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異世界造形師  作者: アシッド・レイン(酸性雨)


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アマリリスの妹  その4

アントルメ伯爵夫人とアリサちゃんが帰った後、店をサティに任せて倉庫の方に行く。

倉庫と言っても、店舗にしている部屋の隣の部屋である。

そこにはいくつもの棚が並び、棚はいくつにも細かく分類されていて、箱が置いてある。

箱には番号が振ってあり、僕はそのうちの一つの箱を部屋の中央にあるテーブルに出した。

そして、箱の中から袋を取り出す。

事前に型抜きしていた商品である。

隣ではナディが興味津々で見ていて、そして箱の中に商品が入っているとわかると棚をぐるりと見渡した。

「これ、全部、商品……」

「ああ。もちろん、全部たくさん入っているわけじゃないよ。商品によって在庫はマチマチだな。あれとか、あれとかは定番商品でよく動くから在庫多めに作っている」

棚を指さしつつそう説明する。

「定番商品?」

そう聞き返すナディに、僕は笑って言う。

「やっぱり、好みとかもあるけど予算的なものが大きいねぇ……」

苦笑してそう言うとナディも苦笑していた。

世の中、銭がなければ思う通りにならないことも多いし、妥協も必要となるのである。

その言葉を聞き、苦笑する当たり、どうやらナディもそういう経験があるらしい。

なお、僕はというと、こっちに来てからはお陰様でそういうこともあまりないが、以前、売れない造形師の時は、思う通りにならないことや妥協はいつものことだった。

ふー。

息が漏れる。

あの頃の苦労を思い出し、今の自分がどれだけ恵まれているのかを実感してしまう。

本当にありがたいし、今が夢のように幸せだ。

と、そんなことを思っていたら、じーっとこっちを見ているナディの視線に気づいた。

「え、えっと、何?」

そんな言葉を返す僕に、ナディは何か言いかけたけど、すぐに口を閉じた。

そして、再び口を開く。

「いいえ。何でもないわ。ただ……」

そこまで言って黙り込む。

その口調は、少しぶっきらぼうだったが、なんか優しさがあった。

まぁ、いいか。

袋を取り出した後、箱を棚に戻してテーブルのスタンドのスイッチを入れる。

そして袋からパーツを取り出し、光に透かしつつ確認していく。

もちろん、型取りした後、ワンセットごとに袋に入れる際に検品はしている。

でも、それでも見落とす可能性は全くないわけではないし、製作途中で気づくと修正が難しい場合もある。

だから、製作前の検品は重要である。

一通り検品した後、軽く仮合わせして合わせ目を確認する。

そして、ちょっと横の、縁が高めの四角い金属トレイにパーツを入れていく。

「問題ないみたいだね」

そう言うとスタンドの電気を消して店舗の作業室に向かう。

「次は何をするんですか?」

そんなナディの問いに、僕は答える。

「パーツの洗浄だね。パーツには剥離剤が残っていることもあるからね。塗装なんかを弾くから製作前にしっかり洗っておかないと」

そう説明しつつ、作業室の中にある流し台に行く。

もちろん、料理はしない。

パーツの洗浄や、機材の洗浄に使う専用の流し台だ。

まずは中性洗剤を入れた水につけておく。

で、しばらくつけた後は、歯ブラシで丁寧に洗って水洗いして洗剤を流す。

そして、水気を切って軽く拭いて作業用のタオルの上に置いて乾燥を待つ。

「一応、こっちはここまでだね。で……」

そう言って、作業台の方に視線を向ける。

製作中の新作がある。

「こっちは、大まかな部分は完成しているから、邪魔にならないところに置いておこうかな」

部品を集めて、仮組で作業室の棚の一つに入れた。

「同時にするんですか?」

ナディが聞いてくる。

「まぁ、時間が無かったり、二つ同時に注文を受けたりした場合はね。でもこっちの新作は急ぐ必要はないし、注文の方を優先しようと思ってる。どちらかっていうと、いくつかのことを同時に出来るほど器用じゃないし、それにやっぱり一つのことに集中したいからね」

