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第98話 ピースケとワンコ用遊具

 ワンコ用遊具はいくつもある中で――今日は平日でガラガラなので自由に使い放題だ――まずは一番手近なところにある土管トンネルで遊ぶことにする。


 遊具というか、ドラえもんの空き地に置いてあるような5メートルほどの土管が、事故が起きないように地面にしっかりと固定されているだけの遊び道具だ。


「ほらー、ピースケ。こっちこっち!」


 春香が土管トンネルの向こうの入り口からピースケを呼ぶと、ピースケはおっかなびっくりとトンネルの中を歩いていった。

 向こう側の出口までたどり着くと、春香にいい子いい子される。


「ピースケ、こっちだこっち!」


 春香のいい子いい子が一段落するのを見計らって、今度は俺が呼ぶと、ピースケが土管トンネルの中を戻ってきた。

 しかし土管トンネルが怖くないというのがもうわかっているようで、今度は軽快な駆け足だ。


 ハッハッハッハ!

 楽しそうに俺にじゃれついてくるピースケの頭を、俺はワシャワシャと撫でてあげた。


「ピースケおいで~!」

 またまた春香に呼ばれたピースケが、振り返って土管トンネルの中を走っていく。


「ピースケ、こっちだぞ!」

 俺に呼ばれたピースケが、再び小走りに土管トンネルの中を戻って来た。


 それを何度も繰り返す。


 何回かやったらピースケも飽きるかなと思ったけれど、


「ピースケ、こっちだよ♪」

 ハッハッハッハ!


「ピースケ、ホイ!」

 ハッハッハッハ!


 ピースケはいつまで経っても、楽しそうに土管トンネルを何度も何度も行き来していた。

 というわけで、先に飽きてしまったのは俺と春香だった。


「ねー、こーへい! そろそろ次に行かなーい?」


 土管トンネルの向こう出口から春香が大きな声で言った。

 土管の中を通った声は、いつもよりもはっきりと聞こえる。


「賛成。同じことばかりやっていても芸がないしな」

 俺は向こう側にいる春香と合流した。


「今度は平均台をやろうよ? すぐ隣だし」

 春香が土管トンネルのすぐ隣にある、これまたワンコ用の平均台を指差す。


「平均台か。土管の中を行ったり来たりするだけと違って、今度はちょっと難しそうだな。ピースケにできるかな?」


「ピースケのバランス感覚が試されちゃうね」

「がんばるんだぞ、ピースケ」


 ブンブンブンブン!


「ふふっ、やる気は十分みたいだね」


 俺たちは土管トンネルから平均台に移動すると、まずは春香が上を歩いて見本を見せてあげる。


 春香は持ち前の運動神経をいかんなく発揮して、両手を広げて上手にバランスをとりながら歩き始めたのだが、


「ぬおっ!?」

 平均台に上った春香の腰が、脇で見ていた俺の顔のちょうど目の前にあった。

 春香がトン、トンと歩くたびに、スカートもフワッ、フワッと上下に揺れるのだ。


 スカートの下にスパッツをはいているのだと理性ではわかっていながらも、俺はつい、そのフワッ、フワッの奥に何かがあるのではと見入ってしまいそうになって――意思という意思を総動員して、なんとか視線を地面へと向けた。


 落ちつけよ俺。

 なにを平日の真昼間から、野外で盛っているんだ。


 上目づかいでチラリと春香を見てみると、どうやら俺の過剰にえっちな反応には気づいていないようだった。


「じゃあ今度はピースケもやってみようね」

 反対の端まで行って平均台を降りた春香が、振り返って言った。


 俺はスカートのフワッ、フワッに意識過剰になってしまったことを、おくびにも出さずに、


「よーし、ピースケ。春香のところまで行ってみよう。落ちたらだめだからな?」


 ピースケを平均台の上に乗せる。

 するとピースケは俺の心配なんてどこ吹く風で、ぴゅーっと反対の端まで一気に走り抜けて行ってしまった。


「わっ、ピースケ、やるぅ! じゃあ今度はこーへいの方に戻ってみて?」


 春香に抱っこされて180度方向転換したピースケが、今度は俺の方まで平均台を走って来る。


「ピースケはバランス感覚もいいんだな。すごいぞ」

 俺が撫でてやると、ピースケが嬉しそうにブンブンと尻尾を振った。


 これまた何度か平均台を右に左に往復させてあげた後、


「せっかく来たんだから、ワンコ遊具も全制覇したくならない?」

 春香がそんな提案をしてきた。


「なるなる。テストが終わって気も楽だし、時間もたっぷりあるし、もってこいだ」


「じゃあこのまま、端から攻略していっていい?」

「もちろんいいぞ。えっと、次の遊具はスラロームか」


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