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桜の花~精神の美(後輩)~

ブクマや評価や感想などありがとうございます。


桜の花の花言葉~『精神美』『優美な女性』『純潔』

 俺がまず考えたことは後悔させるには何をするのかだ。

 (きく)に婚約破棄しなければよかったと思わせる為にはきくより美人を彼女にすることだと思った。

 安易な考えを持ったが、俺はそれほど水樹(みずき)に嫉妬していた。


 俺は彼女には負けないくらい美しい人を会社で発見した。

 きくと同じ受付の女性社員で俺よりも少し年下の子だ。

 彼女の名前は(さくら)だ。


「ねぇ、ちょっと話があるんだけど?」


 受付にいるさくらを手招きして、隣にいるきくに会話を聞かれないように階段下の踊り場に行く。


「先輩、何ですか?」

「君って俺の元恋人より可愛いよね?」

「そんなことないですよ。きくさんには勝てないです」

「君はきくより若いし、愛嬌もあるよ」

「どうしてそんなに褒めるんですか?」

「君にお願いがあるんだよ」

「だから私を褒めていたんですか?」


 さくらはショートカットの髪の後ろ側、後頭部を押さえながら言っている。

 さくらは髪の毛の後ろが浮いていることを気にしているらしい。

 そんなの気にならないほどショートカットが似合って可愛いのに。


「いや、本当に君は可愛いよ」

「分かりました。お願いの内容によりますけど」

「俺の恋人になってくれないか?」

「その言い方って告白じゃないですよね?」

「うん。俺の偽の恋人になってくれないか?」

「何故ですか?」

きくが俺を捨てたことを後悔してほしいんだよ」

「まだきくさんに未練があるんですか?」

「未練? 違うと思う。ただきくに後悔させたいんだ」

「分かりました。私でよければ偽の恋人になりますよ」

「ありがとう。さくら


 これできくを後悔させる準備はできた。

 俺は偽の恋人作戦を決行した。


「まずは君が色んな人に俺達の関係を言うんだ」

「私がですか?」

「そう。俺の恋人になりました、なんてさりげなく言えばいいよ」

「私は黙ってあなたの隣にいればいい訳じゃないんですね?」

「君には色々やってもらうよ」

「分かりました」


 さくらが俺達のことを言ったことで色んな人に伝わった。

 きくにも伝わっているはずだ。



「次は俺と一緒に仲良く歩いているところを見せ付けよう」

「はい」


 きくが向こうから来るのが見えた。

 俺はさくらと手を繋ぐ。

 さくらは驚いていたが嫌がることはしないみたいだ。


 きくとすれ違ったがきくは何も気にしてはいない。

 俺のことはもう、どうでもいいのか?

