15 相性
ハンジさんは、ヒューネ湖湖畔の小さな一軒家で、のんびりのびのびひとり暮らし中。
ヒューネちゃん、とても良く懐いてくれております。
きっと、ヒューネちゃんなりに、気を遣ってくれているのでしょう。
まあ、静かな暮らしを誰よりも望むふたり、
相性ぴったりだったってことで。
生活に必要な諸々は、
『黒猫嵐の魔導急便』としてミスキさんが配達してくれております。
お隣さんではなくなりましたが、
ハンジさんが気を許せる数少ない女性ですので、
これからも頼りにしてますね、ミスキさん。
ロージュさんは、今のところはおとなしくしております。
時おり、ハンジさんの件を取引材料として、
こちらに譲歩を迫ってきますが、
森の狩人は理不尽な脅迫に屈したりはしないのです。
まあ、これくらいの緊張感のある関係が、ちょうど良いのかも。
---
「ハンジさんの生活、問題無いようですね」
はい、ルーリシェラさんたち巡回司法省の皆さんのおかげです。
お忙しいのにハンジさんとの連絡担当をお引き受けいただいたそうで、本当にありがとうございます。
「いえ、私のような強面が担当では、ハンジさんは怖がっているのでは無いかと心配なのですが」
凄く信頼してくれているみたいですよ。
ルーリシェラさんはお噂通りの真っ直ぐな方でしたし、
ハンジさんが安心して暮らせることが何よりなのです。
「噂、ですか」
えーと、僕の担当のレマリィさんの方からいろいろと。
彼女が目標としている先輩のひとりで、
司法省で一番真っ直ぐな方だと。
「守秘義務違反ですね」
何とぞ穏便に……
「冗談です」
……冗談も真っ直ぐなのですね。
「私もフォリスさんのお噂は、それはもうあちらこちらから」
あー、その辺で勘弁してください。
「誰よりも静かな暮らしを望んでいるのに、人が困っていると放っては置けないという、難儀な性格のお人だと」
えーと、難儀な性格ってところだけは合ってますね。
「噂では、その性格は女性のみに向けられる、だったはずですが」
あー、それは合ってるかも。
「つまり、私も気を付けなければいけない、ということですね」
……まあ、正解ってことで。
ルーリシェラさんのようなお綺麗な方は、僕に限らず気を付けるべきでしょうし。
「まさに噂通りの"愛の魔狩人"」
本当、勘弁してください……




