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異世界造形師  作者: アシッド・レイン(酸性雨)


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19/25

新作作製  その1

朝食の後、食器を洗ってお昼のご飯のためにお米を洗った。

今までは朝に炊いておけば一日分持ったが、一気に食べる人間が三人+αになったため、毎回炊くことにしたのだ。

なお、なぜ+αかというと、大きな声では言えないが、二人ともよくご飯を食べるのである。

まあ、「美味しい、美味しい」と言って食べてくれるのだから、作った側としてはとてもうれしい。

だが、あとで苦労しないだろうかと考えてしまう。

まあ、女性の方はいろいろあるからなぁ。でも、健康的でいいかなと思う。

ともかく、朝に炊いていた時よりも一合多く炊く準備をした。

おかずは昨日の夕食の残りを使うし、汁物は粉末のビーフコンソメに玉ねぎを入れたお手軽スープにするので問題ない。

準備が終わると、開店の準備だ。

結構時間が押している。

さっさと店内の掃除をしなきゃと思って3階の店舗の方に行くと、二人が掃除を済ませておいてくれていた。

どうやら昼食の準備をしている間にやっておいてくれたらしい。

「ありがとう。掃除を済ませておいてくれて助かったよ」

そう言うと、サティは当たり前のことをしたまでだ、といった感じで言った。

「いえ、これくらいは私にもできますので」

「いや、助かったよ」

そう言って頭を下げると、横にいたナディが少しふくれっ面で言った。

「私も手伝ったんだけど」

「本当にありがとう」

ナディにもそう言って頭を下げると、なんだか嬉しそうな顔でにこにこしていた。

うん、なんだか、最初の凛々しいイメージがだんだん違うイメージに変わってきそうだ。

まあ、それはそれでいいんだけど。

余裕ができたので、店内の事や店の事、営業の事を説明した。

基本的にお客さんは少ないので、お客さんがいない時は店内でのんびりしていてもいい。

実際、僕も作業をしたり、依頼された商品を作ったりしているからね。

「本を読んだりしていてもいいよ」と言うと、サティは少し嬉しそうだった。

あと、僕が店番をする時は、居住区の掃除をしましょうかと提案してくれた。

実にありがたい申し出だ。

一人では週に一回が限界で、どうしても手抜きになってしまうからなぁ。

また、各自に週二日の休みも設けておくことにした。

一日は三人共通の休みで、お店が定休日の時だ。

そして、もう一日は、一人ずつ休みを取る形にした。

もっとも、島からは出られないので、店頭で仕事をしないだけではあるが。

そんな感じで仕事のことで色々と取り決めをしていった。

なぜ、そんな感じにしたのか。

それは、ナディは弟子、サティはナディの付き添いという形にはなるが、二人とも店員として雇ってほしいという要望もあったので、そのような形にしたのである。

そうこうしているうちに、開店するのにちょうどいい時間になった。

いつものように、ドアに鈴をかけて開店する。

もっとも、すぐにはお客は来ない。

それどころか、いつもの午後から来てじっと商品を見る常連さん以外は来ないことも多い。

まあ、単価が高いし、お客を選ぶ店だからね。

だから仕方ない。

まあ、それはそれでこっちとしては色々使える時間があって助かっているんだけどね。

で、今日もそんな日になりそうだったので、さっそくサティに店番を頼んだ。

「こっちから色々言わなくていい。ただ、お客様が何か聞いてきたら、作業室にいるから声をかけて」

「わかりました」

サティが頷く。

どうやら任せてもよさそうだ。

そう感じて、次はナディの方を見た。

「じゃあ、早速修行に入ろうか」

そう言うと、ナディが少し緊張した顔つきになった。

「えっと……何をするんですか?」

「そうだね。まずは、ガレキを作る流れを知っておいてもらおうと思うんだ」

そう言って、一枚の紙を見せた。そこには、鳥の羽ばたく感じのイラストが何パターンか描かれている。

「新作をそろそろ作ろうと思っていたからね。今回はこれを作っていく」

ナディはわくわくした顔でイラストを見ていた。

「はい。お願いします」

「では、作業室に行こうか」

二人で作業室に入ると、中央のテーブルの上に材料が並んでいた。

「えっと……これで作るんですか?」

テーブルに置いてあるのは、台座となる木片と針金だ。

「ああ、まずは原型を作らないといけないんだが、今日は原型の骨格を作っていく」

そう言って、木片に穴をあけて針金を刺し、作業を始めた。

まずは大ざっぱに骨格を針金で作った後、イラストを見ながら何度も骨格の針金に新しい針金を曲げて巻き付けていく。

ナディが真剣な表情で見ている中、それは少しずつ形を成していった。

「よし。こんなものかな」

目の前には、針金で飛び立つ鳥の骨格が出来ていた。

時計を見るともうお昼に近い。

「じゃあ、そろそろ昼食にしようか」

「はい」

そう返事をしたものの、さっきからナディは黙ってじっと針金の骨格を見ている。

その表情はかなり真剣なものだった。

だから、思わず聞いてみる。

「どう?」

そう聞くとナディは答えた。

「すごいです。ただの針金があんなになるなんて。ただの針金の塊のはずなのに、完成した姿が頭に浮かびました」

その言葉に、僕は感心した。

確かにイメージイラストを見ているとはいえ、完成を想像できるなんて。

これは予想以上に才能があるのかもしれない。

それにその言葉と態度から、どれだけ彼女が真剣なのかもわかる。

多分、心のどこかでは、作れないかもしれないなと思っていたんだろう。

お嬢様の好奇心での遊び程度じゃないのかなと。

だが、それを思いっきり否定された感覚だ。

しかし、それは残念な事ではない。

いや、反対にうれしい事だ。

そして、実感する。

彼女は本当に自分で自分の使い魔となるガレキを作れるようになるだろうと。

だからこそ、手を抜くつもりはないけれど、より真剣に教えないと駄目だなとも。

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