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2. 転生

 ふと俺は意識を取り戻した。

 

 今回は身体がちゃんと存在しているらしい。周りにあるものも、感じ取れているようで取れていないような不思議な物質ではなく、ちゃんと? ドロドロとした液体だ。

 

 今度こそ目を開いたら明るくなるかもしれない、と思ったがまず目を開くことすらできなかった。しかも、あるにはある身体もほとんどまともに動かせない。


 俺は無事転生できたのだろうか?


 全然状況が変わらないけど、大丈夫だよね? 転生失敗とかしてないよね?


 あまりにも周囲の状況に変化が起きず、俺が不安をいだき始めていたその時。


 うわっ、眩しい!?


 目を開いていないはずなのに、何故か一筋の光の道が見えた。その道はまるでどこかに俺を導こうとしているように真っ直ぐと、ずっと向こうの方まで続いている。どうして見えているのかは分からない。一体どこに繋がっているのだろう?


 その後のことはあまり記憶にない。覚えていることといえば、その光の道の先にあるかもしれない出口から出ようと必死に前進したことぐらいだが……。


 

 次に気がついた時には俺は誰かの腕の中にいた。


 やっと周りが見えるようになったが、まだ景色が凄くぼやけている。


 ただ、俺よりも圧倒的に大きな巨人が二人こちらを覗き込んでいることはかろうじて分かった。俺を抱えているのが一人、俺を挟んで反対側にもう一人いる。


 何これ、この状況。せっかく転生したのにいきなり誰かに捕らえられてるんだけど。どうにかしないと絶対まずいよね……これ。


 俺は必死に身体を動かして何か言葉を発しようと試みる。が、身体は先程同様、全く言うことを聞かず、思うように動かせない。しかも言葉を発しようとすると口を開くと、全身に熱が籠り、開きかけた口からは俺の意志とは全く関係なく勝手に声が漏れ出した。

 

「ふ、ふ、おぎゃぁああ!!」


 え? 今の、俺の、声?


 転生しているから、前世と違う声なのはまだいい。問題なのは今のが声ではなく音なのではないかと思うぐらい情けなくて幼いものだったことだ。いまだに自分の口からさっきのが発せられたという事実を俺は受け入れきれていない。

 

 しかし、その俺の口から出た音のような声を皮切りに、目の前の二人の巨人が話をし始めた。


「お、おい、今の聞いたか?」

「ううっ、え? 今の、この子が? 本当に? 嘘? 本当なの?」

「本当だ、俺も聞いてたんだから間違いない。ほら、もう大丈夫って分かったわけだし、お前も落ち着いてちゃんと涙拭け。初めて見た母親の顔が泣き顔じゃこの子も悲しむだろ?」

「そ、そうね。あまりにも泣かないから死んじゃったのかも、まさかこの子までって思ったけど、生きててくれてよかった……」


 会話を聞いていくうちに、段々と現状の把握ができてきた。

 

 俺が巨人だと思い込んでいた目の前の二人は普通のサイズの人間で俺の転生先での新しい両親だ。俺が小さく、赤ん坊になっているからそう思い込んでしまったということらしい。今時だったら人間以外のもの、いわゆる人外に生まれ変わる確率も十分あったけど、俺がしたのは一番王道な赤ん坊転生のようだ。


 そして、先程の音のような俺の口から出た声は生まれたての赤ん坊の第一声である産声だったらしい。分かったとしてもなんか嫌だけど、これでさっきの声が情けなく幼いものだったことにも一応納得はいく。どうやら産声が遅かったため死んでいるのではないかと心配をかけてしまっていたらしい。


「この子も目の色、綺麗な赤色だな。ちゃんと俺らから受け継いでくれてるみたいだ」

「本当だわ。それによく観察したらこの子あなたにそっくりじゃないかしら?」

「観察したらって何だよ、観察したらって。ま、親子だし似てても何ら不思議じゃないけどな」

「ふふ、冗談よ。でもほら、顔立ちとか私よりあなたに似ている気がするわ」


 それから数分の間。やることもないので、俺はずっと両親の会話に耳を傾けていた。


 どういう仕組みなのかは不明だが、だんだん俺の目がものの形や色をある程度は認識できるようになった。


 あれ、確か赤ん坊って数ヶ月経たないと色とか認識できないんじゃなかったっけ? 前世で弟が生まれた時に母親がそんなことを言っていたのをふと思い出した。


 でもまあ見えるものは見えるんだもんな。まだ分からないけどここは前世とは多分全然違う世界だと思うから、前世の情報が通用しないこともかなりあるだろうし……。


 俺は改めて目の前にいる両親をじっくり見てみることにする。


 まず、俺を抱っこしてベッドに座っているのは母親だ。俺のことを心配して泣いていたからなのか、目の周りが少し腫れてしまっている。でも、それが気にならないぐらいの澄んだ赤色の瞳に整った顔立ち、華奢な身体へと伸びる綺麗な焦げ茶色でストレートの髪を持つ美人な女性だ。


 その向かいにいる、ベッドの前に置いてある椅子に座っているのが父親。母親とは逆に少し強面でかなりがっちりとした身体つきをしている。髪は燃えるような赤色で、目も髪色同様に赤い。どうやら両親はそうなのだが、目の色は俺も含め家族全員が赤のようだ。外見はちょっといかついけど、喋っている雰囲気とかは別に怖いとかもなく普通に優しそうな父親って感じの印象を受ける。


 ようやくしっかり両親の顔を見ることもできたし、改めてちゃんと挨拶しておこうかな?


「あー、ぶぅー!」


 身体が動かせないので、顔だけで精いっぱいの笑顔を作る。それからよろしくお願いしますという気持ちを込めて、笑顔のまま俺は口からまた何とも言えない声を発した。


「見て? 今この子笑ったわよ。まだ分からないとは思うけど、私あなたのママでジェナスっていうの。よろしくね、ナイト」

「本当だな。ただ、先に言うのはずるいぞ。俺だって先に言いたかったのに。俺はラルファ、お前のパパだ。よろしくな」


 ちょうどいいタイミングで自己紹介をしてくれた。母親の名前はジェナス、父親の名前はラルファというらしい。


 俺の新しい名前はナイトっていうのか。両親は知るはずもないことだから関係ないだろうけど、俺としては前世の名前が涼()だったから何となく馴染みがある気がする名前だ。


「ふわぁああああ」

「どうした? 眠いのか?」

「ふふ、大きな欠伸ね。このまま私が抱いたままっていうのもあれだし、ベッドで寝かせてあげようかしら」

「その方がいいかもな。じゃ、まだ抱っこしてやれてないし、俺が連れてってやるとするか」

「連れて行ってくれるの? って言ってもすぐそこだけど」


 自分でも気づかないぐらい自然に欠伸が出た。さっき生まれてきたばかりなのにもう眠いらしい。頭ではまだ起きていて色々なことを考えられるのに、身体が全くついてきておらず完全に睡眠モードに突入しようとしている。


 俺は母親から父親の腕の中に移され、半ば強制的にいわゆるベビーベッドに寝かされた。ベッドのフカフカ感が程よく俺の眠気を促進してくる。


 そういえば女神様、ちゃんと人との対面が大丈夫なようにしてくれたん……。あ、もうだめだ、目が限界。瞼が勝手に降りて───

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