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55.クロノ大闘技大会予選会⑦

「うーん...」


「うーん...」


山小屋近くにある川のほとりで、俺とローザは二人揃って難題に直面していた。


「どうしよう...」


「困ったわね...」



経験値がめちゃくちゃ美味しい黄金魚。

そしてその黄金魚を倒せる唯一の攻撃手段、召喚魔法:槍千本。

しかしながら槍千本は召喚しすぎると異次元にいる槍の投げ手の巨人が怒る...。


難題とは、どれくらいの頻度で召喚すると巨人が怒るか?という事だ。


「さっき二回目召喚した時、一回目よりも血走った目でこっちを見てた気がするんだよな...」


「次はまずいかもね...」


「う、うん。もう一個の召喚魔法の怒りの鉄槌もあの同じ巨人がやるんだろうから、試しに使うのもやめておいた方が良いよね...」


「そうね...」


「くそー!こんなに美味しい狩場が目の前にあるのに手の出し用がないなんて!」


「ねえ、シュン」


「ん?」


「私が聞いた話だと、Lv30で倒した人は硬い鱗の上から数時間ずーっと叩いてたらしいわ」


「叩く...?黄金魚を?」


「ええ。でね、さっきのシュンの戦い方を見て思ったんだけど、黄金魚ってもしかしてどんな物理攻撃もどんな魔法攻撃も、効かないんじゃなくてダメージを1にしちゃうんじゃない?」


「...」


「だって槍千本も召喚とは言え魔法なんだよね?」


「言われてみれば...そうだね」


「黄金魚のHPがいくつか知らないけど、槍で千回叩かれたって事じゃない?」


「そうかもしれない...。となると...。二人で一匹を千回叩く?」


「千より早く倒せるかもしれないし、仮に千だとしても二人でやるから一人当たり500回...。普通に狩りをするよりは効率は良いだろうけど...。それでもあまりやりたくない作業よね...」


「うーん。使う事は無さそうって言ったばかりだけど、次元の扉で巨人に会いに行って直接聞いてみようかな...?」


「や、やめて!わたしはアイツをまだ信用してないわ!」


「いや、まあ、でも俺が使う召喚魔法なわけだし...」


「お願いだから本当にやめて。確かにシュンが使う魔法かもしれないけど、相手には意思感情があって、しかも怒る(かた)だと分かっているんだから...。シュンの事が...心配なんだよ...?」


