表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

誠二郎と言う男の死

前世で大してモテなかった男が可愛い美少年になってウハウハハーレムするってだけの話です。

ファンタジー中世の世界観を踏襲していますが、本筋はエセ中世の世界事情を描写する事じゃないので割と適当に行きます。


()()()()()()()





眉目秀麗、好男子、イケメン、ハンサム、端正な顔立ち。

読者諸賢も一度は聴いたことがあるであろう、男性の美貌を絶賛する幾千の言葉達。皆さんはそれらの言葉を異性から贈られた経験はあるか?

女子の後輩に「先輩!」と笑いかけられた事、幼馴染に「学校一緒に行こ!」と誘われた事、先輩に「バカだなあ」と言われながら手を差し伸べられた事。

星の数ほど存在する『学生の時に起こっておいて欲しいイベント』たち。皆さまには果たして、どれほどに縁のある物だったのだろう。



自己紹介も兼ねて結論を先に言わせて頂く。

わたし、西宮誠二郎(にしみやせいじろう)はこの生涯において、一度たりとも、異性から、容姿を褒められた事が無い!

目を輝かせながら部活のマネージャーに「かっこいいね!」なんて言われた経験も、体育祭で活躍したあと冷えたドリンクを当てられて「お疲れさま」と言われた経験も、隣の席の女の子に「良かったらさ、LINE交換しない?」と言われた経験も!


無いッ!一度だってそんな体験をした事はッ、無いッ!!


部活のマネージャーからは「あ、いたんだ」と言われ、そもそも同級生以外の女性関係は0!自分に対してお疲れと溢しながらジュースを買うのが通例だったし、体育祭で死に体だった私の隣に立っていたのは同じ非モテの佐藤くんただ一人だけである。

覚えている好感度プラス以上で起こったイベントと言えば「西宮くんって名前だけはカッコいいよね」だけ、それもよく聞けば『()()()()()』!!



知見に富む読者諸賢に於いては既にご理解の事だと思うが、あえてハッキリ言おう。

私、西宮誠二郎は非モテ男子である。


現在26歳人生これからロードを突っ走りながら、後悔に塗れた学生生活の足跡を振り返って見て、嘆く日々を送っていた……フリーターである。



()()()()()()()



あぁ皆さまよ!そんな目を向けないで欲しい。26は男子というには無理があるとか、そういうのもやめて欲しい。

美貌には維持義務があり、ハンサムメン達はそれらを常に意識しながら遂行し続けているのだ、努力者達なのだなどと、そんな事は百も千も承知なのだ。

だがその維持すべき美貌さえ無い我々にとって、そんな維持が必要だのと言うのは金持ちがお金無いと嘆いてるのと同じ様にしか見えない。


この世界には無意識的なルッキズムが浸透し、空気を形成している。美しきは良いものであり、醜いものは悪しものだ、と。

故に我々ノットイケメン達はうっすらとした差別の中で、こうして水面下で脈々と心の化物を生育し、あまつさえ存在しない理想に追い縋る、現実逃避ヒューマンと相成ってしまったわけである。



あぁ、世界の不条理の何たる事か。美醜の価値ピラミッドの下層に生まれ落ちたばかりに、こんな情けない人間になってしまった!世が世なら私は武器を取って復讐に駆けていただろう。

心の中で刺股を抱えながら、私はこのルッキズムに対して、強い復讐を誓った。




()()()()()()()()()()()()




()()()()()()()()()()()()()()()()








…………。



……ん?




なんかさっきから文体が過去形だな、って?




よくぞお気付き頂けた。そもそもこれは今生で整形やら努力やら、そう言うので今から下剋上ライフしてやるぜ的なお話では、無い。




だって私、語ってる途中で心拍停止したもん。

普通に車に轢かれて重傷負って、ナチュラルにベットで意識困憊だったもん。




西宮誠二郎と言うルッキズム最下層を生きた弱者男性の前語りは、彼の死という形を持ってして、幕を閉じると言う訳なのだよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 地の文の語り方が好きすぎる(⸝⸝⸝ᵒ̴̶̷ - ᵒ̴̶̷⸝⸝⸝) 前世ではモテた経験が無い男性は、今世ではどうなってしまうんだろう! 今からドキドキですね(*´艸`) [一言] 素敵な…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