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70.クロノ大闘技大会本戦⑨


「シューン!」


「シュン兄ちゃーん!」



「ぐああぁぁっ!」




『わああああーー!』


「はっ!あまりの攻防の速さにわたくしには正直はっきりとは見えませんでしたが、シュン選手!シュトローム選手から大きなダメージを受けたようです!これは大丈夫か⁉︎」


「...ぅぁあ...。ヒ、ヒールッ!」


尋常じゃない量の脂汗をかきながら今度こそ右肩にヒールをかける。


しかし魔具のアース・コアもろとも切り飛ばされた右腕は元には戻らず、傷口が塞がっただけだ。


痛みは消えたが、立ち上がるにもバランスが取りにくい...。


俺は慣れない左手にルーン・コアを握りしめ、シュトロームに向き直る。


「ハアッ、ハアッ...」


「なかなか恐ろしい魔法をお使いですね...、久しぶりに体に傷をつけられました...。シュンさん。あなた、ただの人間とは思えません。一体何者なのですか?」


「ふうっ、ふうー...。お前こそ...空を飛べるなんて...。何者なんだ?」


「ククッ、空を飛べるのはお互い様でしょう。まあ...私が何者か?私に勝つ事ができたらお教えいたしましょう。戦いはまだこれからですよ!」


ザッ!


一瞬にして距離を詰めるシュトローム。


「くっ!」


ガキンッ!

ガギンッ!

ギィィン!

ガガガガガッ!

ッギイィィン!



再び激しくぶつかり合うルーン・コアとロードインパクト。


シュトロームの攻撃はその全てが凄まじく重く、一撃一撃に相手をぶった斬る殺意が込められている。

並大抵の剣ならばあっという間に折られるか、武器が耐えられたとしてもモズのように人の方が吹き飛ばされてしまうだろう。


「クックック!よもやここまで私と打ち合える人間がいるなんて!シュンさん!あなたはやはり素晴らしい!」


「くっ!くそっ!」


アース・コアにもフレイムを付与しているにも関わらず、シュトロームは熱さなど全く意に介せず俺に接近して来る。

超スピードの連続攻撃を左手一本で躱し続けるが、防戦一方のこのままでは勝機は無い。


「ライトニングバースト!」


バリバリバリバリッ!


連撃の合間に多少強引に魔法を使う。

体から一つ一つが強烈な光と熱を持つ稲妻が発生し舞台上の端まで届く。


「グァッ⁉︎」


至近距離で密度の濃い稲妻を受け、シュトロームはバックステップで距離を取るが、全てを回避する事はできず脚と腕に被弾したようだ。


「魔法の威力が尋常じゃないですね...。全く気が抜けない...」


幸いな事に、シュトロームは自己回復の手段を持っていないようだ。このまま少しずつでもダメージを重ねていけば勝ち目が出てくるかもしれない。


そう思った時、


「ククク、私には回復手段が無いと考えているでしょう?確かにその通りです。しかし、私にはこんなやり方もあるのです」


「⁉︎」


そう言うと、シュトロームは舞台上から忽然とその姿を消してしまった...。





***





「ハアッ、ハアッ...」


薄暗い空間で一体の大きな生物が地面に仰向けに倒れている。


男の肌は青く、宙を見つめるその瞳はエメラルドグリーンだ。


「...ルフト兄、やっと探し求めていた男に巡り合えたかもしれません...」


脚と腕に傷を負ったその大男は、額の血を掌で拭い、負傷した箇所に包帯のような布を巻くと、体力を回復するべく眠りに着いた。





***



「こっ、これはどうした事でしょう⁉︎シュトローム選手、突然消えてしまったぞ⁉︎」


『ざわざわざわざわ...』


「エデン!」


俺は飛ばされた右腕の所へ行き、腕を肩に着けエデンを使う。


シュウゥゥゥ...。


『おおおお!』


右肩と右腕の接触部が優しい光に包まれ、アース・コアと共に元通りになった。

エデンは物も直すのか...?いや、以前ユーバーが魔具は生きていると言っていた。アース・コアも生物という事なのだろう。


「なっ⁉︎な、な、なんと!シュン選手...。一度ちぎれた腕が一瞬で元通りになった...!まさに救世主に相応しい神業!今まさに!我々は奇跡を目の当たりにしたーっ!」


「ふう、取り敢えず良かった...」


俺は利き腕が元に戻った事に安堵するが、このままでは勝てるかどうか怪しい戦いに焦りを覚える。

ステータスは最大、コアシリーズの能力アップ効果と剣技マスタリー、更には属性付与で動きは既に人の域を超えているはず...。


にも関わらずシュトロームのあの強さは...。

そして、奴は今、恐らく何処かで体力を回復させている...。俺の魔法を警戒した奴をもう一度ここまで追い詰める自信は無い。この勝機は最初で最後だろう。


そして、シュトロームが消える一瞬、俺は見た。


空間に縦に切れ目が入り、その隙間へシュトロームが超スピードで入っていくのを。


「あれは間違いなく次元の境目だ...」


だとすれば俺が今使うスキルはただ一つ。


「開け!次元の扉!」


使う事はないと思っていた特殊スキルを、シュトロームが消えた場所に使う。


シュゴオオオォォ


スキルを使った地点の空間が僅かに揺らいだかと思うと、人一人が通れるくらいの円状の眩い光の渦が現れる。


『おおお!』


「ッ!次は一体何だ⁉︎シュン選手の目の前に突如光の渦が現れたぞ!」


「シュン...。あれはまさか...次元の扉⁉︎」


「通信Ⅱ」


俺は通信Ⅱを使いローザに連絡を入れる。


「ローザ、シュトロームは多分異次元空間に逃げた。恐らくそこは時間の流れがこちらと違う。俺のコスモ・コアがそうだ。だから異次元で数日かけて傷を癒したシュトロームが今すぐにでも出てくるかもしれない」


「なんですって⁉︎」


「傷を負った今がチャンスだ。あいつが何を考えてるか分からないが、このまま放置しておくと危険だ。...とどめを、刺してくる」


「待って!異次元って事は、闘技場のダメージリセット魔法は効かないんじゃないの⁉︎」


「...そうだ。やられたら、終わりだ」


「そんなのダメよ!危険すぎる!アイツはシュンの事を躊躇いも無く殺しにくるわよ⁉︎」


「...大丈夫。逆に観衆がいない異次元でなら、俺も最強スキルを使えるから」


「でも!」


「ごめん。ローザ...。心配してくれてありがとう...。



...愛してるよ」


「ッ!」


俺は通信Ⅱを一方的に切った。


「さて、と...」


マジで死ぬかもしれない場所へ乗り込むにしては、不思議な程心が落ち着いている。


「鋼の心大活躍だな」


鋼の心と次元の扉、あまり使えないと思っていたスキル達に感謝しながら、俺は覚悟を決めた。


「ヘイズ!異次元空間に逃げたシュトロームを倒してくる!試合結果はもう少し待っててくれ!」


「!皆さん!お聞きになったでしょうか⁉︎どうやらシュトローム選手は異次元空間にいるそうです!そんな場所が本当にあるのか⁉︎俄には信じられませんが、空をも飛べる救世主シュン選手が言うのであればきっと実際あるのでしょう!我々には戦闘を見る事が出来ないのは残念ですが是非頑張ってきて欲しいところです!」




「...それじゃ、行くか!」



意を決し、俺は光の渦に飛び込んだ。





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