その僕の言葉に、ナディは納得したように頷いている。

「その通りですよね。私も器用じゃないのでよくわかります」

なんか、そう言われると親近感が沸くなぁ。

そんな感じで準備をしていると、お店の方にはいつもの常連のおじさんが来ていて、いつもの通り、いつもの展示部をしばらく見て帰っていった。

うん。実に微笑ましい。

なんか、ほっとしてしまう。

そして、常連のおじさんが来たということは、そろそろ閉店の時間でもあるということだ。

続けて作業室の片づけと掃除を始めていく。

ナディも手伝ってくる。

「ありがとう。助かるよ」

僕がそう言うと、ナディは笑って言い返す。

「ふふふっ。私は貴方の弟子ですからね」

実に楽しそうだ。

うんうん。何事も楽しくやるのが一番だからね。

そして、作業室の方が終わる頃に、サティがやってきた。

「お店の方、終わりました」

「ああ、ありがとう。こっちの方も終わったし、戸締まりして、終わろうか」

戸締まりをして、店舗の鍵を閉めた後、ドアにかかっている鈴を外す。

ドアの小さな窓から見えていた風景がすーっと変わった。

相変わらず不思議だなと思う。

まぁ、魔法だからと言われてしまえば、それまで何だけどね。

魔法使いでもないし……。

店舗の方を軽く掃除して本日の営業は終了だ。

「じゃあ、夕ご飯の準備に入るから、それまでは自由時間でいいよ」

その言葉を待っていたのだろう。

サティの目がキラキラ輝いていた。

その顔に浮かぶのは満面の笑み。

「うふふふふっ」

微笑みつつ、なんかスキップしそうな足取りで下に下りていく。

恐らく一階に行くのだろう。

目標は、ワンコ。

それもモフモフ具合が高いクウだな。

うん。

そんなサティの様子を苦笑しつつナディは見ていたが、「では私も……」と言いつつそそくさと一階に下りていく。

うちのワンコは人気者だなぁ。

いや、拗ねてないよ。

うん。本当に拗ねてない。

拗ねてないんだからな。

そう自分に言い聞かせて、台所に向かう。

まずは手をしっかり洗った後、冷蔵庫から材料を取り出す。

そして、夕食の準備を始める。

本日の夕食は、ジャンボオムライスとオニオンスープ。それにサラダである。

まずはオムライスのソースを作っていく。

何種類かのきのこを小さく切ってバターを入れて炒め、デミグラスソースを投入して少し煮込んで完成。

実にいい香りだ。

デミグラスソースの香りがたまらん。

お腹減ってきた。

さっさと先に進めよう。

次は中身を作っていく。

バターを入れて玉ねぎの刻んだものとひき肉を炒め、コンソメの元を少し入れた後にご飯を入れて少しかき混ぜてケチャップを投入してケチャップライスを作る。

ジュージューという音をたてて、いい感じで出来上がっていく。

うんうん。いいぞいいぞ。

それと同時に、別鍋で、スープ用に一緒に切っておいた玉ねぎを入れて少し茹でて、コンソメを少し入れて、市販のオニオンスープの粉状のやつを投入。

胡椒や塩で味を整えてオニオンスープが完成して保温へ。

次は、溶き卵をフライパンに広げて、ケチャップライスの上にのせるドレスの部分を作る。

これももちろん、バターを投入してひっくり返して両面を軽く焼く。

そして最後は、お皿にケチャップライスを半円状に盛って、その上に卵のドレスを乗せてたっぷりのきのこのデミグラスソースをかけて完成だ。

挿絵(By みてみん)

それを見て思わず無意識のうちに頷く。

「うんうん。いい出来だ」

思わずそんな言葉が漏れた。

やはり一人だと見栄えとかあまりに気にしないで美味しく食べれたらいいという感じだけど、別に食べる人がいるっていう場合は、見栄えも気にするよなぁ。

そんなことを思いつつ、次々と卵のドレスを焼き、三人分のオムライスを準備する。

なお、うちは、卵のドレスは上からのせるだけであり、テレビとか有名店みたいに、真ん中を切り開いたりはしない。

だからこれで完成なのである。

「二人とも、ご飯だよ~っ」

窓から外に向かってそう声をかける。

「はーいっ」

「わかりましたっ」

元気な声が返ってくる。

それが実にうれしい。

一人ではないと実感してしまう。

そして、数分もしないうちに三人で夕食を食べるのであった。

なお、オムライスはとんでもなく好評だったが、二人には少し足らなかったようで、少し残っていたケチャップライスもきれいに二人のお腹の中に納まりましたとさ。

やっぱり、気持ちよく食べてくれると、作った方として嬉しいなぁ。

いつも読んでいただいてありがとうございます。

今回の話はどうだったでしょうか?

よければ、感想やリアクションいただけるとありがたいです。

また、もしブックマークとか評価がまだな方は、そちらもよろしくお願いいたします。


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