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Eternal Life それぞれの命  作者: タクト
一章
8/44

グレンの魔法指導

 そんな訳で薬の需要が無くなり、一気に暇になった翌日、エルフは一人で[転成堂]に来ていた。


 [転成堂]は仕事の斡旋場に飲食店を併設している。

 ウケビト登録した人なら、店内で注文せず溜まり場にしても余程でない限り咎められる事はない。


 エルフは店内である人物が来るのを待っていた。

 と言っても約束していた訳ではないので、運次第だったのだが、どうやら運が良かったらしい。

 エルフにとって魔法の師匠であるグレンが一人でやって来た。


 グレンは十代半ばくらいの小柄な少女だ。

 この街を中心に活動しているウケビトでここ数ヶ月は、別の街のギルドを拠点にしていたそうだが、最近戻ってきたらしい。

 青いフレームのメガネを掛けて、魔石を埋め込んだ長杖を持つ、the魔導師と言った風情で、実際中距離支援を専門と語るが、杖を使った槍術もこなせるらしい。


 エルフがグレンに稽古をお願いし、時間を持て余していたグレンが二つ返事で承諾した。

 二人は訓練棟に移動し、稽古を開始した。


*(๑^. .^๑)۶ 〜


 ウォーミングアップを終えた二人は模擬戦を始めた。


 「「ファイアボール」」

 

 エルフが左手から投げた“ファイアボール”をグレンが同時に五発発放った“ファイアボール”の三つで相殺し、残りがエルフ目掛けて飛んでくる。


 四発目を地面を転がり避けて、五発目は剣を構えて防御したが、五発目の真後ろにもう一つ“ファイアボール”が隠されていた。

 五発目が剣に当たる直前で六発目がエルフの頭部へと軌道を変え、当たる寸前でグレンが霧散させた。


 「スゴい、こんな短期間でここまで仕上げるなんて」


 グレンは素直に称賛していた。

 エルフが今のところ使えるのは“ファイアボール”と“バーニア”の二つだけだ。


 十m程離れた場所から始めた模擬戦は、グレンが予想するより苦戦した。

 開始早々“ファイアボール”を同時に多数放ったが、エルフは“バーニア”を使い緩急を付けて地を走り回避した。

 ならば足元を崩そうと足回りに撃てば空中に逃げられた。

 それはグレンにとっては好都合な展開だった。空中でなら避けられまいと、高火力の一撃を撃ったが、予想外の事が起きた。

 エルフは空中で“バーニア”を使い急加速し一気に懐に飛び込んで来たのだ。

 

 “ファイアボール”でジワジワと距離を開き二十m程まで離れていた二人の距離はこの一手で四mまで縮んだ。

 

 結果グレンは密かに自分に課していた縛りの一つを破ることになった。


 大きく後方へ飛び退りながら同時に六発の“ファイアボール”を撃ち、後は上記の展開だ。


 一発でエルフの“ファイアボール”を相殺するつもりだったのに、結局三発もぶつける事になった。

 グレン自身はあまり高火力の魔法を得意としないのもあるが短期間でここまでの威力を出されるとは思っていなかった。

 因みにグレンが課していた縛りは足を動かさない事と“ファイアボール”しか使わない事だった。

 

 エルフは近接戦が得意だと語っていたし、グレンの間合いで始めた模擬戦でこの展開だ。

 エルフの間合いから始めたら、本気を出さないと負けるかも知れない。

 

 「イケると思ったのになぁ」

 「正直、空中にいるときに“ファイルボール”を避けられたときはもうダメだと思いましたよ。

 あそこまでバーニアを連発して身体は大丈夫なんですか?」

 「あぁ、ちょっと痛むけどなんとも無い」

 「すごいですね、私は一度使えばしばらくは使いたく無いですよ」


 グレンはそう言って水の入ったボトルをエルフに差し出した。

 二人で水を飲み一息つく。

 

 「そういえば聞きましたよ。この前初仕事で大活躍だったとか。

 銃を持った男達に怯まず正面から突っ込んで片っ端から切り捨てたそうですね、普通の魔導師にはなかなか出来ませんよ」

 

 もしグレンが同じ状況に立たされたら、味方を銃撃から守る事に専念し、攻撃を味方に頼る事になるだろう。

 

 「あ、あぁーあのとき実は––––––––」

 

 若干曲解が混ざっているので、素直に修正し、エルフは本題に入った。


*(๑^. .^๑)۶ 〜


 稽古が終わり、ギルドに戻ると、中央テーブルの方でロジーナと平服を着た男が地図を広げてなにやら話し込んでいた。

 ギルド内も人がまばらで見た感じ戦闘職の人間は数人しかいない。


 「ん、グレンに小僧か。

 ちょっと面倒な事が起きてね、中央大図書院が魔物の群れに襲撃されてる」


 話を纏めるとこうだ。

 本日未明、どこからともなく魔物の群が中央大図書院に現れて、あっちこっち暴れまくっているそうだ。

 ビルカを始め殆どの街は防壁や柵に囲まれていて、出入り出来る門は当然門番が付いている。

 どうやって入り込んだか謎だが、魔物の群と言っても、ウルグやモッチョと呼ばれるスライム状の魔物で要するにある程度慣れたウケビトならそれ程脅威にならない。


 「そこで、今ここに居る戦闘職のウケビト全員に臨時クエストって訳だ。

 報酬は全員二十万ゼル、今のところ図書院の人間は立て籠もって被害は無いらしいけど、さっさと片付けるに越した事はない。

 頼むよ、お前ら」


 比較的低レベルの魔物討伐でこの報酬だ。

 たまたまギルドに居合わせたウケビトは大いに沸き立った。

 

*(๑^. .^๑)۶ 〜


 十三人の臨時パーティーが結成され早速中央大図書院に向かった。


 確かに図書院周辺にウルグやモッチョ、大型のカイトヒルが見られた。

 魔物が目に付いたところで臨時パーティーは、いくつかのグループに分かれて、図書院に繋がる通路に分かれた。

 作戦は、それぞれの通路伝いに図書院に進みながら魔物を殲滅して行くというシンプルな物だ。

 比較的低級な魔物しか目にされていないので、問題ないだろう。

 

 エルフはグレンと組んで、図書院に続く細道に差し掛かった。

 この二人が組む事になったのは、単に臨時パーティーの中で一番経験が浅いエルフとまともに交流があるのがグレンだけだったからだ。


 「その道なら幅も狭いし人通りも無いので二人で大丈夫」

 とはグレン談だ。

 そんな訳で二人は魔物と戦闘に入った。


 「前衛を任せます、後ろは気にしないで……ファイアボール」

 「バーニア」

 

 中央大図書院周辺の魔物退治、ここに始まる。


 新キャラグレン登場。

 名前自体はもう少し前から登場していましたけどね(・_・;

 エルフと同じ炎系の魔導師ですけど、戦い方で差別化しつつ、同じ系統でも得手不得手がある事を上手く表現していけたらなと思います。

 

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