10 環境
巡回司法省特別捜査官のミスキさんの自宅の広い敷地内にある、
東方風建築のこじんまりした一軒家。
ハンジさんの、仮の住まいです。
もちろん、巡回司法省の正式な手続きに則った上でのひとり暮らし。
現在、エルサニア王国民となる上での諸々手続き進行中。
ハンジさん自身が前を向いて暮らせるようになるまで、
みんなで静かにサポートしましょう、なのですけど、
僕的には、立地に少々問題アリかと。
何せ、あの敷地内の乙女比率の高さときたら、
お歳頃男子が静かに暮らせるようなもんじゃないですって。
ちなみにあの敷地内には、いずれ劣らぬ素敵な乙女たちが、現在13名在住。
ってか、男子はハンジさんのみ……
僕たち男衆も、過剰に賑やかにならないように気を配りながら、
できるだけ顔を出すようにしておりますが、
やっぱりマズいよね、あの環境。
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「やはり、引っ越そうかと……」
ですよねえ、ハンジさん。
僕だってこの場所で静かにひとり暮らしする自信、全然無いですもん。
むりむりむりのかたつむりって、
いや、待てよ、
確か、かたつむりは雌雄同体だから、この環境でも無理じゃ無いのかも……
「皆さん、僕なんかのために大変良くしてくれているのは分かりますが、どうにも落ち着かなくて……」
まさにそうですよね、ひと言で言うと、落ち着かない。
ここの乙女たちは、困っている人はほっとけないっていう、本当に良い人たちばかりなんです。
なんですが、静かで落ち着ける環境かと言われると……
「フォリスさんに、引っ越し先の選定、お願いできないでしょうか」
「僕にはまだ分からないことばかりなので……」
もちろん、お引き受けしますとも。
実は、いくつか候補もあるのです。
ハンジさんさえ良かったら、ちょっとだけ、候補地の下見にお出かけしてみませんか。
「……よろしくお願いします」
というわけで、ふたりでお引っ越し先候補地巡りに。
おっと、その前に、
お隣さんの乙女たちに伝えておかないとね。
もしハンジさんが姿を消したなんて勘違いされたら、
あの最強乙女たちが総力を挙げて捜索隊しちゃいますから。
「……怖すぎます、それ……」




