02 向上心
先ほどヴァサコさんが狩った華咲尾白鳥を、さっそく野営料理。
狩りも野営料理も、何だってそつなくこなせちゃうのがヴァサコさんなのです。
うん、美味しいですね。
「……今日はちゃんとマスターのお役に立てておりますか不安なのです」
はい、いつも以上に順調に、狩り場巡りできておりますよ。
ヴァサコさんも楽しんでくれているとうれしいです。
「……お役に立てているのはうれしいのですが特に凄いことができているわけでは無いのです」
「……何でも平均的にこなせるのは私だからでは無く『ヴァサーゴ』だからなのです」
それで良いと思いますよ。
僕は普通で平穏な暮らしができればそれ以上は望みません。
つまり、普通であることこそが何よりもうれしいと思っておりますので、
ヴァサコさんも普通であることを楽しんで暮らしてほしいのです。
「……向上心や欲は不要なのです?」
向上心って、今の自分を全否定するのでは無く、
ちょっとずつでも変われる手助けになる程度のものであれば良いのかな、なんて。
もちろん僕にもいろいろな欲がありますけど、
それに溺れないことが普通の生活を守る第一歩かな、なんて。
「……マスターはまさに"らぶらぶ風林火山"の体現者にして伝道師なのです」
「……その余裕こそがfps急上昇の秘訣にして"乙女ハンター"としての生き様そのものなのです」
えーと、噂に惑わされてはいけませんよ。
まあ、こんな普通の家長ですけど、これからもよろしくお願いしますね。
「……奥様のようなわがままボディでもルルナ先輩のようなぴちぴちバディでもありませんが末永くご愛顧のほどよろしくお願いしますなのです」
「……ご愛玩の方は今しばらくお待ちくださいませです……」
はい、がっつかない程度にお待ちしております。
そういえば、今はルルナさんと相部屋ですが、
そろそろヴァサコさんの私室も準備しないと、ですね。
「……増築をお望みなら別宅2号と『空間』個室のどちらが良いのかをマスターに聞いてきてほしいとアリシエラ博士からの伝言です」
ふむ、この際だから新しい離れも同じ建物にしてもらおうかな。
でもそれだと、お掃除の手間がさらに増えちゃいますよね。
「……お任せあれなのです」
「……そつなくこなすことには定評のあるニューフェイスがここにいるのです」
はい、ではその方向でアリシエラさんにお願いしましょうか。
あー、また"ツケ"が溜まっちゃうな。
ヴァサコさんの方からも、何かお願いごとがないか、アリシエラさんに聞いてみてくださいね。
「……では私の素体のほんの一部を増量するおねだりをするのです」
「……アリシエラ博士の研究開発意欲と私の飽くなき向上心とのウィンウィンなのです」
できればそのままのヴァサコさんでいてほしいのですが……
「……奥様との"キャラかぶり"問題回避のため涙を飲んで増量は諦めるのです」
「……フォリス家乙女軍団の性的嗜好バリエーションを豊かにしておくことこそがマスターのご満足のみなもとなのです」
「……そして健気なことも美徳でありそれを個性とすることこそが無個性キャラ回避の秘訣なのです」
ヴァサコさん的にも、いろいろと考えているのですね。
僕も、サイリさんやカミスさんと"キャラかぶり"しないよう努力せねば……




