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転生の章

 アレキサンダー、ハンニバル、アッティラ、モンゴル帝国、織田信長、ナポレオン。歴史を変えた戦いには歴史を変えた人たちがいた。


「こっちの戦力は兵力が1万。相手は8万か。どうやっても勝てないな。」

 味方の陣地を見回すと、剣や槍で戦う足軽と弓が使える弓隊、少数の騎馬隊のみ。対する相手は防御の柵に多数の騎馬隊と鉄砲隊までいる。

「まあ、不利な状況から勝てると楽しいんだよな。」

 味方の騎馬隊には鉄砲のぎりぎり届かない地点までの突撃を指示する。それと同時に足軽隊には退却の指示をする。

「さて、どう動くかな。」

 敵は鉄砲を撃つが当たらず、近くに敵がいるため、騎馬隊でこちらへ突撃してくる。

「ビンゴ!戻れ!」

 味方の騎馬隊を敵を引き付けながら下がらせると、そこには先に下げておいた足軽隊と弓矢の雨。

 敵の騎馬隊は混乱して壊滅していく。やられなかった敵も下がっていく。

「これ以上は相手も詰めてこないだろうし、森に伏兵を置いて、撤退するとしよう。」

 味方に指示を出してペットボトルのキャップと緩めて一服する。


 モニターから目を離して背伸びをする。戦国時代の戦略シュミレーションゲームで俺は天下の大軍師になれているのだ。もし、この時代に生まれていたらと思うことがある。歴史に名を遺した人になれただろうか。


 「さて、続きだな。」

 再びモニターに目を戻すと、なぜかモニターは真っ暗になっている。

 「え!? おいおいおい。ここまでやったのにどういうことだよ。動け! 動け! このポンコツが!」

 モニターをガンガン叩くが全く反応しない。

 大きなため息をつくと、部屋を後にした。

 ――仕方ない。コンビニでも行くか。


 コンビニに向かう途中にそれは起こった。

 いつも通る道の民家に犬がいる。その犬はいつもなら静かに寝ているのだが、今日は違った。僕が横切ると同時に飛び出して吠えた。

 とっさのことで僕は驚き、金縛りのように動けなくなった。そのとき、途轍もない轟音と衝撃が体を襲った。

 体は吹き飛ばされ、体には風穴が空いている。

 ――痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。死ぬの。死にたくない。死にたくない。死にたくない。まだ。まだ。まだ、何も為していないのに!

 何かに縋ろうと手を伸ばすが、そのまま意識が消えていった。


 

 気が付くと僕は不思議な空間に立っていた。

 真っ白で何もない空間だ。しかし、何もないはずの空間に何かの気配を感じた。

「目覚めたか。今、自分がどのような状況か呑み込めておるか。」

 無から発せられた声におののくと、それは現れた。

 それはまるで絵にかいたような女神であった。

「神様? 僕は死んだのか。」

 こちらの様子を見て、女神は静かにうなづいた。

「死んだ。そして、選ばれたのじゃ。」

「選ばれた?」

「うむ。我は人間からは戦いの神と呼ばれる存在じゃ。おぬしに新たな戦いの舞台を作ってもらいたくてのお。」

 ――理解が追い付かない。死んだ? 選ばれた? 新たな戦い??

「混乱しておるのはわかる。説明してやろう。我は戦いの神であるが、戦いをする神でもなければ、戦いに勝つための神でもない。ただ戦いを眺める神なのじゃ。そして、人という生き物は古来から様々な方法で戦ってきた。それを眺めるのは本当に楽しかった。しかし、昨今はどうじゃ。無機質なものを使って戦うのみ。おまけに互いを互いが牽制し合うだけの本当につまらない世の中になってしまった。そこで、おぬしをここに呼んだのは戦いのある世界に連れていき、我が好む素晴らしい戦いを作ってほしいのじゃ。」

 ――やっと事情がわかってきた。僕は死んでこの神の道楽に突き合わされそうになっているわけか。

「不満そうじゃの。ただでとは言わん。もし、我が満足するような戦いになればおぬしを生き返らせてやろう。さらにおぬしの願いを一つ叶えてやる。どうじゃ。とても良い話であると思うが。」

「どんなことでも叶えてくれるのか? 」

「無論。神はできないことはないのじゃ。」


 ――どうせ死んだ身だ。やるだけのことはやってやろうじゃないか。

「やる! やらせてほしい! 」


 女神は微笑むと空間に映像を映した。そこにはドーナツ状の大陸とその大陸の人々の生活の様子が映し出された。剣で訓練をする者、魔法で料理をする者、ドラゴンに乗って空を飛ぶ者。所謂、剣と魔法のファンタジーな世界だ。

「この世界はテトラルキアというのじゃ。おぬしのいた世界とは全然違う世界で今は平和そのものじゃ。この世界に戦いを起こし、そして滅ぼすのじゃ。」

「滅ぼす……なんか罪悪感を感じるな……。」

「案ずるな。この世界はおぬしの世界とは違う。それに叶えたい願いもあるのじゃろう。」


「どうしたらいい? 」

 女神は僕へ指を指すと、僕の前にモニターが現れた。

「おぬしには神からの恩寵で好きにやれるようにした。この世界で好きなように魔法が使え、どの人とも言葉が通じ、そして好きなだけ敵キャラを作れるようにした。」

 モニターの画面がそれぞれのやり方を示しながら切り替わっていく。

 ――なるほど。これはすごい。ゲームのような世界だ。

「神様。これを与えてくれたことに感謝するよ。やっと為すべきことを為せそうだ。」

「期待しておるぞ。」

 すると空間が光で包まれていき、その光に僕は呑み込まれていったのだ。



    

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モチベ上がりますのでよろしくお願いします。

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