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64.クロノ大闘技大会本戦③


「炎玉のモズ、か...」


獄炎玉は使えるものの、単純なレベル差や気配を消すスキル等を考えると、簡単に勝てる相手でもなさそうだ。


「対魔物でも強いだろうが...1対1に向いているスキル構成だな」


「はぁー、やっぱり簡単に優勝できる大会じゃないわよねぇ...」


モズ、ユーバー、ローザ、そしてシュトローム...。


確かにローザの言う通りかもしれない...。



俺たちガイアの三人は、午前中に行われた第一試合の観戦を終え闘技場近くの食事屋に向かったが、闘技場に試合を見に来ていた客でどこの店も満員だった為、ローザが一度紹介してくれたヌーダルを出してくれる店に瞬間移動し、昼食をとっていた。



「...ごほん。一つ確認しておきたいのだが...」


「ん?」


「いや、普通パーティを組む時や入る時にこういうのは確認しておくべきなのだが...」


「前置きが長いわね。何よ?」


「うむ。こういった闘技大会での賞金や魔物を狩った時のお金の配分はどうなっているのか、二人の間で決まりがあったら教えてほしいのだ」


「ああ...言われてみれば...。特にそういうのは何も決めてなかったな」


「うーん。そうね。シュンも私も冒険者で結構稼いでるからあんまり執着してなかったわね」


「うん。ユーバーだって国一番の将軍ならだいぶお給料も良かったんじゃないの?」


「そうよね。何歳か知らないけど、昔はそれこそ冒険者としても活躍してたんでしょ?」


「ああ、うむ。まあ、それなりにはな。では、うむ。賞金は各々、魔物の素材に関しては均等に三等分でどうだ?」


「わたしは構わないわよ」


「俺もそれで良いよ。武器も防具も永久に使える気がしてるからそんなにお金使わなそうだし」


「そうか!ではそういうことで」


ユーバー。最年長ということもあって、しっかりしているのか?それとも話し方が気持ち普段と違っていたところを見ると、人格者に見えて実は浪費家なのか...?


「さ、さあて!午後からは私とローザの試合だな!同じパーティメンバーだからと言って手加減はしないからな?」(賞金も欲しいし)


ユーバーの目を見て俺は確信した。間違いなく後者であると...。


「こっちも望むところよ!シュンにあなたのスキル構成はばっちり聞いちゃってるし!あ、でも、シュン、わたしのスキルはユーバーに言っちゃダメよ?」


「えっ...でもそれじゃぁ...」


返答に困る俺。


「良い。レベルも戦闘経験も差があるだろう。ハンディというやつだ」(賞金は間違いなく私が頂くが)


「そうか。まあ、ユーバーがそう言うなら...」


「ふふふ、番狂わせを起こしてあげるわ!」


二人とも緊張とか不安とかは全く無いんだなぁ。楽しそうだ。



運ばれてきたヌーダルを食べ終え、試合に向け闘技場へ向かう。

ローザとユーバーは試合の準備の為選手控え室に行ったので、今回俺は一人で観戦だ。


「皆さん!大変お待たせしました!これよりクロノ大闘技大会本戦!第二試合を開催致します!」


相変わらず元気なヘイズの声だ。


「第一試合のモズ選手とグラン選手、両名とも素晴らしい戦いを見せてくれましたが、第二試合はどのような試合になるのか⁉︎早速選手の入場です!」


『わあぁぁー!』


第二試合は人気選手のローザと民からの信頼の厚いユーバーだ。観客達が楽しみにしているのがその歓声から感じ取れる。


「まずはこの方!今回の決勝トーナメントの紅一点!死を呼ぶ踊り子!ローザ・キクイチィィ!」


『うおおおおお!』


ヘイズの紹介と同時にローザが会場内へ入って来た。


「ローザー!応援してるぞー!」


「ローザ頑張れー!」


ローザは流石の人気だ。人気勝負ならユーバーにも勝っているかもしれない。


「さあそして!対する相手にもまた注目だ!国家防衛軍第一部隊を率いる大将軍!アモンドッ・アーイー!」


ヘイズ、なんか今回紹介に力が入ってるな...。


『うおおおぉぉぉ!』


「さー!この人気者二人がどんな戦いを見せてくれるのか⁉︎ クロノ大闘技大会決勝トーナメント第二試合!ローザVSアモンド!試合開始ぃぃ!」


グワーン!


