53.クロノ大闘技大会予選会⑤
予選会二日目。俺は今日もローザと二人で予選会を観に来ていた。
「予選Bグループの勝者は!流浪の双剣使い!アモンド選手に決定しました!」
Bグループの戦いは序盤から乱戦で、実力差はあまり無いように見えたが、アモンドと言う男だけは余裕を持って戦っているように見えた。
「やっぱりあの男が勝ったか」
「動きが一人だけ違ったわね」
「うん。まあでも、あのくらいなら俺達の方が上だね」
「そうね。本気じゃないかもしれないけど...、負ける事はなさそうね」
「だね」
「さて!それじゃレベル上げに行くとしますか!」
「了解」
「どこか良い狩場あるかな?」
「うーん。経験値が良い相手と言えば...。いるにはいるけど、それなりに倒しにくいわよ?」
「へー、なんていう魔物?」
「冒険者をやっているのに、相変わらず世間知らずねえ」
「うっ、ごめん」
「ふふ、ごめんごめん。シュンが謝る事ないわ、お爺ちゃんと山奥でずっと二人暮らしだったんだものね」
簡単な身の上話もしていたので、ローザには俺の過去についても話していた。作り話だが...。
「名前は黄金魚。川の中に単独で生息していて、滅多に会えないわ。けど、会えたら幸運ね。あまり強くない割に経験値は多いみたい。レベル30になったばかりの人が一匹倒しただけでレベルが上がったらしいわ」
「へー。そんなボーナス的な魔物もいるんだね」
「でも、個体数が凄く少ないから1日で見つかるような魔物じゃないし、異常に硬い鱗に全身覆われているから物理攻撃も効きにくいし、魔法も効かないし、水の中にいて動きも早いし、倒しにくいったらないのよ...」
「そうか...」
「それに黄金って言っても水中にいる時は黒い影のように見えるから目立たないみたいだしね」
「ん?川の中にいる黒い影?」
「どうしたの?」
「うーん...ちょっとだけここで待っててもらえる?」
「?ええ、良いわよ」
「瞬間移動!」
***
俺は思い当たるところがあり瞬間移動を使った。
光の粒子を残し俺の体はクロノの闘技場から消え、とある小さな山小屋の前に来ていた。
「懐かしいなあ...。ここから俺のエルモナル人生が始まったんだっけ」
俺はエト神が用意してくれた最初の山小屋の前に立っていた。深呼吸をし、あの時と変わらない綺麗な空気を味わう。冒険者引退後はこういう所で静かに暮らすのも悪くないかもしれない。
「おっと、感慨に浸ってる場合じゃないな。さっさと確かめて戻ろ」
そそくさと近くの川へ向かい我が目を疑う。
「⁉︎数めっちゃ増えてるー!!」
そこには初めて見た細く黒い影が産卵期に川を遡る鮭のように蠢いていた。
こんな数なのに食料とかどうなってるんだろ...
「ま、とりあえず...。観察眼Ⅱ!」
群の中の一匹にスキルを使う。
黄金魚
ランクB
Lv30
武器:牙
防具:黄金鱗
耐性:無
弱点:無
やっぱりこいつが黄金魚か...。
ランクB⁉︎Lv30⁉︎オークでランクEのLv25くらいだったような...。コイツがそれよりも強いのか...?
エトの計画だと、例の山小屋にユーバーがいて、一番近くにいる黄金魚を一緒に狩る事で俺のレベルを一気に上げるつもりだったのではないかと思う。
しかし...ボーナス魔物の黄金魚がなんでこんなにいるんだ...。
「とにかく一度戻ってローザに、ん?待てよ?」
俺はゼログラビティⅡで浮き上がり対岸に移動する。
「衝波斬!」
ズァッ!
バシャ!
魔法剣から放たれた斬撃が川に向かい飛行し、水面近くにいた黄金魚に当たる。
ビチビチッ!
良い感じに当たった一匹だけが陸に上がって来た。
「水からでたら不利そうなのにな」
そう言いながら魔法剣にライトニングを属性付与し、一気に斬りかかる。
ガイィン!
⁉︎
驚く事に剣が弾かれた。
黄金魚は相変わらず元気にその場で跳ねている。
なんて硬さの鱗なんだ。
「フレイム!ライトニング!アイス!」
ボッ!
ビシッ!
ガッ!
聞いていた通り魔法も何も効かないようだ。
仕方ない...ゴブリン大討伐で散々使ったとは言え、威力が凄すぎて怖いのであまり使いたくないのだが...
「獄炎玉!」
最強の威力を誇るこれなら、さしもの黄金魚もひとたまりもないだろう。
ゴオオオオォォ!
大きな透明の半球体の中で地獄の業火が吹き荒れる。
「このスキルの前だと、敵ながら可哀想になるな...」
そんな事を呟きながらある程度の所で獄炎玉を解除する。
「...⁉︎ 嘘だろ...⁉︎」
信じられない事に、一面真っ黒に焦げた地面の上で黄金魚が何事も無かったように元気に跳ねている。
「これ...倒せるのか?」
...
「一応もう一つの最狂スキルを試すか...」
考えていても仕方ない、取り敢えずやってみよう。
「剛雷撃!」
ゴゴゴゴゴ...
