第034話 伊賀中忍 北条さくら(2/2)
「はじめまして。雫石 颯です」
声で分かります。好青年ですね。
性格が良いのは配信でも見ています。
配信より現実の方が可愛い顔してる気がします。
世界中から注目されていて、しかも服部様から免許皆伝の書を受け取るような実力者。そんな彼と付き合えることになった東雲 玲奈さんが羨ましくなります。
まぁ彼女も日本四大財閥の御令嬢ですから、お似合いなのかもしれません。
「今から皆さんにハヤテ式四刀流を修得していただきます」
そういえば失敗が許されない任務でした。集中して話しを聞きましょう。
「ダンジョンで獲得できる武器を装備する前提なので、普段の得物は使いません。ダンジョンに持ち込んでもモンスター相手に効果は無いです。ちなみにマニピュレータの力でやってるって思わせるためにコツがあるんですけど、その感覚を口で伝えるのはかなり困難なので皆さんの身体を俺が操作させてもらいますね」
身体を操作?
それってもしかして、傀儡の術?
えっ、その若さで使えるんですか!?
「傀儡の術は定期的に印を見せてかけ直さなきゃいけないので、俺の手から意図的に目を逸らさないでください。まぁ、逸らそうとしても見ちゃうように誘導します」
そう言いながら颯様は右手を上げました。
気づけば私は、彼の動きを真似ていました。しかも私だけでなく、その場にいた中忍全員が同じ動きをしていたのです。
い、一体いつの間に印を!?
私たちはいつ術をかけられたんでしょうか?
これが特別上忍……。
やはり格が違いますね。
「それからここにいる皆さんだけじゃなくて、動画配信で全世界にいる中忍さんたちにも共有し、協力していただきます。そのためにカメラがあるんですが、こっち側には来ないでください。傀儡ってるのでたぶん無理だと思いますが一応注意です」
そう言って、颯様の四刀流講座が始まりました。
最初の動きは下忍どころか運動神経の良い一般人でも出来るような簡単なもの。
しかし動きと動きの合間に、颯様は高速で印を結んでいました。印を結ぶと思って注視していないと気づけないような速度です。
配信開始前になぜ視聴する機器のフレームレートが144fps以上必要だと言ったのか、ようやく理解することができました。
彼の印を結ぶ時間が1/100秒以下なのです。
私たちのような訓練された忍者でなければ視認できません。そして画面をスロー再生したとしても、その印は効力を発揮しません。
フレームレートの説明は、他国で彼の講義を受けている中忍たちに印を見せて傀儡の術を継続させるためのモノだったようです。
あ、あの……。
本当に人間ですか?
上忍には空を歩いたり、無制限に水中で活動できる方がいらっしゃいます。中忍に求められる基本スペックに加え、そうした特殊技術がなければ上忍になれません。
颯様の場合は超高速で印を結べることが、それに該当するのでは無いでしょうか。
──***──
ち、違いました……。
颯様ができるのは、超高速で印を結べることだけではありませんでした。
そもそも彼は傀儡の術を使っていました。この術が使えるというだけで上忍になれるほど修得難度が高い術なのです。
さらに彼は、傀儡の術で操っている対象の身体能力を強制的に向上させることもやってのけました。正確には脳の使用率を無理やり引き上げていました。
一般人が10%程度しか脳を使えていないところ、伊賀の下忍は20%くらいまで使えます。脳の使用率が増えれば、それに伴って筋肉の使用率も伸びます。反射速度が格段に向上します。だから常人には不可能な速度で走れたり、銃弾を弾くことが出来るんです。
中忍である私は30%程度まで脳を活性化できています。とても疲れるので、常にやっている訳ではありませんが。
ちなみに脳を30%も使えればパソコンは不要になります。近くにいる仲間との会話は不要になり、目を合わせただけで意思疎通が可能です。
記憶力、計算能力も爆上がりします。
物理演算が一瞬で完了するので、クナイを投擲して外すことは絶対にありません。
しかし私は、その程度が限界だったのです。
自分では十分凄いことができていると思っていました。
ところが颯様の術で強制的に脳の使用率を50%まで引き上げられたことにより、これまでの常識が全て覆されました。
全能感。
その言葉が正しいでしょう。
特に強化されたのは自分の身体の状態を正確に把握する能力。
私たちは颯様に傀儡の術で身体を動かされていますが、その動きの全てを完璧に記憶することができるようになったのです。
これは……。
傀儡の術だけではありませんね。
おそらく脳の強制覚醒に加え、感覚共有などいくつもの術を複合して私たちにかけているのでしょう。
そうでなければ、私がこんな動きをできるわけありませんから。
地面から5メートルほどの高さまで跳躍した私たち中忍30人は、颯様が泉のダンジョンでウンディーネの攻撃を回避するために津波を切り裂いた技──天翔旋空斬を完璧にトレースして放ちました。
この技、すごく気持ちいいです。
早く敵に向けて放ちたい!!
ちなみに私たちは事前にダンジョンに入って、マニピュレータを取得していました。現在はそれを装備して颯様の動きを真似していたのです。
てっきり私は上空まで飛び上がるのはマニピュレータの力だと言って、本当は颯様ご自身の身体能力でやっているモノだと思っていました。こんな重たいだけのポンコツ、私たち忍者にとっては邪魔でしかありません。
しかし颯様は、わざわざマニピュレータの力を使って全ての技を実現させていました。つまり一般人でも彼の真似が出来ちゃう可能性があるのです。
マニピュレータの力を100%を引き出すのは非常に困難です。
でも不可能ではない。
颯様は忍でありながら、ダンジョン攻略ではその力をほとんど使っていなかったようです。もし彼が本気を出せば、それこそ女神が操っていたウンディーネなど瞬殺だったはず。
彼は女神に対して『全力で行く』と言っていましたが、あれは人としての全力という意味なのでしょう。
四刀流を広めたいという颯様の強くて純粋な意志を感じました。
同時に、私たちにも大きなプレッシャーがかかります。安易に忍の術を頼るわけにはいかなくなったのです。
この任務、かつてないほど難易度が高いかもしれません。
ですが完璧にこなしてみせます。
だって私はハヤテ式四刀流、超短期修得コースを修了したのですから!!
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