「どれ、仲間の力を把握しておくとするか...」


「ふふ、随分と余裕じゃない?あまり甘く見ない方が良いわよ」


そう言うと、ローザは両腕に装備したデゼルファングを前に構えを取った。


「ふっ、それは楽しみだな。では遠慮なくこちらから行かせてもらうぞ」


ユーバーが両腰から腕をクロスさせ、二振りの薄っすら透けている薄紫の剣を出す。


『おお...』


その剣身の美しさに観客席から感嘆の声が上がる。


「行くぞ、インビジブル」


ユーバーが静かに剣に語りかけると、両手に持っていた剣がその姿を消す。


『おおおおお!』


今度は観客席から驚きの声が上がった。


マグって貴重らしいからな。その能力を実際に目にする機会も少ないんだろうな。


俺がそんな事を思っていると...。


シュ!


目にも止まらぬ速さでユーバーがローザに斬りかかる。


キーン!


カカカンッ!

カカン!

キィィン!


金属音が連続してぶつかる音。ローザはカタール。ユーバーは二刀流。手数に関してはこの二人は世界最高の二人だろう。


しかし、ローザ、見えない刃によく対応出来ているな...。


よくよく見てみると、それどころか押し返しているようにも見える。


「ふふ、どうしたのかしら?手加減は無しなんでしょう?」


「くっ、なかなかやるな。少し安心したぞ!」


「きゃっ!」


ユーバーが言いながら強引にインビジブルを振り抜き、ローザを後ろへ弾き飛ばす。


「ツインシュート!」


ズアァァァァッ!


「!」



近距離で放たれた見えない斬撃がローザに襲い掛かる。


ローザは全力でサイドステップで回避を試みるが...。


ザッ!


「あっ!」


完全に避け斬ることはできず、太腿に被弾してしまう。


ドガガッ!

ビリビリビリビリ!!


ローザを完全に捉えられなかったツインシュートが舞台上の際に到達すると、芝生エリアの周囲に設置された黒水晶が激しく点滅し、シールドと思われる透明の半球が舞台上を覆っているのが目視で確認できた。


あれが観客を護る為の闘技場のシールドか...。斬撃が見えないせいか観客に焦りは無かったようだが...。

山を削ったユーバーのツインシュートにも耐えるとは、耐久性は確かなようだ。


「あの距離のツインシュートを躱すとは...。流石Aランク冒険者だな」


「完璧に躱すつもりだったんだけどね...」


ローザの表情が少し歪む。動きに支障をきたすことは確かだろう。


「今度はこちらの番よ!ミンストレルオーラ!」


ローザがスキルを使うと同時に、デゼルファングがオーラを纏い剣身が倍程に伸びる。


「ミンストレルエクステンド!」


シャーッ!


スキルを使ったローザがオーラを纏ったデゼルファングを水平に突き出すと、弾丸のようなスピードで伸びたカタールがユーバーを襲う。


「むっ!」


キィィン!


辛うじてカタールを弾くユーバー。


「まだまだここからよ!」


シュシュシュシュシュッ!


ローザは目にも止まらぬ速さで連続する突きを放つ。


「くっ!」


流石のユーバーも全ての突きを弾き飛ばす事はできず、横に後ろに飛びながら、こちらも物凄いスピードと回避技術でローザの攻撃を躱し続ける。


「どうするの⁉︎逃げてるだけじゃわたしには勝てないわよ⁉︎」


「ふっ、余裕だな。確かにローザの言う通りだ。ではそろそろ勝負を決めるとしよう!」


ユーバーはそう言うと、もう一段階スピードを上げ、一気にローザとの距離を詰める。


「あっ⁉︎」


一瞬にしてローザの眼前に迫るユーバー。


「ここまで出来た事を誇って良いぞ?」


「くっ!」


「オーラトルネード!」


ユーバーの手にあるインビジブルが白いオーラを纏ったと思うや、ユーバーがフィギュア選手の様にその場で高速回転しだした。


ズアアアアアッ!


たちまちオーラの竜巻が生まれ、ローザが飲み込まれると思ったその時!


「シールド!」


『おおおおお!』


ローザの左手のカタールが光り、ローザを囲む様にシールドが展開された。


「ほんとは決勝まで取っておきたかったけど...ユーバーが相手じゃ仕方ないよね」


ガイアがまだ二人の時にデゼルファングに吸収させておいた鉄壁の魔法が発動しローザを守る。

いまだ回転を続けるユーバーから距離を取ったローザが今度は右手を前に構えた。


「今度はこっちよ!獄炎玉!」


今度はローザの右手に装着したカタールが光り、透明の半球が回転するユーバーを囲む。

範囲に捉えた!と思った次の瞬間、内部は地獄の業火が荒れ狂いオーラトルネード諸共ユーバーを飲み込んだ。






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