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朝が来た。ほとんど寝られなかった気がする。あやちゃんが用意してくれたトーストとコーヒーを朝ごはんに頂いた。あやちゃんが、気まずそうに口を開いた。
「あんまり言いたくないんだけど、ゆい騙されてたってことない?知り合ってすぐ付き合って、それで好きな人出来たってブロックされたんだよね。お金とか、取られたりしてない?」
「してないよ!」
自分でもびっくりするくらい大きな声が出た。そんなことを言ってきたあやちゃんにも腹が立ったし、私を心配してくれている親友に怒鳴ってしまった自分に更に腹が立った。ごめん、と小さな声であやちゃんは言った。
「私こそごめんね。心配してくれたのに、ほんとにごめん。」
私も謝った。それから、どうしてこうなっちゃったのかあやちゃんと相談したけど、全然わからなかった。ゆうくんに迷惑かもしれないけど、明日の朝、ゆうくんが家出る時間に家の前で待つことにした。それで、ほんとに他に好きな人が出来たから振って、鬱陶しいからブロックした。そう言われたらきっぱり諦めるってあやちゃんと約束した。するべきことを決めたからか、昨日寝られなかったからか、昨日よりは寝ることが出来た。
次の日、あやちゃんは仕事を休めないから一緒にゆうくんの家の前で待ったあと、仕事に行くことにするらしい。私は休ませてもらった。朝、普段ゆうくんが家を出ていた時間の前後10分間、ゆうくんの部屋の501の前で待ったけど、会えなかった。あやちゃんは私を家に送ってくれたあと、ここにいていいよって言ってくれた。今日あやちゃんが帰ってきたら、夜自分の家に帰ろう。ゆうくんは新しい彼女の家に泊まって、そこから仕事に行ったから今日家にいなかったのかな。嫌なことばかり考えてしまって、一日中病んでいた。
「ゆうさんに会ったよ」
あやちゃんは帰ってきてそう言った。私が黙って下を向いていたら、そのまま続けてくれた。
「まず朝、ゆいを送って職場に向かう時に501から出てきた人が見えたから急いで5階に行って話しかけたの。なんか家からダンボール出して整理してた。ゆいが言ってた通り、高身長で顔が整ってた。ゆうさんですか?って聞いたら、冷たく『誰?』って言われた。ゆいの親友ですって自己紹介して、急に振られてブロックされて戸惑っているから、一回会って話してほしいって言った。そしたら、『俺もう他に好きな人出来てその人と付き合ってるから。そう伝えたはずだけど。二度と来ないで』って言われた。」
そっか。ほんとに他に好きな人出来てたんだ。私、ただ振られただけなんだ。
「あと、さっき帰り道。花束もって、きれいな女の人と会って車に乗ってた。」
あやちゃんは辛そうに、教えてくれた。ゆうくんは、もう他の人と幸せなんだ。でもこれで諦められる。もう引きずるのはやめられる。涙は止まらないけど、前に進める気がする。明日は仕事に行こう。
「あやちゃんありがとう。すっきりできた。もう大丈夫。」
つらいけど、しんどいけど、言葉を絞り出した。
「今日は帰って、明日は仕事頑張ろうかな。明日仕事終わったら飲み付き合ってよ。私、捨てられちゃったからさ。愚痴聞いて?」
「ん、わかった。気をつけてね」
出来る限りの笑顔を作って、やせ我慢だけど、大丈夫だよとあやちゃんに伝えようとした。あやちゃんも笑顔で返してくれた。
次の日、吹っ切れたのか、自然と仕事はがんばれた。失恋したばかりで大将の店で飲むのは嫌だから、職場の近くの別のお店であやちゃんと飲むことにした。入ったことがないけど、大将の店と雰囲気は似てるお店。入ってテーブルについて、ビールを頼んだ。
「私、今日はたくさん飲むから。今日金曜日だし。付き合ってね。この気持ち吹き飛ばすの。」
「ん。」
「じゃあはい、かんぱーい!」
から元気かもしれないけど、できるだけ元気いっぱいの声で乾杯をした。乾杯と同時に、あやちゃんがびっくりしている目をして私の後ろを見て言った。
「ゆうさん…」
私もびっくりして振り向いた。そこにいたのは、しんちゃんだった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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