性別、容姿、能力、自立性を変更し創造することができます。まずは種族を押してください」
種族を押すと、人、亜人、魔物種、飛空種、海中種、地中種、不死体と表示された。
「例えば人は人族になります。この世界では北系、東系、西系、南系の4つの人族で構成されています。このような中から選んでいきます。まずはチュートリアルなので魔物種を選んでください。」
魔物種を押すと複数の姿が表示される。
「気に入った見た目の魔物を押してください。」
牙の生えたイノシシのような魔物を押した。
「次に、性別、容姿の詳細を選んでください。
適当にポチポチと押していく。
「次に能力です。ステータスと特殊能力に数値を振ります。ステータスや特殊能力を強くすると使役にかかるコストが上がります。使用可能コスト以上になるとコントロールができないのでご注意ください。また、自立性を上げることでコストを軽くすることができますが、自立性の高いクリーチャーは優先順位を変えて命令に従わないことがありますのでご注意ください。」
ステータスは最弱で、自主性なしを押した。
すると魔法陣のようなものから魔物が出現した。
魔物はひれ伏し、命令を待っているようだ。
「なるほど。面白い。いろいろやってやるか。」
イノシシを枕代わりにしてモニターをいじり始めた。
日が沈んできた頃、スオウは立ち上がった。
「やっとできた。ゲームのクリエイティブじゃないけど時間かかったな。とりあえず召喚! 」
魔法陣から現れたのは色白で眼鏡を着けた長身の男であった。
「創造主様、ガルディレア拝命いたしました。」
スオウに向かってガルディレアは跪いた。
「お~すごい! 魔人ガルディレアか。よし、とりあえずは話し相手になってよ。」
「拝命いたしました。何を話せばいいでしょうか。」
「とりあえず、次のクリエイティブするから、その間この世界の知識を語っていてくれる。」
「拝命いたしました。この世界はテトラルキアと呼ばれています。その所以は……………………。」
ガルディレアがひたすら世界のうんちくを語っている間にあと2体の魔人を作り出した。
「よし! やっと揃ったな! 」
揃った3人の魔人を見て満足した表情を浮かべた。
一人は最初の魔人ガルディレア、二人目は黒い翼とロボットのような見た目の魔人ヴォルディーノ、三人目はとても妖艶な美女の魔人エミリッテ。
「魔人ガルディレア、魔人ヴォルディーノ、魔人エミリッテ。お前ら三人をこれからは混沌の三銃士と呼び、僕の幹部として手足として世界を恐怖に落とすのだ! 」
「「「ははは!」」」
「さて、世界を滅亡させるにあたってだが、三人にはそれぞれ別の国に潜入してもらう。潜入した後はそれぞれのやり方で世界を戦争になるように仕向けるのだ。」
それぞれの魔人は呆気にとられたような顔をした。
「創造主様、我らは潜入した国で暴れて世界を滅ぼすのではだめなのですか? 」
「うむ。僕もお前らも最強の力をもってここにいる。暴れるだけでは神は楽しまないのだ。それ故にお前らの行動には制限を付ける。その一、自発的な暴力、殺戮をしないこと。正当な防衛は可能。その二、必ず人と人が争うように仕向けること。その三、戦争が起きるまで国から離れないこと。そして最後に、決して正体を知られることのないようにすること。これらを守らねば自壊するようにしてある。」
二人の魔人たちは困惑の様子を見せるが、一人冷静なガルディレアが前に出てくる。
「つまり、その四つ以外は好きにやってもよいということですね。それならば問題はありません。我らにお任せください。」
「うむ、僕は太陽帝国に行く。他の3人はそれぞれ相談し、移動せよ。では……戦乱の世で会おう!」
転移魔法を起動すると光に包まれていった。
「創造主様は何やら壮大なことを目指しておいでですな。」
ヴォルディーノは平服を解くと膝を崩して座りなおした。
「あらぁ、おもしろいじゃない。」
エミリッテも座りなおすとキセルを出して一服し始めた。
「まずは、潜入する国だが、我は魔法王国、ヴォルディーノは傭兵連合国、エミリッテは教皇国ではどうだろうか。それぞれの適正に合っていると思うが異論あるかな。」
「「意義なし」」
3人はニヤリと笑うと転移魔法を使い、それぞれの場所に飛んでいった。
こうして世界滅亡までの火蓋が切って落とされた。
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