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異世界造形師  作者: アシッド・レイン(酸性雨)


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新作作製  その3

新作作製二日目に入る。

いつものごとく朝ご飯を三人で食べ、お店を開店する。

店番はサティにお任せして、ナディと二人で作業室に入る。

そして、昨日加工した部分を確認だ。

よしよし。きちんと固まっている。

そして、嵌め合わせてみる。

いい感じだ。

これなら問題なく進められそうだ。

ナディも昨日バラバラになっていたものがきちんと元の形に戻ることを知ってか、少し安心した表情だ。

で、次は各パーツを繋げたまま細かい所を肉付けしていく。

バランスを見る為、まずは中央部分の頭からである。

スカルピーをつけては、何種類もあるヘラを使い分けて形状を作っていく。

もちろん一気にではなく少しずつ、少しずつだ。

実に地道だが、まだ焼いて固める前だから、ある程度修正はできる。

また、より鳥らしく形を成していく様子にナディは実に楽しそうだ。

くちばしと目を形成し、頭部の形をきちんと整えていく。

そして、レジンで焼く頃にはお昼になっていた。

「そろそろお昼休みです」

そう言ってサティが作業室に顔を出す。「ああ、ありがとう。こっちもちょうどいい塩梅だ。お昼休みの終わる頃には、すっかり冷えているだろうし」

「それで、今日のお昼は何を?」

興味津々といった感じでサティが聞いてくる。

「そうだな。シンプルに親子丼でも用意しようかと思っている」

「親子丼……ですか?」

「親子丼?」

不思議そうな顔をした二人がそれぞれそう言う。

そんな様子に笑って答える。

「卵と鶏肉を具にして、ご飯の上にのせて食べる料理だよ。なお、ご飯の上にのせて食べる料理をどんぶりと言ってね、のせる具によっていろいろ名称が違ってくるんだ」

そう言った後、説明を続ける。

「とんかつをのせたのはカツ丼、天ぷらをのせたのは天丼って感じかな」

二人はふむふむと頷いていたが、ナディが気になったのか口を開く。

「トンカツをのせているどんぶりだから、カツ丼というのはわかります。でも親子丼って何なんです?」

「ほら、親子丼の場合は、鶏の肉と鶏の卵を使うからさ。ほら、親子だろう?」

そう言われてナディはクスクス笑った。

「ああ、そういう事ですか」

「そうそう」

「でもそうしたら、鶏肉と卵の組み合わせでなかったら、何丼になるんでしょう? 例えば、鶏肉代わりに牛肉を使ったら……」

サティがそう聞いてくる。

うんうん。わかるよ、その疑問。

「そういう場合は、他人丼って言うんだよ」

きょとんとした二人の顔。

そしてすぐに笑い出した。

「あー、なるほど」

「そうくるんですか」

実に楽しそうだ。

そんな二人を見て僕も楽しくなる。

「おっと、このままだとお昼時間が無くなっちゃうな。さぁ、さっさとお店を一旦閉めてお昼にしようか」

「はい」

「ええ」

こうして、親子丼とわかめと厚揚げの味噌汁、それに漬物という献立でお昼を準備したのであった。

なお親子丼は、半熟のトロトロで仕上げるのがうちの流儀で、どうやら二人ともとても気に入ったようであった。

ちなみに、僕のどんぶりより二人のどんぶりの方が大きいのは秘密である。

こうしてお昼ご飯を終え、13時過ぎに再びお店を開ける。

相変わらずお客は来ない。

まぁ、いつものことだし気にしない。

なお、「常連さんは昨日と同じ通りにね」とサティに伝えておく。

「はい。わかりました」

そう言うと、カウンターに用意している椅子に座って本を読みだした。

なお、何の本かというと、写真がたくさん載っている日本各地を簡単に紹介した郷土本だ。

ほら、あるじゃないか。

ここの土地はこんな環境で、こういう文化があり、どんな料理や特産品があるかという紹介をしているやつである。

もちろん、まだ日本語を完全に覚えておらず(話すことは可能だが読めない)、翻訳機能のある魔法の道具を使っての読書となる。

もっとも、翻訳の魔法の道具は最低限だけしか使っていないらしい。

彼女としては、将来的にはそういうの無しで日本語を読める様になりたいらしい。

だから、「頑張ってるね」と声をかけるとサティは笑った。

「だって、そうしないと料理の本、きちんとわからないですから」と応える。

どうやら、最初の歓迎会での料理に衝撃を受けたようだ。

そして、少しでも自分で作れるようになりたいと思ったらしい。

本当に向上心のあるメイドさんだ。

そんな事を思いつつ、冷えた頭部を確認する。

そして次は胴体、翼へと作業は進めていく。

一部分が出来る度にレンジで焼き、冷えるまでの間、次の部位の製作をしていく。

そのスピードにナディは驚いている。

まぁ、こちとらチョコエッグに出会って以来、ずーっと動物のフィギュアの造形師になりたくてやってきたからね。

年季が違うのよ、年季が。

なーんてね。

まぁ、要は努力の結果という事だ。

祖父譲りのこういうものを作ったりする才能があったというのも大きいけどね。

そんな事を思いつつどんどん進めていく。

そして夕方になる頃には、頭部と胴体、そして右の翼をおおざっぱながら焼き上げるところまで出来たのであった。

よし。明日はもう片方の翼と足を完成させて、仕上げにかかるかな。

そんな事を思いつつ、その日の作業を終え、閉店したのであった。

なお、その日の夕方は、前日じゃんけんに負けたナディのリクエストである肉を使った料理ということで生姜焼きをチョイス。

ナディはとても喜び、サティもすっかり気に入った様子であった。

なお、ご飯が余るかなと思っていたが、きれいになくなりましたとさ。

まぁ、確かに生姜焼き、ご飯すすむけどね。

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