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第70話 朝のお散歩デート(1)

■5月17日■


 俺はいつもと同じように、春香との待ち合わせの時間に早起きすると、


「よし、寝癖も綺麗に直った」

 いつもよりしっかりと丁寧に身だしなみを整えてから、家を出た。


 玄関を出てすぐにピースケを連れた春香と落ち合う――というか、ドアを開けたら門の向こうで、コンビで仲良く忠犬ハチ公のように待ち構えていた。


 春香の隣で行儀よくお座りをしていたピースケが、俺を見た途端に立ち上がって尻尾を振り始める。


 ブンブンブンブン!

 今日もピースケは元気そうだな。


「おはよう春香」

「こーへい、おはよっ♪」


 キャウン、キャン!

「ピースケもおはよう」


 俺の足元にやってきて、ブンブンと嬉しそうに尻尾を振りながら身体を擦り付けてくるピースケを、


「ピースケは、ほんとにこーへいのことが好きだよねー。お前のご主人様はこーへいじゃなくて、わたしだぞー?」


 しゃがんだ春香が苦笑しながら優しく撫でてあげる。


「そこはそれ、俺とピースケの仲だからな」

「ううっ、こーへいがいきなり浮気したし……」

 いじけたような声を上げる春香。


「なんでだよ。俺とピースケは熱い友情の絆で結ばれているってこと」

「いいよねー、男の友情っていいよねー」


 春香が立ち上がると、妙に声を弾ませて言った。

 春香には、妄想で俺をイケメン男と結合させた前科がある。


 まさか犬のピースケと良からぬことをさせられることはないとは思うが、人の好みは千差万別。

 万が一ということもあるので、ここはあまり深くは追求しないでおこう……。


「今日はいい天気だな」

 話を変えようと空を見上げると、雲一つない気持ちのいい晴天が広がっているのが目に入る。


 思わずラジオ体操をしたくなるような、喜びと希望に満ち溢れた清々(すがすが)しい朝だ。

 付き合い始めた俺と春香の門出を、この世界も祝福してくれているのかもしれないな。


 ついにくっついたか、カップル成立おめでとう、ってな。

 ……さすがにそれはちょっとポエム過ぎか。


 朝から謎のポエムをしちゃったのは、春香が彼女になったことで浮かれているからかもしれない。


 昨日も帰り道でキスをしてしまったし、夜は春香との電話が終わってからもニヤニヤしてしまうのが抑えきれなかった。

 今の俺は、自分で思っている以上に相当浮ついているんだと思う。


 まぁでも、浮ついてもしょうがないだろ?

 生まれて初めての彼女ができたんだし。

 彼女ができたばかりの男子高校生のテンションの爆上がりっぷりを舐めるなよ?


「最近は天気のいい日が続いてるよね。雨が降ってもちょうど夜の間だったりで、実質晴れとおんなじだし」


「夜に降ってくれると、傘を持って行かなくていいから地味にお得感あるよな。濡れないし」


「あるある、地味にお得感あるよね。ラッキー♪ 今日はわたし、いいことありそうって思っちゃうもん」

「今日はついてるって思うよな」


「実際はついてるのは自分だけじゃなくて、この辺の人みんななんだけどね」

「ま、大事なのは気の持ちようってことで」

「だねー。病は気から。ポジティブポジティブ♪」


 楽しそうに言いながら、可愛らしくウインクを飛ばしてくる春香。


 一歩踏み出して彼氏彼女という特別な関係になったからか、春香の仕草がいちいち可愛くて困るんだが?

 なんかもう存在からして可愛いんだが?


 こんなのもう、顔がニヤついてしまってもしょうがないだろ?

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