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65.クロノ大闘技大会本戦④


ビリビリビリッ!


ユーバーのオーラトルネードを飲み込んだ獄炎玉が半球を揺らす。


「流石のユーバーもこれなら立っていられないでしょ!」


ゴブリン大討伐の時に敵を跡形も無く葬り去った事を考えると、死に至る事の無い特殊な闘技場とは言え、この場であのスキルを使用するのは危険ではないかと思っていたが...。


パリーンッ!


ガラスの割れるような音と共に獄炎玉が解除されると、中の炎は消え円の範囲内には幾筋もの黒い煙が立ち登っていた。


「い、今のスキルは一体...。ローザ選手のとんでもない攻撃がアモンド選手に直撃したぞ、こ、これはアモンド選手大丈夫なのか!?」


あまりの威力と迫力に圧倒され、観客達は声も無く闘技場を見つめていたが、やっとのことでヘイズが解説をいれる。


半球が消えたことで風が煙を流し、中の様子がようやく確認できた。

そこにはユーバーの姿は無く、ただ一面円状に焦げた床だけが現れた。


ユーバー、まさか...。嫌な予感が過り、感知Ⅱで舞台上を見てみると...


「あっ!」


俺は思わず声をあげる。


ドガッ!


「ウッ!」


ローザが短い呻き声と共に意識を失いその場に倒れる。


そこには、いつの間にかローザの背後に回りこみ、インビジブルの柄で当身を繰り出したユーバーが立っていた。


あまりに一瞬の出来事に、静まり返る観客席。

ユーバーがヘイズの方に目線をやる。


「...はっ!しょっ、勝者!アモンド選手!」



『ぅわああぁぁああああぁぁあああ!!』



勝敗宣言を聞いたユーバーは優しくローザを抱き上げ舞台上から選手控室へと去って行った。



...ユーバー、カッコ良い...。



って、いやいや!見惚れている場合じゃないぞ!どうやって獄炎玉から抜け出したんだ!?


あとでじっくり解説を聞かなければ...。


けどなー。賞金欲しがってたしタネを教えてくれなそうだなぁ...。



「クロノ大闘技大会決勝トーナメント!第二試合はご覧の通り!アスリア国一の将軍!アモンド・アイ選手に決定致しましたーッッ!」


『うおぉぉぉぉ!』


『わああぁぁぁぁ!』


壮絶な戦いを目の当たりにした観客達はしばらく興奮冷めやらぬ状態だろう。


俺はそんな闘技場内を尻目に二人を労いに選手控室へと向かった。




***



「確実に捉えたと思ったのに、一体どうやったのよ!?」


「ふふ、シュンには言うなよ?」


「ええ」


「単純な事だ。獄炎玉が来ると分かった瞬間に、オーラトルネードを残し体だけおまえの死角になるように獄炎玉の範囲外に抜け出したのだ」


「そんな!?獄炎玉の範囲の広さは相当なものよ!?」


「まあ、普通の冒険者なら回避は不可能だろうが、私並みのスピードを持つ者ならば可能だ」


「...なるほど...。基本ステータスの化け物ってことね...」


「おいおい、そんな言い方しないでくれ。またおかしな通り名が着いてしまいそうだ」


「ふふ、冗談よ」


「ふっ、"安心"したぞ。ローザ」


二人は親し気に談笑していたので会話に入っていけなかったが、タネをバッチリ聞いてしまったことは言わないでおこう。


「二人ともお疲れ様!凄かったね!」


「シュン。ゴメン。負けちゃったわ。完敗よ」


「うん。残念だったね。でもローザも惜しかったと思うよ」


「シュンよ。お前の獄炎玉は危険過ぎる。分かってるとは思うが使う時と場所を考えろよ?」


「ああ、分かってるさ。それより明日は俺とだな。よろしく頼むよ」


「う、うむ...」



「ねえシュン。また後でスキルを吸収させて?」


「あ、うん。良いよ。けど、ローザも使う時は気を付けてくれよ?ユーバーに獄炎玉を使ったのは少し焦ったぞ」


「...そうね。考えるわ。ユーバーもごめん」


「いや、何、私なら大丈夫だ。気にするな」


「ふふ、ありがと」


「よし!今日はもう帰って良いんだよね?3人でメシでも食べて明日に備えるとしよう」


「すまん。シュン。私は少し野暮用がある。ローザと2人で行ってくれ」


「?軍の仕事?」


「まあ、そんなところだ」


「分身は?」


「私が直接確認したい事があってな。メシはまた今度で頼む」


「分かったよ。仕事頑張ってね」


「うむ。ではまた明日闘技場で会おう」


そう言い残し、ユーバーは足早に去って行った。


「闘技大会で試合した直後なのに、将軍は大変ね」


「そうだね...」


分身に任せられない事、か...。少し気になるが、ユーバーが詳しく言う必要が無いと判断したから言わないのだろう。


「パーティメンバーだもんな。信頼しよう」


俺は自分に言い聞かせるように小さく呟いた。


「ん?」


「いや、なんでもないよ。さ、ご飯食べに行こうか」


「うん。今日はちょっと飲もうかな」


「珍しいね。付き合うよ」


「こう見えて結構負けて傷心なのよ...。だから、いっぱい慰めてね」


そう言ったローザの顔を見ると、割と本気でヘコんでいるようだ。


「よしよし、それじゃーお兄さんが慰めてあげよう」


「ちょっと、シュンの方が年下でしょう?わたしに可愛がられていれば良いのよ」


「何だよそれ。俺は弟かい!」


「ふふ、そう。大切な、家族みたいなものよ...」


ローザは両親にいつでも会えるわけでは無い。


ふざけて言った俺に、優しく微笑みながらそんな風に言われ、場の空気が変わったのを感じた俺はなんとなく照れ臭くなってしまう。


「ごほん。俺もエルモナルに来てからは独りだからなー。俺にとってもローザは家族だよ」


「ふふ、シュンもそう思ってくれてるなら嬉しいな」


とびきりの笑顔で答えるローザ。



ああ、この人の事を一生をかけて守りたいな...。



って、何だそれ⁉︎何考えてるんだ俺⁉︎

ローザはパーティメンバーだ。そういう対象じゃない。可愛いけど。いや、違う。違う...のか?


俺は自分の感情に戸惑い、その後2人で行った酒場で話した事も、お酒の味も、どれだけ飲んだのかも良く分からないまま宿へ戻り、2人同じベットで眠りに就いたのであった。






ユーバーが"安心"したのは、ローザのセリフが冗談だった事と、ローザの仲間としての強さを見て"安心"したと言ったようです。

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