06 説得
ヤツは、動きません。
何だろう、あれだけ警戒しているのにあの対応。
舐められてる?
まあ、気持ちは分からないでもないですね。
この状況で対策もせず、間抜けにもスリスリ近寄って来るなんて、
対抗手段を持ってないザコってバレバレ、
そのうえ逃げるっていう状況判断もできないおバカ。
はい、正解。
ザコでおバカですけど、何か。
幸いにして特攻狩人の仇討ちしてくれそうなめっちゃやたらと頼りになる仲間には恵まれてます。
僕にできることは、少しでも多くの情報を持ち帰ってみんなに伝えるために、苦手な近接戦で挑むこと。
でも、即死系のスキルはご勘弁ですよ……
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あーなるほど、
こりゃ動けませんよ、
魔蜘蛛にやられちゃったのですね。
意識はあるし魔法もスキルも使えるけれど、
指一本動かせません、と。
つまりは、絶賛麻痺状態。
よく見たら、同い歳くらいの男の子が、
身動きひとつ取れず、
めっちゃ怯えているわけで。
どうしよう……
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マイテントで、男の子を介抱中。
とりあえず、このスキルか魔法を解除してほしいなって説得したら、
素直に解除してくれました。
さすがに、すぐに我が家に連れ帰るわけにもいかず、
現地で対応ってことで、
マイテントに寝かせているのです。
魔蜘蛛の毒消しを取ってくるので、おとなしく待ってて、
って言ったら、安心したように眠り始めました。
まあ、そういうわけで、
念のため、魔物避け結界を張った『Gふなずし』を設置、
一度我が家に戻ります。
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シュレディーケさんたちに事情を説明、
この件はしばらく僕に任せてほしいって説得、
みんなは納得してくれました。
そう、こういう時は、普段からコツコツ積み上げてきた信頼がモノを言うのです。
「いや、魔蜘蛛の麻痺の恐ろしさと、身動きひとつ取れない心細さは誰よりも理解している」
シュレディーケさん……優しいんですね。
「それにその状況なら、むやみにfpsが増えることもあるまい」
シュレディーケさん……
てな感じで、アレの介抱に向かいます。
もちろん現場に行くのは僕ひとり。
少なくとも、ちゃんと話しを聞けるようになるまでは、みんなとは会わせられません。
巡回司法省に話しを通してもらうため、
レマリィさんに連絡を取って、事の次第を説明。
しばらくは巡回特使様こと僕に一任してくれるそうです。
なんだかたまに役立っちゃいますよね、この肩書き。
ツァイシャ女王様に、感謝。
薬と飲食物と着替えを準備。
今回は僕の自作の毒消しではなく、
クロ先生の『万能解毒剤』ですので、
即効性は保証済み。
おむつ介護しなくて良いのがうれしいのです。
では、介護狩人、出発!