 ムカつく。


「今日は君を迎えに行くから受付で待ってて」

「はい」


 きくとすれ違った後、さくらに言った。

 そして俺は仕事を早く終わらせさくらを迎えに行く。

 さくらきくは受付にいた。

 見せ付ける大チャンスだ。


さくら。帰れるか?」

「あっ、はい」


 さくらはバタバタと帰る支度をしている。

 きくはそんなさくらを微笑みながら見ている。

 きくさくらを可愛がっているのだろう。

 そんなきくの顔を見て昔を思い出す。


◇◇


 それは俺達が付き合って半年くらい経った頃。


「お兄ちゃん。待ってよ」

「お前はついてくるなよな」


 俺達がデートをしていた時、小学生くらいの幼い兄妹が前を歩いていた。


「だからついて来るなよ」

「だってお兄ちゃんと一緒にいなさいってお母さんが言ってたもん」

「お母さんは今はいないんだから、そんな約束守らなくていいんだよ」

「ダメだよ。お母さんの言うことを守らないと鬼さんが来るんだよ」

「鬼なんていないから」

「お兄ちゃん。そんなこと言ったらダメだよ」

「何でだよ」

「鬼さんは鬼さんを信じていない子供の所に来るんだよ」


 女の子は心配しながら、お兄ちゃんを一生懸命追い掛ける。


「そんなの嘘だよ」

「お兄ちゃんが鬼さんにつれていかれちゃう。やっぱり私がお兄ちゃんと一緒にいないとダメだよ」

「何でそうなるんだよ」

「私の大好きなお兄ちゃんを守る為なんだから、絶対に離れないよ」

「分かったよ。ほらっ、おいで」


 男の子は手を女の子に差し出している。

 その男の子の手を握り女の子は笑顔を見せている。

 その二人を見ていたきくは言う。


「どっちが年上なのか分からないわね?」

「えっ、男の子の方が年上だろう?」

「精神年齢は女の子の方が上よ」

「どこが?」

「女の子は男の子の気持ちを変えたのよ?」

「気持ち?」

「最初はついて来るなって言ってたのに、最後は手を繋いで一緒に行こうとしてるの。それは女の子が変えたのよ」

「すごいな」

「そうよ。女の子は男の子に気付かれないように男の子を動かせるのよ」

「もしかして今日のデートのこの場所も何か意味があったりするのか?」

「そうよ。あれを見て」


 きくは遠くの方を指差す。

 そこには大きくて綺麗な桜の木が並んでいた。

 地面に桜の花びらの絨毯ができている。


「桜の木?」

「そうよ。あれが見たかったの」

「でも、今日は俺が映画を観たいって言って映画館に行くんだよな?」

「だからこの桜の木の近くの映画館にしたの」

「この桜の木を見ながら映画館に行くのか?」

「そうよ。あなたは映画を観たいから場所なんて気にならなかったでしょう?」

「そういえば、そうだな」

「あなたは私に動かされてたのよ」

「女の子はすごいな」

「そうでしょう?」


 そしてきくは微笑んだ。


 あの時、俺に微笑んだ顔ときくは同じ顔を、今もしている。

 俺はきくに見惚れていた。


「帰りましょうか?」


 俺はさくらに言われてきくから目を逸らした。

 きくの目の前でさくらは俺の腕に腕を絡ませた。


 きくを見ると、まだ微笑んでいる。

 何だよ。

 その微笑みには何の意味があるんだよ。


◇◇◇


 その日の夜、きくから電話があった。


「もしもし」

「私、きくよ」

「うん」

「あなたに話しておきたくて」

「何?」

「私は全部、知ってるから」

「はあ?」

さくらちゃんのことよ」

さくら?」

「あの子を困らせないで」

さくらが困ってる?」

「あなたは年上でしょう? それにさくらちゃんは女の子なのよ」

「性別は関係ないだろう?」

「私はあの日、言ったでしょう? 女の子は動かせるって」


 きくは電話の向こうで、クスクスと笑っている。


「あっ、あの桜の木を見た日だろう?」

「そうよ。あなたはさくらちゃんに動かされていたのよ」

「俺が動かしてたんだよ」

「本当にそう? あなたは提案しただけで動いたのはさくらちゃんでしょう?」

「それが何?」

さくらちゃんは、あなたの思うように動いてないわよ」

「そんなの嘘だ。だってちゃんとさくらと付き合ってるのもみんな知ってるし」

「私はあなた達が偽の恋人だって知ってるわよ」

「えっ」

「全部、さくらちゃんから聞いてるからね」

「嘘だろう?」

「だからあなたのしていることは意味がないのよ。たださくらちゃんを苦しめているだけよ」

さくらが嫌なら言って欲しかった」

「言える訳ないじゃない。優しい心の持ち主なんだから」

「そうだよな。俺は年上だしな。言える訳がないよな。明日、さくらに謝るよ」

「そうね」


 そして電話を切った。

 次の日、さくらに謝って俺は偽の恋人作戦を終わらせた。

 さくらは偽の恋人でも良かったのにって言っていた。


 きくへ後悔させる作戦は失敗に終わった。

 でも俺は諦めない。

 きくがダメならきくの好きな人である水樹みずきにターゲットを変えてやる。


 水樹みずきに謝らせる作戦を仕掛ければ、きく水樹みずきを嫌いになるかもしれない。

 次は必ず作戦を成功させてやる。

お読みいただき、誠にありがとうございます。

楽しくお読みいただけましたら執筆の励みになります。

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白くなっていきそうな気配が! 連載開始ですね! 拝読致していきますよー!
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