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第133話

「知ってる？　攻撃は最大の防御なんだよ！！」

　弱点(コア)が露出した状態のフローラが複数の魔法を展開して攻勢に出た。

　コアを守るためのボディ再構築には時間が必要で、颯たちを相手に後手に回るのは悪手だと女神は判断したからだ。

「直人、防御よろしく」

「りょーかい！」

　闘気解放状態の防御型大剣使いの直人がスキルを発動させ、フローラの攻撃魔法を全て受けきった。

「……は？　う、嘘でしょ!?　なんでアレで全くダメージ受けないのよ！！」

　少なくとも三人程度は行動不能にできるだろうと見積もっていた女神は、無傷の颯たちを見て驚きを隠せない。

「ナイス直人！」

「流石です」

「マジか、ひとりで耐えちゃった」

「で、でも俺、もう無理かも」

　闘気解放はまだ解除されていないが、直人も自身にかけられるバフスキルを使い切っていた。涼香に体力を回復してもらいながら、地面に膝をついていた。

「あとは休んでていいよ」

「これがラストチャンスだね」

「いくぞハヤテ」

「あぁ、龍之介はまた右側を頼む」

　颯と龍之介が飛び出し、女神が彼らを近づけさせまいと展開した魔法を撃ち落としていく。

「コアはさっき露出させたから、これでおーわりっ！！」

　葉月の拳がフローラのコアに──

「ありゃ？」

　透明のシールドに阻まれ、彼女の攻撃は届かなかった。

「あっぶないなぁ、もう！」

　フローラが使えない防御技だが、女神は関係なく使用して身を守る。しかし女神が対応してくることも颯たちは予測していた。

「安心するのはまだ早いよ。ウチら最強の攻撃が来るからね」

「えっ──」

　ヒビの入ったシールドを蹴って離脱していく葉月。彼女の動きを目で追っていたフローラの視界には、極限までオーラを高めた玲奈と、頭上に巨大な炎の槍を出現させている芽依の姿があった。

「あ、いや、それは……。ちょっとヤバいかも」

　両腕を破壊され、大技もクールタイムで使用不可。最終防御のコアシールドにも大きくヒビが入っている。絶対絶命のピンチ。

　ここで女神は最期の悪あがきを思いつく。

「もう終わりだなんて思わないでよね！　これが、私の第二形態よ！！」

「だ、第二形態！？」

「フローラにそんな仕様ないだろ！」

「みんな一旦退いて！！」

　ゲームには無い仕様。しかし女神は平気でそれを破ってくる。そのため颯たちは警戒して攻撃を中断した。体力を回復させてもらった直人が再び前衛に立ち、大剣を防御のために構える。

　しかし、なにもおこらなかった。

「……あ、あれ？　定春？　さだはるさーん？」

【フローラに第二形態は実装されていません】

　無常に響くアナウンス。

「そ、そんなぁぁぁ」

「ねぇ颯、これ撃っちゃっていいかな？」

「いいと思う」

「私も撃つね」

「うん、やっちゃえ」

　玲奈が矢を、続けて芽依が魔法を放つ。

　矢がシールドを破壊し、炎の矢がフローラのコアを砕いた。

　颯たちの勝利だ。

「ま、まぁやるじゃない。今回は私の負けってことにしといてあげる。でも、まだ私はぜんぜん本気なんかじゃないんだからね！　次は第９等級ダンジョンで、もっと同期率を高めて相手をしてあげる。次は絶対に負けない！　負けないから！！」

　そんな捨て台詞を吐きながら、フローラは消えていった。