08 裁き
ほぼ完治した、ハンジさん。
でも、逃げるどころか、生きることにも疲れた様子。
心が折れたっていうのかな、この状態。
でも、決断しなくちゃなりません。
巡回司法官に引き渡す時を。
今のままの状態のハンジさんだと、おとなしく裁きを受け入れて、どんな罰でも……
はっきり言って部外者なんだけど、
すごく納得いかない。
チャンスに、賭けてみようかな。
レマリィさんに相談して、迎えに来てもらいました。
いや、犯罪者なのだから、迎えにっておかしいかもだけど、
ハンジさんがあまりにもなすがままなので。
---
エルサニア王都巡回司法省本部の一室に、
ハンジさんと、レマリィさんと、僕。
ハンジさんは、手錠も鎖も縄も、無し。
誰がどう見ても、拘束の必要無しと判断されるような状態なのです。
「お待たせしました」
部屋に入ってきたのは、ふたり。
司法省広域重犯罪担当官、ルーリシェラさん。
そして、ミスキさん。
---
僕が提案したのは、公平な裁きの場での、罪の確定。
ハンジさんが強盗団の一員として犯してきた罪の全てを正確かつ公平に裁いてほしい。
今の、メンタルが病んでいるハンジさんに、深層自白剤は危険だと思う。
だから、ミスキさんにお願いしました。
ミスキさんの固有スキルは『読心』
人の記憶の全てを、本人以上に深く知ることができる能力。
巡回司法官として現役だった頃は、その卓越したチカラで大勢の悪党の罪を暴いてきたそうです。
ただ、悪党たちの悪事の記憶のあまりの酷さに、ミスキさんの優しい心は耐えられませんでした。
正式に引退してはいませんが、一線は退いた状態。
深層自白剤での取り調べが普及した今では、どうしても必要とされる時だけ、お手伝いしているそうです。
それでもミスキさんに来てもらった理由、
ハンジさんの記憶なら、ミスキさんを怖がらせたりしないと思うから。
ルーリシェラさんには、この場で暴かれた全てについて、証人となっていただけるようお願いしております。
どんな悪事も絶対に見逃さない、現役最恐の捜査官と聞いておりますので。
「これより、読心審問会を始めます」
「この場での全ての証言は、私の固有スキル『真実』にて、即座に真偽の判定が成されます」
「ハンジ氏は、了承の場合のみ、一礼願います」
ルーリシェラさんの宣言に、ハンジさんがチカラ無くうなだれて、審問会が始まりました。




