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LAST

 懐かしい、心地よい、そんな感じがした。気持ちが良くて目を開けたくない。このまま寝ていたい。でもなんか、呼ばれている気がした。声は何も聞こえないけれど。俺はゆっくりと目を開けた。


 泣いているゆいが俺の頭をなでていた。しんと、もう一人知らない女性も病室にいた。なんでここにゆいが?色々不思議はあったけど、俺が目を覚ましたことに気づいたゆいが、抱きついてきて考える暇はなかった。


「ばか。ほんとにばか。ばか。」


 ゆいは号泣しながら、俺に抱きついてくる。俺はゆっくりと、抱きしめ返した。何がなんだかわからないけど、頭で考えるよりも先に身体が動いた。それで、出来る限り強く、強く抱きしめた。久しぶりに、ゆいの匂いを嗅いだ。本当にいい匂い。柔らかくて、優しくて、大好きな匂い。


「もうずっと、悠くんの隣にいるから。いつまでも。」

 ゆいは泣きながらそういった。俺は何も返せず、そのまま5分くらい抱き合っていた。


 どうしてゆいがここに来ちゃったんだ。しんが話した以外あり得ない。納得して協力してくれてると思ってたのに、どうして。俺がしんに目を向けたことに気づいたのか、ゆいが言った。


「しんちゃんを責めないで。しんちゃんは悪くない。悪いのは私。無理やり聞き出したの。でもそれより悪いのはゆうくん。あんな終わり方許さないんだから。」


 そう言って、ゆいはまた俺の胸に顔を埋めたまま泣き出した。


「悪い、ゆう。偶然が重なって、居酒屋で会ってゆいちゃんに怪しまれちゃった。俺も酔ってて、問い詰められて、話しちゃった。ごめんな。」


 しんはそう言ったが、なんだか満足してそうだった。こうなって結局良かったと思っていそうだ。


「あやちゃん、出よっか。」


 ああ、この子があやか。ゆいからよく話を聞いていた。しんはあやをつれて病室を出た。俺とゆいのふたりきりになった。一度裏切ってしまった俺は、何を伝えたらいいかわからない。


「私はもうずっと悠くんのそばを離れません。」


 ゆいは言った。怒っているのが伝わってきた。俺も口を開いた。


「ゆいちゃん、じゃあ俺と約束して」

「なにを?」

「俺の次の人をちゃんと見つけて幸せになること。俺のことは思い出としてしまっておいて、いつまでも引きずらないこと。」


 ゆいは黙ったまま俺を抱きしめる手を強めた。辛いんだろう。そんな事はわかってる。こうなるから会いたくなかった。そもそも、ここで約束することに意味なんてないのかもしれない。結局俺は死んで、その先のゆいを幸せにすることなんて出来ないんだから。


「わかった。約束する。」


 ゆいははっきりと、強めに約束すると言った。そしてそのまま続けた。


「じゃあゆうくんも約束してください。」

「ん、いいよ。なにを?」

「これから会いに来る私を拒んじゃだめ。」


 ゆいは強くて優しい声で俺にそう言った。どうしたらいいかわからなくて返事ができない俺にゆいは言った。


「返事は?」

「はい。」

「あと、これからたくさんゆうくんの好きな映画を教えてください。」

「はい。」

「ちゃんと、先のことを私は約束したので、もう私の未来の心配はしないでください。」

「………。」

「返事。」

「はい。」

「ほんとに?もう心配しないって約束できる?」

「うん、分かった。もうしない。」

「ん。ねえ、この姿勢疲れちゃった。ベッド入ってもいい?」

「うん。」


ゆいはそう言ってベッドに入ってきた。そして、ベッドの中でやっぱり抱きついてきた。


「ゆうくんの匂い。すき。」

「え?俺匂いするの?」

「するよー?いい匂い。」

「俺もゆいちゃんの匂い好きだよ。大好き。」

「匂いだけ?」

「ゆいちゃんの全部が大好き。」

「どこがすきなの?」

「えろいとこ」


 布団の中で足を蹴られた。こんな時にふざけないでって顔してる。


「どこがすきなの??」

「えろいとこ」


 ゆいはいじけて、俺に抱きつくのをやめて俺に背を向けた。俺は後ろからゆいを抱きしめた。


「いつもご飯を美味しそうに食べるところが好き。俺にくっついて幸せそうな顔するところも好き。笑顔も可愛らしくて大好き。表情が豊かでわかりやすいところ、優しくて気を遣ってくれるところ、俺に守りたいって思わせてくれるところ、俺のことが好きってちゃんと伝えてくれるところ、全部好き。大好き。」


「私も。私のほうが大好きだよ」


 ゆいは俺に背を向けたまま、俺の袖をぎゅっと掴んで言った。


「ごめんね。」


 俺が謝ると、またゆいは泣き出した。俺も泣いた。そのあと、ゆいは俺の方に向き直して言った。

「いいよ。これからはずっといっしょにいるからね。」

「ん、ありがとう。」

「たくさん思い出作るんだから。」

「ん、わかった。」


 お互いに無言で抱き合っていると、ゆいは最近寝れていなかったのか、俺の腕の中で寝た。ゆいの寝顔を見て、以前ゆいが嬉しそうに、親からつけてもらった漢字の意味を話していた時の事を思い出した。


「大切な人の事を心から想える人になりなさい。大切な人からも心から思って貰える人になりなさい。優しいだけではなく、人を憂う事のできる。憂いて貰える人になりなさい。そういう意味が込められてるんだって。」

「だからその漢字なんだ。凄い。じゃあ俺たちは2人の漢字の通り、いつまでも果てしなく、お互いを憂う事ができる関係になろうね。」



 ゆいの未来のことをもう心配しないと約束した。でもそんなの無理に決まってる。俺にとってやっぱりいちばん大事なのはゆいなんだから。自分が死ぬ運命を恨んだが、死ぬことを恨むことが出来るくらい大切な人に出会えたことに感謝も出来る。そんな大切な憂衣の未来を心配しないなんて絶対に無理だ。死ぬまで、いや、死んでも無理だ。死んだあとどうなるかなんて知らないけど、俺はきっと、悠久に君を憂うんだろうな。そんなくだらないことを考えながら、今日も目を瞑った。

こちらでラストになります。

自己満で書いた小説でした。

拙い点も多くあったかと思いますが、最後まで読んでいただけた方、ありがとうございました。

感想などいただけると大変嬉しいです。

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