桜の花~精神の美(後輩)~
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桜の花の花言葉~『精神美』『優美な女性』『純潔』
俺がまず考えたことは後悔させるには何をするのかだ。
菊に婚約破棄しなければよかったと思わせる為には菊より美人を彼女にすることだと思った。
俺が菊より美人を彼女にすれば菊も後悔するはず。
安易な考えを持ったが俺はそれほど水樹に嫉妬していたんだ。
俺は彼女には負けないくらい美しい人を会社で発見した。
菊と同じ受付の女性社員で俺よりも少し年下の子だ。
彼女の名前は桜だ。
「なぁ、ちょっと話があるんだけど?」
「先輩、何ですか?」
「君って俺の元恋人より可愛いよね?」
「そんなことないですよ。菊さんには勝てないです」
「君は菊より若いし、愛嬌もあるよ」
「どうしてそんなに褒めるんですか?」
「君にお願いがあるんだよ」
「だから私を褒めていたんですか?」
桜はショートカットの髪の後ろ側を押さえながら言っている。
いつも髪の毛の後ろが浮いていることを気にしているらしい。
そんなの気にならないほどショートカットが似合って可愛いのに。
「いや、本当に君は可愛いよ」
「分かりました。お願いの内容によりますけど」
「俺の恋人になってくれないか?」
「その言い方って告白じゃないですよね?」
「うん。俺の偽の恋人になってくれないか?」
「何故ですか?」
「菊が俺を捨てたことを後悔してほしいんだ」
「まだ菊さんに未練があるんですか?」
「未練? 違うと思う。ただ菊に後悔をさせたいんだ」
「分かりました。私でよければ偽の恋人になりますよ」
「ありがとう。桜」
これで菊を後悔させることができるな。
俺は偽の恋人作戦を決行した。
「まずは君が色んな人に俺達の関係を言うんだ」
「私がですか?」
「そう。俺の恋人になりました、なんてさりげなく言えばいいよ」
「私は黙ってあなたの隣にいればいい訳じゃないんですね?」
「君には色々やってもらうよ」
「分かりました」
桜が俺達のことを言ったことで色んな人に伝わった。
菊にも伝わっているはずだ。
◇
「次は俺と一緒に仲良く歩いているところを見せ付けよう」
「はい」
菊が向こうから来るのが見えた。
俺は桜と手を繋ぐ。
桜は驚いていたが嫌がることはしないみたいだ。
菊とすれ違ったが菊は何も気にしてはいない。
俺のことはもう、どうでもいいのか?
ムカつく。
「今日は君を迎えに行くから受付で待ってて」
「はい」
菊とすれ違った後、桜に言った。
そして俺は仕事を早く終わらせ桜を迎えに行く。
桜と菊は受付にいた。
見せ付ける大チャンスだ。
「桜。帰れるか?」
「あっ、はい」
桜はバタバタと帰る支度をしている。
菊はそんな桜を微笑みながら見ている。
菊は桜を可愛がっているのだろう。
そんな菊の顔を見て昔を思い出す。
◇◇
それは俺達が付き合って半年くらい経った頃。
「お兄ちゃん。待ってよ」
「お前はついてくるなよな」
俺達がデートをしていた時、幼い兄妹が前を歩いていた。
「だからついて来るなよ」
「だってお兄ちゃんと一緒にいなさいってお母さんが言ってたもん」
「お母さんは今はいないんだからそんな約束守らなくていいんだよ」
「ダメだよ。お母さんの言うことを守らないと鬼さんが来るんだよ」
「鬼なんていないから」
「お兄ちゃん。そんなこと言ったらダメだよ」
「何でだよ」
「鬼さんは鬼さんを信じていない子供の所に来るんだよ」
「そんなの嘘だよ」
「お兄ちゃんが鬼さんにつれていかれちゃう。やっぱり私がお兄ちゃんと一緒にいないとダメだよ」
「何でそうなるんだよ」
「私の大好きなお兄ちゃんを守る為なんだから、絶対に離れないよ」
「分かったよ。ほらっ、おいで」
男の子は手を女の子に差し出している。
その男の子の手を握り女の子は笑顔を見せている。
その二人を見ていた菊は言う。
「どっちが年上なのか分からないわね?」
「えっ、男の子の方が年上だろう?」
「精神年齢は女の子の方が上よ」
「どこが?」
「女の子は男の子の気持ちを変えたのよ?」
「気持ち?」
「最初はついて来るなって言ってたのに、最後は手を繋いで一緒に行こうとしてるの。それは女の子が変えたのよ」
「すごいな」
「そうよ。女の子は男の子に気付かれないように男の子を動かせるのよ」
「もしかして今日のデートのこの場所も何か意味があったりするのか?」
「そうよ。あれを見て」
菊は遠くの方を指差す。
そこには大きくて綺麗な桜の木が並んでいた。
地面に桜の花びらの絨毯ができている。
「桜の木?」
「そうよ。あれが見たかったの」
「でも、今日は俺が映画を観たいって言って映画館に行くんだよな?」
「だからこの桜の木の近くの映画館にしたの」
「この桜の木を見ながら映画館に行くのか?」
「そうよ。あなたは映画を観たいから場所なんて気にならなかったでしょう?」
「そういえば、そうだな」
「あなたは私に動かされてたのよ」
「女の子はすごいな」
「そうでしょう?」
そして菊は微笑んだ。
あの時、俺に微笑んだ顔と菊は同じ顔を、今もしている。
俺は菊に見惚れていた。
「帰りましょうか?」
俺は桜に言われて菊から目を逸らした。
菊の目の前で桜は俺の腕に腕を絡ませた。
菊を見るとまだ微笑んでいる。
何だよ。
その微笑みには何の意味があるんだよ。
◇◇◇
その日の夜、菊から電話があった。
「もしもし」
「私、菊よ」
「うん」
「あなたに話しておきたくて」
「何?」
「私は全部、知ってるから」
「はあ?」
「桜ちゃんのことよ」
「桜?」
「あの子を困らせないで」
「桜が困ってる?」
「あなたは年上でしょう? それに桜ちゃんは女の子なのよ」
「性別は関係ないだろう?」
「私はあの日、言ったでしょう? 女の子は動かせるって」
「あっ、あの桜の木を見た日だろう?」
「そうよ。あなたは桜ちゃんに動かされていたのよ」
「俺が動かしてたんだよ」
「本当にそう? あなたは提案しただけで動いたのは桜ちゃんでしょう?」
「それが何?」
「桜ちゃんはあなたの思うように動いてないわよ」
「そんなの嘘だ。だってちゃんと桜と付き合ってるのもみんな知ってるし」
「私はあなた達が偽の恋人だって知ってるわよ」
「えっ」
「全部、桜ちゃんから聞いてるからね」
「嘘だろう?」
「だからあなたのしていることは意味がないのよ。ただ桜ちゃんを苦しめているだけよ」
「桜が嫌なら言って欲しかった」
「言える訳ないじゃない。優しい心の持ち主なんだから」
「そうだよな。俺は年上だしな。言える訳がないよな。明日、桜には謝るよ」
「そうね」
そして電話を切った。
次の日、桜に謝って俺は偽の恋人作戦を終わらせた。
桜は偽の恋人でも良かったのにって言っていた。
菊へ後悔させる作戦は失敗に終わった。
でも俺は諦めない。
菊がダメなら菊の好きな人である水樹にターゲットを変えてやる。
水樹には謝らせる作戦を仕掛ければ菊が水樹への恋心を失くすかもしれない。
次は必ず作戦を成功させてやる。
読んで頂きありがとうございます。
楽しんで読んで頂けると幸いです。