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99.竜王ザダル②


ドラゴニアは竜人族の国。


しかし外界との繋がりは、神の山に阻まれ、その外の世界を知る事はできない。


一般常識として山の外側は空と同じで何も無い空間が広がっていると言われているが、数千年に渡る竜人族の長い歴史の中でも、未だかつて、誰一人として実際に山の外に出た者はいなかった。




「そこまで!答案用紙は回収されるまで机に伏せて置いておくこと!」


パンデモニウム第一学園に於いて最も優秀な生徒達が集まるSクラス。


試験の終わりを告げる教師の声が響く教室には50人を超える学生達がいる。


「はい!皆さんお疲れ様でした。筆記試験はこれで終了です。明日の実地試験に備えて今日は無理せず体を休めておくように!」


『はい!』



試験終了後、生徒達が帰り支度をする中、教室の窓際、一番後ろにあるザダルの席にいつもの三人が集まっていた。


「終わったー!地学は本当に分からないわ…」


「ハッハッハー!シルヴィア、その様子ではどうやらまた我らの勝ちの様だの!」


「きぃーっ!ねえ!ザダルはどうだったのよ⁉︎」


「ん?僕はまあ、いつも通りかな。ふふ」


「はあー…。いつも通り満点なわけね…。だけど、外の世界についての問題なんて、誰も行った事が無いのに何故分かるのかしら?」


「ふむ、その問題については我も疑問が残るのう。神の山の向こう側は、さも当たり前の様に空が広がっていると言われておるが、我は実際見て確かめるまでは真実は分からんと思うがの」


「二人ともその通りさ。僕の予想ではあの山の向こう側にも世界があって僕らと同じ様に生き物がいると思うんだ」


「えっ?なぜそう思うの?」


「うーん…。神の山がどれだけ長い山脈なのか分からないけど、あの山は直線の壁の様に見えて実は少し曲がっているんだ」


「なんと⁉︎本当かの?」


「うん。多分この世界は巨大な円状の山に囲まれているんだ。…まるで誰かが、僕らを外に出さない為に閉じ込めているかの様にね…」


「ちょっと待ってよ。なんでザダルにそんな事が分かるのよ?」


「…実はね」


『実は?』


「…やっぱり辞めた。いずれ話すよ!」


「なぬっ」


「えーっ、教えてよー」


「ふふ、明日になれば分かるよ」


「?主が神の山について知ってる理由が明日には分かる?…なんだか良く分からんの!…しかし、ザダルはこうと決めたら曲がらんからのぅ。シルヴィア、大人しく明日を待とうぞ」


「むー。そうね。けど、もったいぶるだけの事はあるんでしょうね!」


「ふふ。どうかな?楽しみにしてて」




***翌日***




学園の広い校庭に、S、A、B、C、D、E、実力順に分かれている6クラスのうち上位3クラス、SABクラスの総勢150名が集まっている。


「では!これより実地試験を行います!試験内容は全員把握していると思いますが、念の為確認です!パンデモニウムA地区内にて、ワイバーンの逆鱗を昼までに取ってくる事!早く戻って来た者から順に得点がつきます!ワイバーンを倒す事さえ出来ない者は点数が付きません!筆記と合わせた成績如何では来期のクラス編成も変わりますのでそのつもりで!」


『ザワザワ…』


「静かに!ワイバーンは倒せなくても昼までには必ず戻る事!油断すれば怪我では済まない事も多々あります!我々教師も巡回はしていますが、くれぐれも気をつける事!尚これは個人の力を見る試験です!共闘は禁止とします!」


「ワイバーンか…。私達Sクラスはともかく、Bクラスの子達にはキツいわよね…」


「だの。せめてAクラスまでにするか、共闘を認めれば良いのにのぅ…」


「シル、レイル、何を甘い事を言ってるんだ。僕らは世代を超えて集まった、竜人族の中でもトップクラスのエリートなんだ。この学園で上位にいるということは学園を卒業して世の中に出たら兵士や士官として戦いの日々が待っているんだよ?命の危険が常に付き纏う過酷な世界なんだ。力なき者は死あるのみ。努力が足りない者は自然淘汰されて行くのは当たり前だろ?」


「ザダル…」


「さあ、それよりこの試験は本当に危険が伴う。人の心配をしている余裕は僕らにだってないはずだよ?」


「確かにそうだの。シルヴィア、お主もしっかり気を引き締めて行くのだぞ」


「う、うん…」


「…」


シルヴィア…。ザダルのこういうところがこの先少し心配だの…。力を持つ者だからこそ、道を間違えぬ様に我ら二人が側で見守ってやらんとな。


と、その前にまずは…


(シルヴィア、心配するな。我の近くで狩れば良いぞ。危なくなったらこっそり助けるからの)


(なっ!結構よ!私はあなた達よりも早く逆鱗を取ってくるんだから!)


「ハッハッハー!これは失礼!では二人とも、早い時間帯でここに再び戻って来ようぞ!」


「ええ!」


「勿論!」


戯言で少しは気が晴れれば良いが…。余計な事を考えたまま臨むには危険が大きい試験だからのぅ。ザダルも己の力だけでなく他人を思いやる力、気持ちを汲む力がもう少し付いてくれればのう…。





「では、各々準備は良いか!SABクラス合同実地試験!開始!」



『うおおお!』


「シル!レイル!二人とも、また後で!」


「うむ!我らなら余裕だと思うが、油断大敵。気をつけるのだぞ!」


「分かってるわよ!じゃあね!」


学園の校庭からA地区方面に向かって一斉に駆け出す生徒達と共に三人も街の外へ向かう。


学園都市パンデモニウムの周辺には、A地区からD地区の4つのエリアが広がっている。それぞれが相当な広さを持ち、野良ワイバーンが稀に出没する。


まだ竜化に至らない学園生徒達は、まずは空を飛ぶ彼らを地面まで誘き寄せなければならない。更に、危険を感じたり敵わないと判断すると空に逃げるワイバーンを追撃し、触れるだけで激しい怒りを買う逆鱗を、その喉元から奪い取って来ると言う至難の業をやって退けるというのがこの実地試験だ。


加えて学園都市の外にはワイバーン以外の魔物も多く生息する。中にはワイバーン並の強さを持つ魔物もおり、それらにも注意しつつ討伐を達成しなくてはならない。


「さて、ああは言った物の、ザダルもシルヴィアも難なくこの課題をクリアして来るだろうの。我も遅れを取るわけにはいかぬ。全力でワイバーンを仕留めねばのう」


物凄い速度で街から離れて行くレイルは、走りながらも広い空の何処かにいるであろう飛竜に気を向ける。


朝は奴らも腹が減っておろうの。水を求める弱き魔物を食いに川に向かう可能性が高いかの。奴らの根城と言われているのは神の山方面。そして尚かつ川のある所…。


少し遠いが、ククナの森が狙い目かのう。遠い分他の生徒も少なかろう。我の脚なら他の者が近場に着くよりも早く森に着けるしの。急がば回れというやつだの。


レイルは目的地を定めると、目にも止まらぬスピードで学園都市の西にある広大な森へと向かうのであった。





学園都市パンデモニウム。四方を壁に囲まれ、東西南北がA〜D地区に分かれています。

西A 北B 東C 南D


パンデモニウムというのは地名で、学園都市の名前だけで無く、街から出た各地区もパンデモニウムの名前を冠しています。

学園の先生が実地試験を行うエリアを、パンデモニウムA地区と言ったのはそういう事です。


竜王ザダルのお話はもう少し続きます。

早くシュン達に暴れまわって欲しい所ですが、もうしばらくお付き合い下さい!

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