スキル使用と同時に黒雲が立ち込める。
ズガガガガガガガガガガガガッ!!
激しい轟音と閃光を伴った豪雷が絶え間無く降り注ぎ、黄金魚がどうなっているのか全く窺い知れない。
剛雷撃を解除し、立ち込める煙と焼け焦げた匂いの中黄金魚に近づくと...。
「くっ...やっぱりダメか...」
物理攻撃も魔法も高火力のスキルさえも効かないのか...。確かにこれは倒し難い。と言うか倒した人どうやって倒したんだ?
どうしたものか...。
「あれを使ってみるか...」
俺はゴブリン大討伐で覚えた新しい魔法を使ってみる事にした。
「召喚魔法!槍千本!」
...
...
...ゴゴゴ
召喚魔法を唱えると、地鳴りのような低い音と振動が空から伝わってきた。音の出所に目をやると、何も無い空中にヒビが入り次元の裂け目のような物が現れた。
裂け目の奥を見ると、赤と黒が至る所で渦状に混ざり合った異次元のような空間が広がっている。
「...なんか禍々しいな...。大丈夫か?」
そう思った次の瞬間。俺は更に恐ろしい物を見た。
次元の裂け目の奥から巨大な一つの目がこちらをギョロリと凝視しているではないか。
「何あれ...。怖いんだけど...」
すると顔が引っ込み次元の中が眩く光出す。
「槍千本って何なんだ⁉︎普通に槍が千本襲うだけじゃないのか⁉︎」
キィィン!
飛行機が離陸前に発するような音がしたかと思うと一つが3メートルはありそうな光の槍が、おそらく千本...。ポツポツ降り出した雨が、一瞬にして豪雨に変わるかのように黄金魚に降り注いだ。
キュン!
キュン! キュン!
キュン!キュン!キュン!キュン!
キュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュ!!!!
ズガガガガガガガガガガガガガッッ!!
光の槍は、その密度が濃すぎて光り輝く滝のように見える。眩しすぎて黄金魚がどうなっているのか全く見えないが、もうそんなことはどうでも良い。また一つ異常なスキルを習得してしまったことに、嬉しさ半分、恐ろしさ半分、なんとも複雑な気持ちでいた。
...キュン!
最後の一本が降り終わると、次元の裂け目から先程の巨大な目が現れ、動かなくなった黄金魚を確認すると、無表情で奥へと下がって行った。
と、同時に裂け目は閉じ、風に吹かれる木々のざわめきが俺の不安な気持ちを和らげる。
レベルが上がった!
パッシブスキル:鋼の心を覚えた!
レベルが上がった!
特殊スキル:瞬間移動は瞬間移動Ⅱになった!
おお!このレベルなのに一匹で2も上がった!
やはり経験値は相当良いようだ。
そして狙っていたスキルを覚えた。
鋼の心はよく分からないが、瞬間移動Ⅱが期待通りなら良いが...。効果を確認しておこう。
黄金魚の死骸を腰の袋に回収し、鋼の心と瞬間移動Ⅱの効果を知りたいと念じる。
パッシブスキル:鋼の心
効果:何事にも動じない鋼のごとく強靭な精神力
何コレ...?
もしかして昨夜ローザと添い寝した時の影響なのか?
安眠できるようになるのは有り難いけど、使えないハズレスキルな気がする...。
いや、待てよ?パッシブと言うことは常に効果がある訳だから、戦闘中常に冷静な判断ができると言うことか?
「これはなかなか良いスキル...かも?」
まあ、あって困る物でもないしあまり深く考えないでおこう。
特殊スキル:瞬間移動Ⅱ
効果:瞬間移動の強化版。自分以外の人と共に移動することができる。
「よし!ナイス俺!」
今回ここに来た目的はエルモナルで最初に見た川の中にいた黒い影がローザの言っていた黄金魚かどうかの確認だった。
そして、黄金魚がこれだけいて、経験値も良いとなれば一人で倒すのは勿体ない。
そう閃いた俺は他人と共に瞬間移動したいと願い黄金魚を倒した。
「これでローザを連れて黄金魚を狩りまくれば二人とも一気にレベルを上げられそうだな」
こうして狙い通りの成果を得られた俺は、再びローザの待つ首都クロノへと戻るのであった。
***
名前:シュン
種族:人間
職業:無し
冒険者ランク:F
称号:神童
LV:42
HP:6500/6500
MP:720/720
力:200
素早さ:200
耐久力:190
知能:135
精神力:145
スキル
アクティブ:衝波斬 鑑定Ⅱ 観察眼Ⅱ 獄炎玉 剛雷撃
パッシブ:感知Ⅱ 毒耐性向上 麻痺耐性向上
MP自然回復 鋼の心
特殊:浄化 魔笛Ⅱ 属性付与 瞬間移動Ⅱ ゼログラビティⅡ
魔法:キュアー ヒール フレイム ウォータ ライトニング アイス ソウルイーター シールド 通信Ⅱ エデン
召喚魔法:槍千本 怒りの鉄槌
天啓:オールスキル オールマジック エターナルフォース




