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75.四人目の男


そ、そんな...。俺が不老不死⁉︎


もしこの先、キアラが言った通りローザと結婚したとしたら、ローザが老いていく姿を、死んで行く姿を...俺は15歳の少年の姿のまま見届けなくてはいけないのか?


俺は思わずローザを見る。


ローザは俺が不老不死と言う事がどういう事か察したらしいが、それでもいつものように微笑んでくれる。


「何よ、シュン!不老不死よ?誰もが望む凄い事じゃない!喜ぼうよ!」


ローザ...君はそれで良いのかい?

無性に切ない気持ちになる。


「シュン。これもお前の運命なのだ。マグに支払った代償なのだ。私も同じ身。お前の気持ちも良く分かるが、人類の為だ。どうか分かってくれ」


「あ、うん...。あ、でも遠い先では死ぬの?」


「私も、誰も体験した事がないからな。流石に体が粉々になったり、巨大な何かに押し潰されたら分からん」


「う、ごめん。怒りの鉄槌があそこまでとは思ってなくて...」


「ふ、久しぶりにこれはダメかと思ったぞ」


俺達は軽く笑い合い、少し気持ちが楽になる。


「さて、ここからが本題だが...」


まだ本題じゃ無かったんだ...。


「シュトローム」


シュトロームがユーバーに促される。


「はい。...シュンさん。ローザさん。私を...ガイアに入れて頂きたい」


「⁉︎シュトロームをパーティに...⁉︎」


「ユーバー。あなた本気なの?」


「もちろん本気だ。さっきも言ったようにこれから共に闇の眷属と戦うにはシュトロームは探し求めていた人材。まさに適任者だ」


俺とローザは無言でお互いを見る。


「確かにユーバーの考えからすると適任者かもしれないけど...。バルガスの事もあるし、半殺しにしたとは言えまだ許した訳じゃないぞ」


「あの時はまだユーバーさんと契約前だったのです。人類の事をよく知らず、いや、知ろうともせず、魔人族としての本能に身を任せてしまったのです...」


「...」


「しかし、ユーバーさんと知り合い、人類の事を色々と聞きました。私の母は人間です」


「えっ⁉︎」


ローザが驚きの声を上げる。


「私には兄が一人おりました。兄と私は魔人族と人間の間に産まれた異端児として周りから蔑まれて生きてきました。なぜ蔑まれて来たのか?ユーバーさんから人類の話を聞いて分かったのです」


「...」


「私も兄も、異端だったのでは無い。心の根本に母から受け継いだ人間の優しさや愛を持っていたから、それらの感情に乏しい魔人族の中で目立ってしまっていただけなのだと」


「...」


「...だけどなあ、ついさっきまで敵として生死をかけた戦いをしていたのに、いきなり仲間になるのはなあ...」


「そ、それは、シュンさんがこれから先魔人族と本当に戦うことができるのか、力を見させてもらっていたのです!」


「うーん...」


「わたしもシュンと同意見よ。こんなの言うまでもないことだけど、パーティメンバー同士はお互いの信頼が生命線よ?ユーバーも分かるでしょう?」


「信頼か...。確かにそうだが、現実は厳しい...。信頼が必ずしも全てではないのだ」


「どう言う意味?」


「完璧な連携を取れているベテランパーティでも、お互いが信頼し合っていると思っていても、簡単に裏切られる事もある...。これも言うまでもない事はローザも分かるな?」


「そ、それは...」


言葉に詰まるローザ。


生死をかけた戦いが日常の出来事のエルモナルの冒険者達は、日本人とはだいぶ感覚が違うのかもしれない。


「...」


「よし、分かった。ではこうしよう。シュトロームとは仲間で無くて良い。形だけパーティメンバーと言うことにしよう。経験値も別。魔物の素材で稼いだ金も別。ただお互いの利害が一致しているから、なんとなく同じ行動を取る。これならどうだ?」


俺は、ユーバーが仲間で無くて良いと言った時、シュトロームが一瞬悲しい表情をしたのを見逃さなかった。さっきの話からすると、今まで仲間や友達という存在がいた事が無かったのだろう...。さっきのパーティ加入のお願いも相当な勇気を出して言ったに違いない。


「シュトローム。お前の母親や兄貴はどうしたんだ?兄貴も優しさや愛を持つ者だったのならお前に協力しているんじゃないのか?」


「母は魔人族に人間であることがバレて殺されました。父も犯罪人扱いで獄中死です。私の兄は...魔人族の下らない掟のせいで...。私に力を託し、死にました」


「...そうか...すまない」


「いえ。兄は今も私の中で生きているのです。私の魔術は兄から受け継いだ物。私は常に兄と共にあります」


「...」


ローザ。良いだろ?俺達はお互いを良く知らなかっただけだ。


ローザは言葉を交わすまでも無く、俺の気持ちを理解してくれたのか少し微笑みながら諦めたように頷く。


「分かった。ユーバー。さっきの条件は無しだ。正式に、普通にパーティメンバーとしてシュトロームをガイアに迎え入れよう」


「⁉︎」


シュトロームが驚き俺を見る。


「そうか。ありがとう...」


「シュトローム。これから宜しくな」


「良いのですか⁉︎いや!ありがとうございます!よろしくお願い申し上げます」


俺は座っていたシュトロームと握手をし、そのまま立ち上がらせる。


「よろしくね。シュトローム」


シュトロームは少し照れつつローザとも握手をする。


...シュトロームよ。分かってると思うが、ローザはダメだぞ。


兎にも角にも、こうしてガイアのパーティメンバーが4人揃ったのであった。





「皆さん。一つ言っておかなければならない事があります」


シュトロームが神妙な面持ちで切り出す。


「なんだ?」


「...ゴブリン達を使い、エリバンとガルヴァリを襲った黒幕が今もガルヴァリに潜入しています」


「えっ⁉︎」


「闇の眷属幹部、ハーマンと言う男です」




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