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第87話 えっち発生装置・こーへい

「うおわっ!? は、春香!?」


 いきなりのことに、俺は驚きのあまりビクリと身体を震わせて固まってしまった。


 だってデレデレしながらキャッキャウフフしていたら、いきなり指先にキスされたんだぞ。

 そりゃビックリもするだろ?


「ほら? こーへいの方が照れてるじゃん? 顔赤いしー」

「こんなことされたら、照れるに決まってるっての」


「だって照れさせるためにやったんだしー」

「くっ、今に見てろよ?」


「わわっ、せんせー! こーへい君がえっちなオオカミさんみたいな顔してまーす!」

 すると突然、春香が珍妙なことを言い出した。


「いやいや、そんな顔はしてないからな? あと先生ってなんだよ先生って。男子に注意したがる小学校高学年女子かよ?」


 5年生とか6年生の時にクラスに一人はいたよな。

 両手を腰に当てながら『男子! もうチャイム鳴ってるんだからね!』って感じで注意してくる、ちょっとませた面倒見のいい女の子。

 だいたいクラス委員長をしている。


 で、男子は男子で『委員長うぜー!』とかあからさまに言うやつがいるんだけど、注意されて結構嬉しそうなんだよな。

 明らかにお前、その子のこと好きだろみたいな。

 注意して欲しくて、わざと騒がしくしてるまであるだろっていう。


 それはさておき。


「きゃー! わたしカラオケに連れ込まれて何されちゃうの? もぅ、こーへいのえっちー」

「いやいや、それを言ったら、えっちなのはいきなり指キスしてきた春香の方じゃないか?」


「こーへいが、わたしをえっちな気持ちにさせたんですー。だからこーへいがえっちなんですー。こーへいがえっち発生装置ですー」


「なにその絶対に負けない理論!? 俺がその気にさせたせいとか、なにを言われてもその返しで勝ち確定じゃん!? あとえっち発生装置はひどくね?」

「あはははー」


 なーんて曲の合間にバカップルをエンジョイしながら、春香とイチャコラじゃれ合っているうちに、俺の入れた曲のタイトルが画面に映った。


「あ、始まるよ。立って歌う?」

「いや、座って歌うつもりだけど」

「立った方が声が出てストレス発散にならない?」

「肺活量には自信があるから、そこは大丈夫」


 伊達に小・中と野球やサッカーみたいなハード系スポーツを続けてはいない。

 座っていても歌うのに問題はない。


 しかし春香が妙に食い下がってくる。


「えー、見たいー。こーへいが立って歌うところ見たいー!」

「そんな急に駄々っ子モードになられても……」


「見たいー! 立って歌うこーへい見たいー!」


「春香くらい上手だったら立って歌っても様になるけど、俺は特に歌が上手ってわけでもないから、立って歌うのはちょい恥ずかしいんだよなぁ」


 自意識過剰で、ちょっとイタイ感じがしなくもない。


「そんなことないってば」

「そんなことあるんだよなぁ」


 どうしても立って歌おうとしない俺に、春香が「むー!」って顔をした。


「しょうがないね」

「納得してくれたか」


 その言葉に、俺はてっきり春香が納得してくれたと思ったんだけど――。


「ね、こーへい? だめ……?」

 春香が俺の耳元に口を寄せると、ささやくように呟いた。


「ふぉう!?」

 俺の脳に直接伝わるように響いた魔性のささやきは、得も言われないゾクゾクとした快感となって俺の背すじを駆け上がっていく。


「ねっ、こーへい。立って歌って欲しいな? こーへいがカッコよく立ってるところ、見せて欲しいな」

 ゾクゾク、ゾクゾク――。


「こーへい、お願い。こーへいのカッコいいところ、見せて?」

「じゃあ……立って歌おうかな?」

「やった♪」


 春香が覚えてしまった小悪魔なテクニックの前に、俺の口は自然と前言を撤回していた。

 別に立って歌おうが座って歌おうが変わりはないしな!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 確かに、小学生高学年の時になんでもかんでも先生に報告する(毎回挙手して報告)女子が居ましたね・・(-∀-`; ) 授業中に宿題をグループで写して提出した事を報告されて、担任から体罰を頂い…
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