くっ、そんな目で見られると逆らえないぞ...。


「わ、分かったよ。そうだ!今日はこのくらいにしておいて、せめてパーティメンバーがあと一人増えたら三人で叩きに来よう」


「そうね。それが良いと思う」


「それじゃ今日はもう日が暮れるし、クロノに戻って休むとするか」


辺りを見ると、いつの間にか夕方になっていた事に気づく。


俺達は瞬間移動Ⅱを使ってクロノに戻り、昨日と同じ宿屋の食堂で夕飯を済ませ、例のダブルの部屋に来ていた。


「あー、今日も一日濃密だったなー!早いとこ寝よ寝よ!」


「?何か言い方がわざとらしいわね。そんなに早く寝たいの?」


「えっ、まあ、うん。...ちょっとシュトロームの事も気になるしね」


「ああ、あのイケメンね。明日予選会に出てくるんだったね」


「うん。...そして明日、決勝トーナメントの組み合わせが決まる」


「そうね。いきなりシュンと当たらないで欲しいけど...」


「ふふ、そうだね。出来れば決勝の最後で戦いたいね」


開いた窓から優しく夜風が吹き込み、心地良い静寂が二人を包み込む。


ずっとこうしていられたらなぁ...。


「ねえ、シュン。寝る前にパーティに名前を付けない?」


「名前?」


「うん。これから先長く続くパーティでしょ?名前があった方が何かと便利じゃない?」


「なるほど。それは良いかもね!けど、こういうのあまり得意じゃないんだよな...。ローザは何か良い案ある?」


「ふふふ、実はね、今日パーティの話をされた後考えてたのがあるんだ♪」


「おっ、何か良いのがありそうな雰囲気じゃん?」


「ふふー、カッコ良くてかつ可愛い、とびっきりのだからね!期待して良いわよ!」


「何だよ、もったいぶらずに早く教えてよ!」


「それでは発表します!わたしが考えたパーティ名は!」


溜めるなー...。一生懸命考えてくれたんだろうな。...よし、また大袈裟にリアクションとってあげるか...。


「シュンとローザのミラクルラブ!よ!」


「えっ⁉」


嬉しそうにドヤ顔するローザと、戸惑い絶句する俺。二人の間に少しの間沈黙が流れる。



...これは...本気なのか?


どうリアクションするのが正解なのか全く分からない。


今のは冗談でこの後本当のを発表!のようなドッキリ的な流れでもないようだ。


「どお?感動で言葉も無い感じ⁉」


「えーっと...、うん!凄いね!凄く良いんじゃないかな!?ローザのネーミングセンスは最高だね!」


「ふふー!でしょでしょ?ほんとはもっと候補があったんだけどねー。やっぱりこれが一番かなって♪」


せっかく機嫌が良くなったところだが、これだけはなんとしてでも回避しなければ。


「あっ!でもさ、もしかするとこれから先他にもメンバーが増えるかもしれないし、二人の名前を入れるのは出来ればだけど止めた方が良いかもしれないよ?」


「えっ?...うーん、そうかな?わたしは別に良いと思うけど...」


「そうそう。それにその...パーティ名にラブって入るのも、少し照れ臭いというか...」


「もーシュンったらどこまでシャイなのよ?それにシュンだって凄く良いって言ってくれたじゃない!?」


「あっ、うん!もちろん凄く良いと思うんだよ?俺も仲良さげな雰囲気が感じ取れるからローザがその名前を付けてくれて凄く嬉しいんだけどさ...」


「嬉しいんだけど...何よ?」


「もう少しこう、控えめなというか、大人し目の方がもっと良いかなーって」


「大人し目ってどんなの?そこまで言うならシュンの案を言ってごらんなさいよ!」


「えっ...?」


本日二度目の絶句。


ヤバイ、特に何も考えてなかったぞ...。

結構怒っちゃってるし!何か案を捻り出せ!こういった、パーティ名をつけるような事は地球にいた頃RPG系のゲームで良くあったじゃないか!何かヒントになるような物を思い出すんだ!


「どうしたの?まさか何も案が無いのにあんなに偉そうな事言ってたんじゃないでしょうね!?」


「なっ、そ、そんなワケないだろ!今最終チェックをしてるんだから少し待ってよ!」


「?最終チェック?何それ...」


!?


よし!降りて来た!地球の事を考えてたら降りて来たぞ!これで行くしかない!


「ごほん。では俺の案を発表します」


こういう自分の意見やアイデアを誰かに言うのは毎回少し恥ずかしいが、思い切って堂々と言った方が良い。


「...命名!『ガイア』!」


「...」


「...」


「うん。音の響きは良いわね。何か意味のある言葉なの?」


「これはね。俺の故郷の名前なんだ。俺が生まれて育った世界。今はエルモナルで生きてるけど、俺を育んでくれた前の世界の事は忘れたくないんだ」


「...そう」


「...イマイチ?」


「...ううん!良いんじゃない?とっても良いと思う!ガイアね。わたしも気に入ったかも」


気を使ってくれたのか本当に良かったのか。とりあえずは良かった。


「ただし!」


「えっ?」


「今度何か名前を付ける機会があったら、今度はわたしの番ね♪」


「う、うん。分かったよ」


口約束とは言え、ローザはこの約束を絶対に忘れないだろう...。


次に何かに名前をつける機会が訪れませんように...。


「約束ね!おやすみ!」


「ああ、おやすみ...」



兎にも角にも、今日の所は鋼の心で余計な事は考えずに朝まで眠れそうだ。




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