85.ガルヴァリ防衛報酬
「あっ、シュン殿!ローザ様!おはようございます!」
「おぉ、ヘイズ!おはよう!無事だった?」
「はい!おかげさまで!あの闘技場にいた観客達は死傷者ゼロです!これも全てシュン殿のシールド魔法のおかげ!本当にありがとうございます!」
「いやいや、俺が戻るまではローザやバルガスさん、その他にも冒険者達がシュトロームを食い止めてくれていたはず。みんなのおかげだよ」
「おお、なんと謙虚な。あなたこそまさに救世主様です」
「いや、うん。...ありがとう」
俺とローザは、クロノ闘技大会の表彰を受ける為、国王菊一紋次郎に会いにクロノ城に来ていた。
「しかしとんでもない試合でしたな!お体の方は大丈夫だったのですか?」
「ああ、この通り大丈夫さ」
「いやはや、流石ですね。あの死闘でも翌日には万全の体調とは...」
「そういうヘイズこそビックリしたよ。実況や司会も完璧にこなすんだもの...」
「いやぁ、お恥ずかしい。人がいなくて仕方なくやらされていたのですが、何年かやっているうちにいつの間にか慣れてしまいました」
「はは、そっかそっか」
「さ、そんなことより、どうぞこちらへ!国王陛下がお待ちです」
入口の大きな門の前で、闘技大会の司会を務めていたヘイズに出迎えられ、そのまま紋次郎が待つ城内へ向かう。
城門から城までは綺麗に整備された道が通っているが、今回はきちんとした来賓扱いのようで、少しの距離にもかかわらず豪華な装飾の馬車が用意されていた。
「本来なら決勝戦後に闘技場でそのまま表彰式を行うのですが、今回は闘技場があんなことになってしまったので...。観客はいませんがご容赦下さい」
馬車の中でヘイズが断りを入れてくる。
「いやいや、あれは俺が壊しちゃったんだし、むしろこちらこそ申し訳なかったよ」
「何を仰いますか、あれは人間の皮を被った怪物ダーティーシュトロームがやったもの。観客を救い、ひいてはクロノの街を、いや!アスリア王国を救ってくださったシュンさんには国民一同感謝の念しかありませんよ!」
なるほど、巷ではそういう事になっていたのか...。闘技場を怒りの鉄槌で巨大なクレーターにしたのは俺だが、シュトロームがやったことになっているらしい。
「シュン。余計な事は言わずに恩を売っておきなさいよ。後々良い事に繋がるかもしれないんだから」
...だそうだ。すまん。シュトローム。
そうこうしているうちに馬車は城の入り口前に到着した。
「どうぞ、こちらへ」
俺達二人はヘイズの案内で相変わらず絢爛豪華な城内を進む。
広い城内をしばらく歩き、やがて玉座の間へと辿り着いた。初めて来たときは新鮮さに気を取られあまり感じなかったが、二回目となるとこの距離が少し手間に感じてきた。
「お城広すぎるよ!ローザ、今度からは紋次郎さんの所に直接瞬間移動したらダメかな?」
「ダメに決まってるじゃない!おじいちゃんだってそんなに暇じゃないんだし、孫のあたしでさえ好きな時にいつでも会える訳じゃないのよ?」
「そ、そうだよね...。ごめんごめん」
「ま、シュンなら通信を前もって入れておけば大丈夫かもしれないけどね。国を救った英雄なんだし」
「そうかな?ちょっと本人に聞いてみよ」
その時、玉座の間の扉が開き、中にいた近衛兵がヘイズから案内役を引き継ぎ俺とローザを中へと案内する。
玉座の間の上座中央に紋次郎が座る大きな椅子が。後ろにはユーバーが控え、部屋の周りには国のお偉方か貴族か、豪華な衣装を身に纏った上品そうな方々が何人も並んでいた。
紋次郎の前まで進むと、案内の兵が横に退く。
「シュン、ローザ、よくぞ参った。此度も我がアスリア国を未曾有の危機より守ってくれた事礼を言う」
「いえ、ありがとうございます」
「ちょっとシュン!」
普通に返事をした俺に、横で片膝を床についたローザが小声で注意する。
「周りを見なさいよ。ここは正式な場よ!作法をわきまえなさい!」
作法などといきなり言われてもよく分からない。ローザ、前もって教えておいてくれ。
「くっくっくっ、良い良い。二回も国を救って貰ったのだ。シュンはいわば国民全員の大恩人。それに、ローザも王族としてシュンと共に戦う身。そこまで畏ることもない」
「そ、そう?」
『おお』
『ザワザワ...』
国王に対し気軽に接するのはやはり相当礼儀知らずのようだ。不敬罪とかあるのだろうか?周囲が騒めく。
「ごほん!さて、とは言え一応正式な表彰式じゃからな。きちんとやることはやろうかの」
すると、玉座の間下座の横にある扉が開き、数人の人が手に何かを持ち出てくる。
