59.将軍アモンド・アイ
「さて、どこから話したものか」
俺とローザはアモンドを連れて例の宿屋の一室に来ていた。
「まずは何故あなたが俺のスキルや魔法について知っているのか教えてもらえますか?」
「ふむ、そうだな。その前に念のため確認しておくが、ローザはシュンの事を"正しく"理解しているな?」
「どういう意味でしょう?」
「シュンがローザに対して隠していることは無いか?ということだ」
「それは...はい。無いです」
「うむ。お前たち二人が同じ宿に泊まり、シュンが鋼の心を覚えたということは、それだけの仲だと思ったが、やはりそうか」
ローザはいまいち分かっていないような顔をしているが、恥ずかしさに俯く俺。
「二人とも、心して聞け。まずは、まずはと言うかいきなり核心だが、シュン。お前のその体を作ったのはエトではない」
「!?」
「正確に言うとエトに頼まれて私が作ったのだ。作る時にお前の体に起こる事を把握できるように仕組んでな」
「なんですって!?」
「...私の名はユーバー。ユーバー・アモンド・アイだ」
『ええぇえ!?』
ただのちょっと強い冒険者だと思っていた人物が国一番の将軍で、国一番の将軍だと思っていた人物が世界にただ一人、伝説のSランク冒険者のユーバー!?
「世間から...、というよりは、人類の本当の敵から隠れる為に将軍アモンド・アイとして国に仕えていたが、お前の成長が予想以上に早かったのでな。こうして闘技大会を利用して動き出そうというわけだ」
「人類の本当の敵...?」
そういえばゴブリン大討伐の時にゴブリンリーダーのゴワゴワが言ってたな...。
このまま帰っても殺される...と。思い返してみると、その背後にいたであろう存在は明らかになっていない。
「この世界に蔓延っている魔物達。それらは全て生み出された者達なのだ」
「!魔物を生み出している者が人類の敵...ですか」
「そうだ。我々はそれを魔人族と呼ぶ」
「魔人族?」
魔人...強そうな種族だな...。
「...シュトロームがいただろう」
「まさかあいつが!?」
「うむ。確信は無いがおそらく...」
「確かに、どこか普通じゃなかったものね...」
「魔人族は見た目は人と変わらないが、強さや特別な能力を持っている。その能力を隠し、人間社会に紛れ込まれると人と区別がつかん。今はおそらく、ガニメデ公国の裏組織、闇の眷属と繋がっている」
「闇の眷属...」
「どうやら聞いた事はあるようだな。魔人族は古来より存在している。そして、エルモナルを我が物顔で占領している人間を嫌っている。人でありながら自分達以外の人類を滅ぼそうとしている闇の眷属と繋がるのは自然な流れだったのだろう」
「...」
「今はまだヤツらははっきりとは正体を見せん。魔物を使い人類を弱らせ、エルモナルを人類から奪い支配しようと画策しているのだ」
エト神様...魔物だけ狩れば良いんじゃなかったんですか...。
「私の予想では、エトの力が弱ってきた今、魔人族どもがいよいよ本腰を入れて人間を滅ぼしにかかって来ようとしているのではないかと思っている」
「...」
「エリバンに続きガルヴァリをゴブリン共が襲ってきたのはその第一歩だ。あそこで出鼻を挫けたのは大きな意味がある。シュン、よくやってくれたな」
「いえ、あれは成り行きで...」
「...すまない。マグに運命を喰われてしまったな」
「...やはりそうでしたか。でもおかげでローザとも出会えましたし、充実したエルモナル人生を送れていますよ」
「ふっ、そうか」
「あの、すみません。エト神の力が弱っているというのは...?」
俺の言葉に喜んでくれると思ったローザが冷静に話を戻す。
「...今は神と呼ばれているが、その昔エトは超が着く程の天才大魔導師だったのだ。...つまりは人間だ」
「えっ...」
俺はエトに呼ばれた神殿で聞いていたので知っていたが、ローザからしてみたら、生まれた時から信じていた神が人間だったと聞いたらそれは驚きだろう。
「あいつが成長し神のごとき力を着け、幾度も魔物から人類を救っているうちに自然と神と呼ばれるようになったのだ」
「あいつ...。あなたは何故そんなに詳しく知っているのですか?」
「うむ。私はエトの弟だからな」
『えええぇぇっ!?』
「ふっ、驚きだろう。不本意ながら私はあいつに不老不死の魔法をかけられ、色々な力を授けてもらった。戦いたくは無かったが...魔物を狩る為にな」
「...俺と同じですね」
「あいつとしては魔物から人類を守る為なのだろう。時を経るにつれ自分の力が弱くなり自分では魔物を倒しきれなくなったのだ」
「俺もその説明は受けました。最後のギリギリの所で俺の魂を呼んだと」
「...なっ!?魂の召喚...。そうか、そうだったか」
「?」
「死者の魂を操作するのは禁断中の禁断魔法...。自らの命をも削る。エトのやつめ、使う事はないと思っていたが、本当に追い詰められていたのだな...」
「...そうだったんですか...」
「急いだ方が良いかもしれん。それだけ魔人族の動きが活発になってきているということだ」
「ユーバー様はエト神と連絡は取れないんですか?」
「ユーバーで良い。連絡は取れなくも無いが...。それも消耗が激しい。やっても一年に一度、僅かな時間のみだ」
「そうですか...」
「シュン、ローザ、お前たちパーティは組んでいるか?」
「あ、はい」
「よし、では私も入れてくれ」
「えっ!?」
ローザが少し怪訝に返す。
あんなパーティ名を着けようとするくらいだ。もう少し二人だけのパーティーにしたかったのだろう...。
「ん?ダメか?」
「あっ、いえいえ、もちろん喜んで!」
「パーティ名はガイアです」
「ほう、なかなか良い名だな。ではよろしく頼むぞ」
こうして、俺達は三人目の強力すぎるメンバーをガイアに迎え、魔人族との戦いに向け動き出す事となった。




