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0. 不思議な夢と人生の最期

リライトしたため再投稿しました!

内容は前に投稿していたものとほとんど変わってません!

途中まではリライトした部分が続きます……

また応援していただけるととても嬉しいです!

よろしくお願いします(*´ω`*)


「僕に――――をくれるって本当?」


 

「じゃあやっと僕、皆と同じようになれるってこと?」


 

「うん! 僕一人でそこに行けばいいんだね、分かった!」

 


 またこの光景だ。いつもの男の子が、いつもの場所で、いつものように誰かと話している。


 男の子はパッと見た感じまだ幼く、三歳から五歳ぐらい。容姿からしてどうやら日本人ではないようだ。さらに、その男の子がいる部屋もどこか異国風の内装をしているようだ。


 ただ、これもいつもと同じなのだが、ほぼ間違いなくいるはずの誰か、会話している相手の姿や声はこちらから全く認識することができない。


 一体誰と何を話しているのだろう? 以前独り言なのではないかなどと考えたこともあった。しかし、それにしてはセリフ同士の間が空きすぎている感じがするし、内容や話し方も明らかに会話している時のそれだ。


 あと、なぜかいつも同じセリフの同じところが聞き取れないんだよな。しかも、なんとなくだけどその聞き取れないところは凄く大事な部分のような気がする。


 男の子が最後のセリフを言い終えたあと、少し間があく。そして、月影 涼夜(つきかげ りょうや)こと俺の顔に太陽の光が差し込み、病室のベッドの上で俺は目を覚ました。


 そう、この男の子の状況とセリフの一連の流れは全て夢だ。もうどれほどこの夢を見たのか分からない。それぐらい何度もこの夢を見続けている。


「ふわぁああああ」


 横になったまま俺は大きな欠伸をする。この夢を見ているせいなのだろうか? 最近どうも眠りが浅くて、朝起きた後やけに眠い。

 

 俺も皆、いや、普通の人と同じような人生を送れていたらどんなによかっただろう。この夢を何度も見るうちに、よくそんなことを考えるようになっていた。


 確かに、俺がこの生まれてからの十八年、どうしようもなく酷い人生を送ってきたのは紛れもない事実だ。


 幼少期に両親と弟を交通事故で亡くし、引き取ってくれた親戚の家で引き篭もりになった。最初のうちは親戚たちもそんな俺にも優しくしてくれ、家族の一員のように接してくれていたのだが……。俺が大きくなるにつれ、次第に俺を無視したり、邪魔者扱いしてくるようになっていった。


 これに追い討ちをかけるように、俺は病気がちになってしまった。あれは確か、世間一般でいう高校生になるぐらいの頃からだったと思う。何か病気にかかると、大したことがなくてもすぐ病院にぶち込まれる。今思えば、親戚たちはよっぽど俺を家から追い出したくてそうしていたのかもしれない。


 そして、見てもらえば分かる通り俺は今も入院している。


 病名がないので何とも説明しずらいが、定期的に背中に痛みが走るという謎の病気だ。初めて発症した時は、救急車で緊急搬送されるようなレベルの激痛だった。


 しかし、病院でいくら検査をしてもらっても、身体のどこにも異常は見当たらない。一応痛み止めの薬を処方してくれてはいるものの、こんな病気はどこにも前例がなくどう治療をしたらいいものかと医者も首を傾げてばかりだ。


 と、布団の中でこれまでの自分の人生をぼんやり振り返っていると、誰かがガラガラと病室の扉を開く音が聞こえた。


 俺は慌てて頭にも布団を被る。


「涼夜くん、おはよう。もう起きてるんでしょ? 朝ご飯ぐらいはちゃんと食べないと出る元気も出ないんだからね」

「…………」

 

 いつもの看護師さんだ。朝食を持ってきてくれたのだろう。ここ最近の入院ではずっとこの看護師さんが俺の世話を担当してくれている。


「もう、ずっと布団被ってばっかりじゃないで、たまには顔ぐらい見せてくれたっていいのに。いつものところに置いておくから、本当にちゃんと食べるのよ? また下膳の時にちゃんと食べてるかどうか確認するからね」

「…………」


 俺は布団をすっぽりと被ったまま、看護師さんの話に耳を傾けた。


 もう長らく一緒にいるから、看護師さんがいい人であることは十分理解している。が、これまでの色々のせいで人と接することにどうしても恐怖感を覚えてしまう。相手の顔を見ないように、布団の中で話を聞いているのが今の俺の精いっぱいだ。


 まだガサゴソと音がしているから、ベッドの側で看護師さんが何やら作業をしているらしい。


 しばらくして俺は病室のドアが閉められた音がするのを確認すると、布団から少しだけ顔を出した。普段はあまり食欲が湧かず、せっかく用意してもらったご飯にも全く手をつけないことが多い。なのになぜか珍しく今日は少しだけでも食べたいと思ったのだ。


 布団を少しめくり、深呼吸をして朝食を食べようと上半身を起こ……せなかった。半分ぐらいまで行ったところで、初めてこの症状が出た時を上回るほどの激痛が背中を襲う。俺はガクリとよろめいて勢いよく後ろに倒れてしまった。


「うっ……」


 頭をベッドに打った時、思わず口から呻き声が漏れる。


 身体がビクビクと痙攣していて、思うように動かせない。が次の瞬間には全ての痛みがなくなった。どうやら痙攣はまだ止まっていないようだから、痛みが治まったというわけではなくただ感じなくなっただけらしい。


「そこの病室よ! 急いで! 早く!」


 俺の身体の何かが急激に変わり、危険な状態になっていることを知らせる警報音が病室内に鳴り響く。廊下で叫ぶ誰かの声、こちらに向かってくるたくさんの足音も聞こえてくる。


 なんとなく、俺はもうこれ以上生きられない気がした。理由はなく、なんとなくそう感じただけだ。


 もし本当に死ぬとしたらびっくりするぐらい急な話だな。いや、まあどうせ生きていたって仕方ないような人生だったし、別にもう死ぬのは全然構わないんだけど……。


 でも、だからといって心残りが全くないというわけではない。もし最後にひとつ願いを言ってもいいなら、誰かに叶えてもらえるなら。俺もこんな人生じゃなくて、もっと幸せで恵まれた人生を送ってみたかった。


「幸せで恵まれた人生、か……」

 

 目から一筋の涙がこぼれる。泣いたのなんていつぶりだろうか?


 俺の最後の願いが誰かに届くことはないだろう。俺の声は静かに流れた涙とともに、虚しく響く警報音と病院の騒音に掻き消されていった。

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