表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/235

第41話 春香vs千夏 マウント合戦

 その日のお昼休み。


「こーへい、今日もお弁当作ってきたんだー。こーへいの大好物の唐揚げ弁当だよ? 一緒に食べよ♪」


 前の席の春香が、机を逆向きにくっつけながらそう言って、


「ありがとう春香」

 いつものように俺もそう返事をしかけた時だった――、


「航平、お弁当を作ってきたの。一緒に食べましょう」

 ――千夏がドアを開けて6組の教室に入ってきたのは。


「あれって1組の相沢千夏じゃん!」

「うわっ、マジ美人!」


 その途端に教室中がざわざわと色めき立った。


「髪とかサラサラでヤバくない!?」

「ヤバイヤバイ! 芸能人みたい!」


「入学して1か月で2ケタ告白されたらしいよ?」

「相沢マジ半端ないって!」


「でもお弁当作ってきたって、え、相沢さんって広瀬の知り合いなの? っていうか恋人?」

「あれ? でもそれなら春香ちゃんは?」


「そういや朝、あの3人が腕を組んで登校したのを見たって話を聞いたぜ? ウソだと思って笑って流したのに」


「なになに、これってもしかして修羅場?」


「ちょっと待てよ! なんで広瀬だけこんなにモテるんだよ!?」

「広瀬でいいなら俺にもワンチャン……」


「俺生まれ変わったら絶対に広瀬になるわ……」

「俺もなるわ……」

「俺も……」


 激しくざわめいた教室をものともせずに、堂々と俺の席までやってきた千夏は、


「お昼の間だけこの席をお借りしてもいいかしら?」

 学食に向かおうとしていた俺の隣の男子の席を、


「ど、どうぞご自由に! ギリギリまで時間をつぶして予鈴ギリギリまで帰ってきませんので!」


「あら、ありがとう」


 いとも簡単に手に入れてしまうと、机ごと俺の席にくっつけて自分の分と俺の分の2つの弁当を広げだした。


 そんな千夏に対抗するように、


「あの、こーへいは今からわたしの作ったお弁当を食べるんですけど!」


 春香が鼻息もあらくズイっと俺の前に弁当箱を差し出した。


「あら、そうなの? でも航平は私の作ったお弁当を食べたいわよね?」


「全然そんなことないし! こーへいは大好きな唐揚げ弁当のほうが食べたいんだし! だよね、ねっ? ねっ!?」


「あら奇遇ね? 私が作ってきたのも唐揚げ弁当なの。昔から航平の大好物だものね」


「ううっ……! またそうやって幼馴染アピールするし……! ねぇこーへい、どっちを食べるの!?」


「航平、わたしの作ったお弁当を食べて」


 2人は机の上にお弁当を置くとグワッと迫ってきた。


「いやあの、うん、どっちも食べるよ……? お腹空いてるしちょうど良かったかよね? 食べないのはもったいないし? 食べれるよ、うん、全然平気。どっちも食べたいなぁ」


 果たして俺にその答え以外が許されていたのだろうか?

 もっと良い意見があったら今後の参考にするのでぜひとも教えてくれませんか……。


「ううっ、こーへいのへたれ……」

 春香が恨めしそうな顔で言って、


「じゃあさっそく食べましょう」

 千夏は澄ました顔でそう言った。


 そんなこんなで始まった怒涛(どとう)の昼休み。

 俺たちは最初に仲良くそろって「いただきます」をしたんだけど、


「はい、こーへい。あーん♪」


 直後に春香が放ったその一言で、既に俺たちに注目が全集中していた教室が一瞬のざわめきの後、静まり返った。


「ちょっと春香……あの、ここ学校なんだけどさ……」


 クラス中が見ている中で「あーん♪」するのは、さすがにバカップル過ぎてヤバいだろう?

 っていうかカップルどころか、一応まだ付き合ってないよな俺たち?


 だって言うのに、


「はい、こーへい。あーん♪」


「えっとあの……」


「はい、こーへい。あーん♪」


 春香は笑顔だった。

 すごく笑顔だった。


 だけどその目の奥は、かけらも笑っていなかった。


 まるで4年に1度のオリンピックで金メダルをかけて決勝戦に臨むアスリートのような、決意に満ち満ちた目が俺をとらえて離さなかったのだ――!


 俺は春香の笑顔から発せられる無言のプレッシャーに気圧(けお)されるように、差し出された唐揚げをパクリといきかけて――、


「航平、あーん」

 タイミングよく横合いから差し出された唐揚げをパクリと食べてしまった。


いつもお読みいただきありがとうございます。

現在、年に一度の第6回カクヨムコンの真っ最中でして、感想に返信する時間がとれません(>_<)

感想も増えてきまして、返信だけで2時間近くかかることもしばしばで……

たくさん感想いただいているのに、ごめんなさいです!(>_<)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 駄目だ航平君。やってることが酷過ぎる。 春香ちゃんが可哀想だよ。 誠実に向き合うはずじゃなかったの?
[気になる点] クズ主人公やん
[良い点] 春香がとても良い 真っ直ぐで一途で素直で正直で [気になる点] 〉〉果たして俺にその答え以外が許されていたのだろうか? いやその回答はダメかと せめてなんで作ってきたのかや、春香が弁当作っ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