シャッター
よく行くスーパーに向かう途中に、やや大きな倉庫がある。
看板などは出ておらず、どのような企業が使用しているのかは不明だ。
通りかかる時はいつもしんと静まり返っているので、おおよそですら所有者?の様子をうかがい知ることはできない。
前方にある駐車スペースには、車が四台みっちりととめてある。
日によって微妙に車のラインナップが違うので、たぶん毎日入れ替わっているのだろう。
建物は二階建ての家ほどの大きさで、前面は大きなシャッターで閉じられている。
シャッターの最上部はかなり高い位置にあり、うっかり勢いよく開けてしまったら、二度と閉めることができなくなりそうなレベルだ。もしかしたら、電動開閉式なのかもしれない。
物流倉庫にしては小さいし、頻繁に車が出入りしているようにも見えないので、おそらく在庫のようなものを置いているのだろう。
私はわりと、この手の倉庫が好きだ。
一昔前、義父が使っていた倉庫が同様のタイプのものだったので、なじみがある。
仕事がない日に、ユニック車を外に出して倉庫の内部で焼き肉をやったりしていた記憶も相まって…やけに愛着がわくというか。
一体何が入っているのか…気にならないでも、ない。
義父は信じられないくらいモノを溜め込む人だったので、思いがけないところからものすごいお宝が発掘されたりして…ずいぶん楽しかったのだなあ。
昭和の携帯電話、レコード、レーザーディスクのカラオケ、旦那が子供の頃に撮影されたビデオ、水を飲む鳥、ダッコちゃん、変な百科事典、ギラギラと輝くジャケット、ジャンピングシューズ、タイプライター、でっかいオーブンレンジ、パイの足りない雀卓、ぶるぶるマシーン、スタイリー、スカイウオーク、ぶら下がり健康機……。いい歳をしてはしゃいで遊んで…ずいぶん笑われたものだ。
もしかしたら、お宝があるかもなと、ふと思う。
たぶんないだろうとは、思っている。
アパレル関係か、建築関係か…、おそらく食品ではないと思う。
部材か、製品か…、おそらく完成品ではないと思う。
一般的に、この手の大型倉庫というのは…シャッターの向こう側はコンクリートの床とむき出しの鉄骨、鉄板の壁にワイヤー入りの窓があるだけだ。
真夏は暑く、真冬は凍え、温度変化も激しい上に、雨が降れば湿気もこもる。
混入や変形、破損の可能性のあるものは、おそらく…、こんな住宅街のど真ん中にあるシャッターだけで仕切られた空間に置くことをしないはずなのだ。
一度も荷物の出し入れをしているところを見たことがないから、想像が捗ることこの上ない。
どうせつまんない、ただのがらんどうの空間が広がっているんだろう………。
「…って、ハイ?!」
やけにクソ暑くなった梅雨真っ只中の快晴日、ソフトクリーム片手に通りかかったらですよ!!
あの、万年閉じっぱなしのシャッターが……開いとるがな!!
車は一台もとまっておらず、シャッターは全開…そして倉庫の中には、天井までミチミチに段ボールが積み込まれている!!
そしてそれを腕を組んで見上げる、中年男性たち!
ガレージの中は、まるで…リアルテトリス状態だ!!
一体どうなってんの?!
倒れて来そうなもんだけど、やけにきっちりどっかり安定感たっぷりに!!
こんなことも、あるのだな……。
あまりにも驚いたので。
私は、そのことをね?!
記念に記してみた、次第です……。