第142話 〈配信コメント欄〉
「な、なななんで私のビームを斬れる剣を4本ももってんのよ!!?」
「元から1本しかないなんて言ってませんよ」
〈ですよねぇぇぇ!〉
〈うん。知ってたwww〉
〈最初に1本だけ見せたのも作戦か〉
〈普通、神剣なんて1本だけって思うもんな〉
視聴者たちは4本の天叢雲剣を装備した颯を見て、大いに盛り上がっている。
〈神剣4本もゲットしてんのヤバ〉
〈隠しダンジョンは強制配信されないんだ〉
〈どんだけ周回したんだろうな〉
〈颯は泥運良いから大丈夫〉
〈隠しダンジョンのボス武器だぞ?〉
〈いくら颯でも10回とかでは揃わんだろ〉
〈千回とかいってそう〉
〈それはもはやボスが不憫なレベルw〉
颯は4本の天叢雲剣を手に入れるまでに762回もヤマタノオロチを倒している。
ただし隠しダンジョン内が強制配信されないことを確認したハヤテは、アマテラスから貰った神気を解放した状態で戦っていたので、1回の戦闘時間はわずか3秒ほどしかかかっていない。
時間が空いた時にコツコツと。
作業の様にヤマタノオロチを屠ってきた颯。
その成果がこうして日の目をみた。
「これ揃えるためにマジで頑張ったんです。そのお披露目なんで、派手にいかせてもらいますね!!」
複数の魔法スクロールを使用して煙幕を張り、女神の視界を奪ってから急接近していく颯。その行動に女神が慌てて対応しようとする。
「タイダルウエイブ!」
どこに行ったか分からない颯を探すのを諦め、全体攻撃の大技で何とかしようとする。しかしそれは既に攻略済みであることを彼女は忘れていた。
「次は翼を2枚ほどもらいます」
颯が飛翔し、回転しながら女神の翼を切り裂いた。
〈颯ナイスぅ!!〉
〈あと4枚斬れば地に堕とせるぞ〉
〈堕女神を堕天使に降格させてやれ〉
〈でもどうやってタイダルウエイブ避けたの?〉
〈それはほら、颯の腰のとこ見てみ〉
「くっ! そ、そうか。颯君が空を飛ぶアイテムを手に入れてたの、忘れてた」
「このジェットパックって万能すぎて、ダンジョン攻略が簡単になっちゃうんですよね。だから俺は面倒な移動の時とか本気の戦闘時以外はほとんど使いません」
「……そう。ファーラムワールドってゲームをやったことない私に対して、本気で挑んできてくれてるってことだね」
〈本気じゃなきゃ即死する技構成だろ〉
〈それな〉
〈女神様ちゃんビームだけ止めて〉
〈アレはFWOと違いすぎてヤダ〉
「ずっと飛ばれているのは厄介なので、あと4枚を斬り落としていきますね」
「いいえ。さっきのが最後のチャンスよ」
女神の身体が輝き始める。
〈この光り方は……〉
〈ん? わからんな〉
〈ポーズもウリエルの技じゃなさそう〉
「これが、対颯君用に編み出した私の戦闘形態!」
光が収まると、背に4本のマニピュレータを装備した女神が地面に立っていた。
〈は?〉
〈う、ウリエルが──〉
〈多刀剣士化した?〉
颯より手数の多い6刀流剣士になったのだ。
しかしそれは視聴者たちから大いに批判される。
〈だっっっさ!!〉
〈なにあれ、虫みたい!〉
〈両手と合わせて6本はあかん〉
〈手数増やせば颯に勝てると?〉
〈お前それ制御できるんか?〉
まともに動かせるはずがない。誰もがそう思う中、四刀流をずっと使ってきた颯は対峙する女神の構えに隙が無いと気付いた。ふざけてやっているのではなく、真剣に対颯戦を考えてこのスタイルに行きついたのだと。
「すげぇ。俺の理想に近い構えだ」
「ふふん。どうやら颯君は分かってくれるようね」
〈え、なにが?〉
〈ただのキモい虫では?〉
〈対峙してる達人にしかわからんのかも〉
〈お、俺はそうだろうって思ってた〉
〈嘘乙〉
「ただ本来は遠距離メインのウリエルに剣を持たせるという選択に関して、俺は好きになれません」
〈禿同!!〉
〈それな!〉
〈ずっと遠距離で戦えよ〉
〈ウリエル戦は強力な遠距離攻撃をどう掻い潜って接近するかを思案するのが醍醐味だからな。やっぱその辺がにわかFWO運営〉
〈最悪な運営じゃねーか!〉
「本来廃止されるはずだった四刀流を、現実世界で使えるようにしてくれたことは感謝しています。でもウンディーネにはじまり人気のボスキャラを穢した貴方を許せないんです」
「むぅ。じゃあ颯君がもし私に勝てたら、そのことをちゃんと謝ってあげる。でも私が勝ったら、颯君の家に私のための神殿を作りなさい。机に乗るくらい小さいのでいいから。そこで君は私に毎日祈りをささげるの」
〈勝手に颯を改宗させんな!〉
〈颯は神道? 仏教?〉
〈日本は宗教への帰属意識薄いからなぁ〉
〈颯ならOKって言いそう〉
「その条件なら良いですよ」
「いいの?」
「女神様ちゃんだけを信仰しろってことじゃないですよね?」
「うーん。まぁ、他の神様に祈るのも許してあげる。クリスマスにケーキ食べたいもんね」
「玲奈と一緒に初詣にも行きたいです」
「そっか。じゃあそれも許してあげよう」
〈この神ゆるいなww〉
〈ちょっと親近感沸いたかも〉
〈よく見ると美女だし、推せるかも〉
〈はいはいはい! 入信します!!〉
〈思いがけず信者獲得しとるw〉
〈ウンディーネの件を謝ったら俺も女神様ちゃん教に入信する〉
〈そのためには颯に勝ってもらわないと〉