何かくれるのかな?一人一品持っていそうだ。
大臣とかだろうか?紋次郎の前に整列し、一礼すると、今度は俺とローザの方を向き、一人だけ手ぶらで来たおじさんが口を開く。
「お初にお目にかかります。わたくしアスリア国で中央大臣を務めます、ナカダと申します。この度は10万匹を優に超えるゴブリンの大軍勢から冒険者の街ガルヴァリを守っていただき誠にありがとうございます。感謝の証をここに示します」
ナカダ大臣はそう言うと、横に控えていた人が持っていた勲章のような物を恭しく俺に渡してきた。
「あの、...これは?」
「くっくっくっ、それは王家の印。王族と親密な関係にある人物であると言う証明じゃ。何か身分を証明したい時に使うと良い」
あまり使い道がなさそうではあるが、一般的には大変貴重な、ありがたいものなのだろう。
「なるほど。ありがとうございます」
次にナカダ大臣は日本で言う小切手のような物を、次に控えていた人物から受け取る。
「これを...」
俺は説明も受けずにその紙を受け取る。
「これは...?」
「それはゼニル札。特殊な紙で出来ている偽造できない換金札じゃ。そこに大臣の持っている魔法のインクで希望の金額を書くが良い」
ついに出た。俺の人生に於いてこのような場面に立ち会う時が来ようとは...。
ってどうしよう?お金なら魔物狩りで良いだけ稼げるのであまり要らない。
俺は咄嗟に目の前でアモンド将軍として澄まし顔で立っているユーバーに通信を入れる。
「ユーバー、ちょっと聞きたいんだけど、今回俺が壊した闘技場って修復するのにどれくらいのお金がかかるのかな?」
「なんだ突然!変なタイミングで声をかけるな!ビックリしただろう!」
「ごめんごめん。で、いくらか分かる?」
「全く、...下らんことを考えているな?私なら貰えるだけ貰うと言うのに...」
「良いから!熟考してるみたいで恥ずかしいから早く教えて!」
「仕方ないな、...おそらく30億ゼニルと言った所だと思うぞ」
「ひええ、凄いね...」
「あのシールド装置が高いのだ。観客の命を守る物だからな。致し方あるまい」
「そうか、ありがと!」
「シュン、自分への対価もちゃんと考え...
プツッ...
俺はそれこそ下らない説教が始まりそうなユーバーとの通信を切り、ゼニル札に金額を書く。
...流石に欲張りすぎな気がするな...。
金額を書いたゼニル札を大臣に渡すと、その金額にナカダ大臣が思わず声を漏らす。
「さっ、30億っ⁉︎っと失礼!」
『ザワザワッ!』
「30⁉︎冗談だろう?」
「ずいぶんと強欲な救世主サマですこと...」
『ガヤガヤガヤ...』
周りの人達もその金額に驚き、嫌味妬みも聞こえてくる。
「くっくっくっ、何を騒いでおる。街が潰されたら多くの人命が失われた上に、復興にどれだけの金と時間がかかった事か。それに比べればまだ全然足りないくらいだわい」
紋次郎が言いながらゼニル札をナカダ大臣から受け取る。
そしてゼニル札をみた紋次郎は...
「くくっ!くっはっはっは!これはこれは!」
「如何なされたのですか?陛下」
「くっくっ、ナカダよお前はこれをよく読んだか?」
「?桁を読み間違えましたかな?」
「くくっ、良かろう。シュン。お前の希望通り、報酬は30億ゼニルだ」
『ザワザワッ!』
再び騒めく周囲の声を掻き消すように紋次郎が声のボリュームを上げ次の言葉を言う。
「そして、その全額をクロノ闘技場の修復に充てようぞ」
俺はゼニル札に次のような文言を書いていた。
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下記の金額をこのゼニル札と引き換えに持参人へ支払う
-クロノ闘技場修復費として-
3000000000 zni-le
シュン
お読みいただきありがとうございます!
最後のゼニル札はシュンに渡された時点では下記のようになっています。
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下記の金額をこのゼニル札と引き換えに持参人へ支払う
zni-le
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↓お詫びとお知らせです↓
Twitterにも書きましたが、仕事中に怪我をしてしまい更新頻度が落ちてしまうかもしれません...。すみません。
最低でも3日に一話は更新したいと思っていますので、これからもよろしくお願いします。




