03 お預け
我が家の増築は、例によってあっさり完了。
今回はヴァサコさんが建築助手を務めてくれたことで、
あっさりどころでは無いスムーズさで、
別宅2号が建っちゃいました。
で、敷地内にまったく同じ建物が3棟になっちゃいましたので、
混乱を避けるために呼び方を考えることに。
最初からあった本宅は"A棟"
ルルナさんがお住まいの"B棟"
ヴァサコさんの新居の"C棟"
ただ、それだとちょっと味気ないです、という声もちらほらありますので、
この呼び方はそのうち変更されるかも。
内装とか、もっと自由にして良いのですよって言っているのですが、
なぜかみんなはあまりイジりたがらずに、そのままの状態で暮らしております。
家族も増えましたし、せっかくだから大きなキッチンとかどうですか、ルルナさん。
「いいえ、このままが良いのですっ」
「セミナーの際、セシエリアさんも仰っておりました」
「"御主人様の住まう御屋敷に存在する全てに、愛を持って接しましょう"と」
「あの小さなキッチンこそが、ご主人様がこの愛らしいご自宅で育ってきた証しそのものなのですよっ」
えーと、ありがとうございます。
何かご指摘の点などありましたら、遠慮なく、ですよ。
アリシエラさんも、ありがとうございました。
僕にできることでしたら、いつでも何なりと。
「むふっ、そういう無防備なことを言ってるから、精霊さんたちも無茶振りざんまいなのですよっ」
「それと実は、『ヴァサーゴ』についての重大なお知らせがあるのですっ」
おっと、もしかして『黒猫嵐工房』ですね!
これで『ヴァサーゴ』関連が上手くいったら、開発関係者としてボーナスとかもらえちゃうかも。
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えーと、残念なお知らせ、でした。
『ヴァサーゴ』の量販製品化は、今回は見送りということに。
どうやら、エルサニアの法に抵触してしまうようなのです。
"奴隷、並びにそれに類似する行為の禁止"
エルサニア王国とその同盟国では、
奴隷にまつわる行為全般が禁止されています。
通常の、荷運びなどの単純労働でのゴーレムの利用は禁止されていないのですが、
どうやら『ヴァサーゴ』は優秀過ぎるみたいなのです。
つまり、あまりにも人間味があり過ぎて、商業ベースでの販売は不味かろう、と。
確かに、しょっちゅうナンパされちゃうようなカワイコちゃん系ゴーレムは、
販売先を厳選しないと大問題どころではないのです。
介護や医療現場でなら、まさに即戦力でお役立ちできるのですが、
量産販売されてしまうと全ての個体に眼が行き届くとは限らず。
えーと、野郎系ガチムチゴーレムは、
アリシエラさんから速攻で却下されましたよ……
というわけで、これまでの人造つくも神の皆さんと同様、
今後生まれるかもしれない『ヴァサーゴ』も、
僕たち仲間内だけでのパートナーとなる予定です。
残念ながら、ヴァサコさんの姉妹登場は当分お預けみたいですね。
「アランさんも、とても残念がっておられましたよっ」
アランさん……