第136話 〈配信コメント欄〉
第8等級、金のダンジョンを颯が疾走していく。
「金のダンジョンは鉱石系のモンスターが出てきます。防御が硬く、魔法が効きにくい個体が多いです。特に剣士には辛いですね。鈍器系の武器に持ち替えて戦うことをおすすめします」
〈とか言いつつ君が持ってるの剣じゃね?〉
〈水属性の双剣×2だな〉
〈鈍器系の武器もゲットしてるでしょ〉
〈おすすめするならそれ使いなさいよ〉
「ちなみにここのモンスターは動きが遅めなので、的確に弱点を狙っていけば武器の耐久値を減らさずに攻撃できます。てことで俺は、こいつらに特攻のつく水属性の双剣2セットでゴリ押しします!」
両手に持った双剣、そしてマニピュレータに装備した双剣の計4本で、ゴツゴツした見た目の四足歩行モンスターに回転しながら連撃を入れていく。
その連撃はモンスターの堅固な甲殻を避け、的確にモンスターの弱点部位を破壊していった。
「はい。こんな感じですね」
〈いやいやいや〉
〈こんな感じ──じゃねーよ!〉
〈相変わらず意味わかんねー動きしてんな〉
〈なんで甲殻を避けて攻撃できるん?〉
〈しかも回転してんだよなぁ〉
〈それマニピュレータどう制御してんの〉
「あっ。回転してるのは、その方が攻撃力に補正が付くからです。ちょっと制御が難しいかもしれませんが、慣れれば大丈夫です」
〈うん。それは知ってる〉
〈でも真似るのは無理だよ〉
〈だってこれ現実だもん〉
〈まぁ俺は出来るけどな。ゲーム内なら〉
〈FWOだったら俺もやってたわ!〉
〈リアルであの動きは無理www〉
「リアルで回転しながらの攻撃するのは無理って書き込みが多そうですね。でも安心してください。皆さんに朗報です。闘気解放が実装されたので、人間離れした動きが結構簡単に出来るようになるんです」
〈あれ? もしかして自覚ある?〉
〈自分が人間離れしてるって〉
〈ハヤテは闘気解放の実装前からその動きしてたけどね〉
多くのツッコミが入るが、それはダンジョン内にいる颯には見えない。だから彼はモンスターを蹂躙しつつ、説明を続ける。
「まず安全なチュートリアルエリアで闘気解放して、アクロバットな動きに慣れましょう。俺が以前、四刀流の普及活動としてやった配信動画を真似してくれればOKです。まずは簡単なジャンプや回転からはじめて、最終的には武器を持ったまま回転攻撃ができるようになってください。そうすれば皆さんも、ハヤテ式四刀流の使い手です!!」
高く飛び上がった颯が回転しながら落下し、フロアボスに強力な一撃を叩き込む。
トラックほどの体躯がある大きなボスモンスターが倒れると、颯は視聴者たちに笑顔をみせた。
「ダンジョンで待ってます──と言いたいところですが、俺は止まりません。誰にも負けたくないので。でも四刀流を使う人は増えてほしいです。だから頑張って俺を追いかけて来てください」
〈言ってること無茶苦茶だな〉
〈ハヤテらしいけどwww〉
〈でも実際ダンジョン攻略は儲かるぞ〉
〈追いかけたいんだけどなぁ…〉
〈四刀流は流石に厳しそう〉
〈マニピュレータが動かんのよ〉
〈俺は闘気解放は使いたい〉
〈チュートリアルエリアなら安全に試せるんだ〉
闘気解放の実装により、ダンジョンに挑戦する人は増えている。そしてわずかではあるが、多刀剣士の四刀流スタイルを選択する人も増えてきていた。