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異世界造形師  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
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二羽の鳥 製作一日目

自分の場合、基本的に依頼を受けたその夜から作業は始める。

大体3~4日かかる作業でもその倍近い近い時間を予定としているのは、何かトラブルにあったときの為といくつもの注文が入ったときの為だ。

人は常に100%で走り続ける事は出来ない。

それは機械もそうだろう。

常にマックスの状況は、摩耗や熱、色んな状況によって悪化していき、効率を落としていく。つまり、機械でさえも無理なのだ。

なのに人でそれが出来るはずもないし、何かあった時に対応できるはずもない。

確かに火事場の馬鹿力で何とかしたという話はよく聞くし、一時的に100%を超える力が出せるとかいう馬鹿な考えをする者もいるが、出せるか出せないかもしれない100%以上の力なんてのは期待してはいけないし、出せると思わない方がいい。

常に余裕がある状況があってこそ、何かトラブルがあった時に対処できると思っているからだ。

おっと、思考が反れたな。

作業に集中しないと……。

まずはガレージキットを洗うところから始める。

中性洗剤を薄めたぬるま湯に、ガレージキットを沈めて優しく洗っていく。

隙間なんかは、使わなくなった歯ブラシとかでこするし、細かい所は無くさないようにザルに入れて洗う。

なぜこんなことをするのか。

ガレージキットや外国のプラモデルには、剥離剤が残っていることが多い為だ。

偶に日本の国内プラモデルメーカーの物も残っていたりするが、大手は大体問題ない。

しかし、念のために洗う人は一定数いる。

なぜ、そんな事をするのか。

金型や型から外す際により外れやすくするため、金型や型に剥離剤を塗る場合が多いのである。

そして、金型や型から外れやすくするという事は、ものを弾く或いはくっつかないような力があることを示す。

つまり、接着や塗装の際に弾いてうまくできないのである。

勿論、それを無視して何度もやればできるかもしれないが、出来は悪くなるし、余計な労力にしかならない。

そんな無駄なことをするくらいなら、ちゃちゃっと洗って乾かした方が手間も時間も短縮できる。

それが終わると、軽くふいて乾燥させる。

まぁ、今日は後は作業に使う物を用意しておくまでにしておく。

ドライヤーで一気に乾かしてもいいけど、時間に追われているわけではないし、慌てて作業を初めてドタバタして途中で中途半端に終わるより明日からの作業の準備をしておいた方がいいからだ。

だから、使う塗料と機材。これらを一羽分ずつ箱に入れておく。

勿論、間違えないように完成予想図も作って入れておく。

完成予想図。

まぁ、プラモデルに入っている塗装見本表みたいなものだ。

展示してある見本の型の簡単な図を事前にPCに入れており、それをプリントアウトして、ざっと色鉛筆で彩色。そして間違いないように色の番号を指定のおく。

便利になったなぁと思うよ。

で、それらを見つつ、魔晶石を用意する。

勿論、こっちの世界にそんなものはないから、パトロンが用意したものだ。

パチンコ玉より小さい艶のある黒っぽい球体で、明日からにはなるがドリルで穴をあけてキットに埋め込む。

以前の石像や木で媒体が作られていた頃は、目の部分に埋められることが多かったらしいが、僕はなるべく体の中心部に埋め込むようにしている。

それは、石や木ではそこまで埋め込むのが難しいのと、自分の拘りがある為である。

だってさ、魔晶石っていうのは、その使い魔の心臓となるべきものである。

ならばなるべく体の中心部に埋め込むべきじゃないかと思ってしまうのだ。

それと、レジンの魔力伝導率が高いのとどうやら身体の中心部に埋め込むことで魔力の媒体全体の伝達がよりうまくいくらしい。

まぁ、その辺は、魔法なんて力を持っていない自分にはわからないので何とも言えないが……。

ともかく、この小さな石が使い魔の力の元となる。

すごいなぁ、魔法ってさ。

そんな事を思いつつ、魔晶石を指でつまんで電灯に翳してみる。

きらきらと独特の虹のような光を発している。

こっちの世界にはない独特なもの。

そう思ったものの、パトロンの話だとこっちの世界では、ただの奇麗なガラス玉みたいな認識にしかないないらしい。

ふむ。

不思議だな……。

だが、魔法を実際に見て感じたことのある自分としては、それはそれでいいんじゃないかと思う。

だって、それは向こう側も同じだ。

なんせ、使い魔の媒体となるガレージキットのレジンとか向こうの世界にあるはずもない物質だからだ。

だから、向こうでは、石の一種と思われているらしい。

まぁ、カチンコチンになればそう思えなくはないんだけどさ。

ともかく、そんな感じで、互いの世界が、自分にない他の世界の物質の認識を捻じ曲げている。

そのおかげで、あっちの世界で造形師としてやっていける訳でありがたい事ではある。

さて、気がつくと一時近い時間だ。

さて寝るか。

明日も店を開けなきゃならん。

もっとも明後日は、定休日だから明日の夜は少しぐらい夜更かししても問題ないけどな。

そんな事を思いつつ、ついでに備蓄もチェックする。

ここは島で、簡単にコンビニとかに行ける環境ではないから、店休日に買い込みに行く事になっている。

ただ、これは天候も左右されるので、常に余裕を持っていないと駄目だ。

つまり、仕事だけでなく、ここでは生活も余裕をもって行かないと駄目という事でもある。

それを不便と思ったことはない。

だって、それが今の自分には当たり前なのだから。


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