09 罪
ミスキさんが、ハンジさんの手を握りしめて、泣いています。
レマリィさんも、号泣。
ルーリシェラさんは、ちょっと渋い顔。
ハンジさんは、困惑顔。
僕は、ホッとしております。
ミスキさんの"読心"によると、
ハンジさんに、罪は、無し。
ミスキさんによって語られたハンジさんの"記憶"は、あまりにも哀しいものでした。
無理やりこの世界に召喚された普通の男の子が、
悪党どもにいいように操られて、
悪事の片棒を担がざるを得なくなっていく経緯。
アイツらは"悪事に手を染める楽しさ"を自分達だけで楽しんで、
ハンジさんにはほんのちょっとのお裾分けもありませんでした。
つまりは、全くの、無罪。
驚くほどお人好しで、
びっくりするほど気が弱い男の子が、
ひたすら酷い目に遭い続ける哀しい物語りを、
ミスキさんは嗚咽を堪えながら、最後まで語ってくれました。
本当にごめんなさい、ミスキさん。
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ハンジさん、晴れて無罪確定。
厳密には、何らかの罪に問われるのでしょうけど、
それよりもはるかに、この世界がハンジさんにお詫びしなければならないことが多すぎるのです。
「エルサニアとキルヴァニア、両国からの正式な謝罪と賠償が決定するまで、ハンジさんの身柄は巡回司法省で保護すべきだと思う」
どうでしょう、ルーリシェラさん。
僕は、ハンジさんの希望を聞くべきかなって。
「……僕は……静かな場所に行きたいです」
「今は誰にも……煩わされたくないです……」
「……ひとりになれる場所、ありますよ」
ミスキさんがハンジさんの手を優しく握りしめております。
なるほど、あそこですか。
確かにひとりで暮らせる場所なのですが、
ひとり静かに過ごせるとは限らないんじゃ無いかな……




